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気ままに。  作者: 咲坂 美織
種族戦争編
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後日譚 及び エピローグ

 その後、リアは"白ネコ族"の集落を離れることはなかった。

 私は子供たちも連れてみんなで道場に身を寄せればいいと言ったのだが、赤ん坊もいることを理由に断られた。

 それならばリア1人で子供たちの面倒をみるのは大変だからといって私は残ると主張したのだが、"黒ネコ族"の集落に道場の子供たち預けっぱなし、かつ兄様の様子も気になるので一旦帰って話し合いをすることにした。リアのもとにはソーマさんが残ってくれるらしい。

 私とリアは来た道を逆に追っていった。行きよりものんびりとしていたせいか、"斑ネコ族"の集落に着いたのは2日後のことだった。

「カランさん、お帰りなさい」

 集落の入り口ではロイが寄り添ったレイラに出迎えられて、私はつい照れてしまった。

 それからレイラに南で起こったことを詳細を省いて大筋を説明し終える頃にはすっかり日も暮れてしまった。

 私とフィアは来た時と同じ宿に泊まり、久々にぐっすりの眠った。

 翌日、私とフィアが朝食を取っていると、集落の入り口が騒がしくなった。何事だろうかと慌てて外に出ると、そこにはロイに詰め寄られて困惑するトーマがいた。

「あ、師匠いいところに! この人たちいくら言っても俺が"虎ネコ族"の族長だって認めてくれないんだ」

 ……どうやらトーマは無事族長として認められたらしい。あの時置いて行ってよかった。

 せっかく木々たちに聞いて迎えに来たのに、とぐちぐち言っていたのはうるさかったが。

 レイラたちに事情を説明し、礼を言ってからトーマに連れられてあの道を通った。それはもう、ええ。ご想像にお任せします。

 私たちが"虎ネコ族"の集落に着くころには私とフィアは屍と化していた。

 しかしいつまでも寝こけているわけにはいかないので、さっそくトーマの父親と面会する。怪我の具合はだいぶいいらしく、今回は普通に座ったまま面会できた。

 南の出来事を話し、ソーマさんがその場に留まっていることを話すと、またか、という顔をしていた。どうやらソーマさんにはよくあることらしい。それとなくさまざまな知識を持っていることについて探りを入れてみると、どうやらソーマさんはそういう書物や伝承を求めて各地をさまよっているせいらしかった。どうもそれだけじゃないような気がするんだけど、うーん……。

 その後またトーマに送られてようやく"黒ネコ族"の集落に着いた。

 久々にみる懐かしい景色に、やっぱりここが私の故郷なのだと少し涙ぐんでしまったのは内緒だ。

 集落の入り口には兄様が立っていて、慌てて駆け寄るともう大丈夫だと久々に頭をがしがしと撫でられた。何はともあれ無事でよかった。

 兄様やミカゲ、フィイに副族長たちを集めてその後の出来事を話して聞かせた。リノの話しのくだりではお兄様がそっと頭を撫でてくれた。気付かないうちに涙を流してしまっていたらしい。

 全て話し終えてから、私は兄様に南に行かせてほしいと頼み込んだ。

 ソーマさんだってずっと南にいるわけにはいかないだろうし、子供たちだけの生活はいくらリアが優秀だと言っても心配だ。兄様も私の気持ちを分かってくれたのか、南行きを許してくれた。

 許可が出たらもう居ても立っていられず、すぐに荷物をまとめるとトーマを急かして出発した。

 みんな、全てが落ち着いたら交代で様子を見に来てくれると言った。リアにも会いたがっていたし。

 "虎ネコ族"の近道も数をこなすうちに慣れてきた。でも本当に油断禁物なので絶対に"虎ネコ族"の案内なしに使うことはしないと誓った。

 "黒ネコ族"の北の森から"白ネコ族"の南の森までトータル2日で辿りついた。これがとてつもない数字なのはお分かりいただけるだろう。私頑張った。

 数日ぶりに見るリアや子供たちはとてもかわいらしく、私はとても張り切りましたとも。子供たちに生活の基本を教え、生きていくうえで大切なことを教えた。道場の子供たちと教えることは同じだ。

 あ、ソーマさんは私と入れ替わりでどこかへ行ってしまった。またそのうちひょっこりと顔を出すのだろう。




 それから十数年が経ち、子供たちは自力で生活出来るほど大きくなり、上の子供たちは結婚まで出来る年になった。リアも数年前に可愛いお嫁さんをもらっていて、既に2児のパパだ。

 兄様はあの騒ぎの後わりとすぐに結婚して、今年、一番上の息子が成人するという。それに合わせて私も中央の森にある道場に帰ることにした。

「師匠、お久しぶりです」

「あら、ミカゲ。わざわざ来てくれたの?」

 道場に帰るとすぐ、ミカゲが子供と奥さんを連れて顔を出しに来た。子供はちょうど私が拾った時のリアの年齢と同じくらいだ。

「師匠、もう一度道場を開くんですか?」

「そうねぇ。でももう子供たちも巣立って行っちゃったし」

 私の言葉にミカゲとその奥さんは目だけでやり取りをすると、こちらに向き直った。

「師匠、ぜひうちの子供をお願いします」

 こうして私の道場は再会したのだった。

 噂が噂を呼び、私の道場では常に、以前と同じ50名前後が一緒に暮らしている。集団生活を経験することによって大切なことを学ぶらしい。もちろん、兄様やリア、トーマの子供たちも来たことがある。

 私自身は結婚しなかったけど、こういう人生もいいものだと満ち足りた日々を送っていた。




 それを悟ったのは唐突だった。

 道場を再開してからはまた十数年の時が経っていた。

 各部族の族長も私が直接知っているやつらからすでにその子供たちへと受け継がれていた。

 ああ、幸せだった。子供たちに囲まれて、愛弟子たちに囲まれ、寂しい思いなど感じている間などない人生だった。思い残すことなどなかった。

 愛弟子たちには最後まで心配かけた。私の周りには歳を取ったがよく見知った顔が並んでいる。きっと私の顔も老けて見えるのだろう。




「兄様、トーマ、ミカゲ、リア、フィア、フィイ、レイラ、ロイ。みんな、大好きよ」




これにて気ままに。第二部、そして全話完結となります。

思えば二年前に思いつきで始まったこの物語ですが、今では私の中に彼らの存在がはっきりと形どられていて、完結、という言葉に感慨深い思いです。

第一部、第二部と扱ったテーマは大きく異なりますが、共通して私が伝えたかったことは伝わりましたでしょうか。


願わくば、この物語があなたにとって何か心に残せるものでありますように。

長い間、本当にありがとうございました。


後日、番外編と修正を入れたいと思います。


美織

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