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気ままに。  作者: 咲坂 美織
種族戦争編
33/48

悲しい再会

ちょっと今回グダグダです。ごめんなさい。

え? いつもグダグダ? そんなの知りません|д・)Ξスッ

「嘘、でしょ……」

 書斎に沈黙が下りた。みんながみんな、下を向き俯いている。それくらい、兄様の口から語られたことは衝撃的だった。

「残念ながらすべて事実だ。お前も見ただろ。武闘派で有名なこの"黒ネコ族"の森があそこまで破壊されたんだ。相手も本気だろう」

「だって、あの子が私たちにこんなことするわけない。だってリアは……」

「これが証拠の文書。確かに"白ネコ族"は全部族に対して宣戦布告している」

 私は兄様から一枚の紙を受け取った。確かにそこには宣戦布告の言葉とともに、代表者の名前にリアの名前が署名されていた。

「……これ、リアの字じゃない」

「当り前だろ。これが届いたのはリアが連れ去られる前だ」

「じゃあリアが敵対したなんて言いきれないじゃない!」

「……それはどうでしょうか」

 今までずっと黙っていたミカゲがふと口を開いた。

「先程リュウセイさんも言っていたでしょう。きっと何かわけがあると。リアだってそう簡単に連れ去られるほど甘い鍛え方はしていませんし、全てとは言い切れませんが自分の意思で行ったのだと思いますよ」

「それじゃ、リアが自分から私たちと敵対しようとしているっていうの? そんなことあるわけ……」

「落ち着け、カラン。今はそれよりもこれからどうこの森を守るかを話し合うべきだ。相手が誰であれ、な」

 厳しいことを言っているようで、兄様の言葉は道理だ。私は深呼吸して焦る気持ちを抑えた。

「それで改めてこれからのことについて何だが……」

 兄様の意見をまとめると、


・幼い子供、戦えない者は北の洞窟へ。場所は"黒ネコ族"しか知らないからある程度安全。

・念のため、洞窟の守護はミカゲとトーマ。

・裏側は副族長を中心にベテラン組で固める。

・正面は兄様、私、フィア、フィイを中心に迎える。


 ということだ。

「まあ、これが妥当だろうな。じゃ、俺は準備してくる」

 私を含めみんな特に反対する意見もないので、トーマに続いてそれぞれ準備へ向かった。

「師匠……」

「ミカゲ? どうしたの?」

 書斎を出てすぐにミカゲに呼びとめられた。

「先程、僕はああ言いましたが、リアだって本気で僕たちと敵対しようとは思っていないはずです」

「んなもん、当り前でしょ。さっさと連れ戻してやるわ」

 私は今度こそ準備を整えるべく、部屋を出て行った。




「カランさん! トーマさんたち、洞窟についたの!」

「ご苦労さま、フィア」

 伝令役で走ってくれているのはフィアだ。このメンバーの中でさりげなく1番足が速い。まあ、リアのほうが速いんだろうけどね。

「いいか、これはいわゆる戦争だ。喧嘩とは訳が違う。危ないと思ったらすぐに逃げろ」

「大丈夫よ、兄様。その辺は心得てるつもり」

 自分の実力、限界をきちんと理解できてない者はすぐに潰れる。それは1番初めに教えてきた。もちろん、同じことが私にも言える。

「……来たか」

 私の目に影がチラチラと映りはじめる。私の強化された目だから見える小さな点。私の言葉にすぐさま反応した兄様が周りに指示を出し始める。

「やっぱり、嘘じゃなかったのね……」

 こちらに向かってくる"白ネコ族"の先頭にはリアがいた。その唇は固く引きしめられていた。

「目の色は……失ってない。操られているわけじゃないの? やっぱり自分の意思で……」

「そうとは決まってないだろ。何かわけがあるんだ。早く連れ戻してやろうぜ」

 兄様が私に向かって力強く言った。それだけだが、何とかなるような気がした。大丈夫。きっとリアは戻ってくる。

「一応聞こう。リア、何故俺らと戦う?」

 リアたちが十分に近づくのを待って兄様が口を開いた。

「それは貴方方には関係の無いことです」

「本気か?」

「仕方がないことですから」

 私の心臓がズキリと痛んだ。兄様の問いかけに答えるリアの声には感情がない。今までリアのこんな声、聞いたことがない。

 何度も自分から声を掛けそうになった。しかしこちらの代表は現族長である兄様だ。私が勝手に代表者同士の話し合いに口を割り込んではいけない。分かってはいる。分かってはいるけど……!

「カランさん」

「僕たちもついてるの」

 私のきつく握りしめられた手を、その上からそっとフィアとフィイの手が包んだ。その小さな温もりに思わず涙が零れそうになった。……そうか、私は悔しいのか。リアをこんな目にあわせてしまった自分が悔しくて、情けない。

「こちらはそれほど暇じゃないんです。さっさと始めましょう」

「お前は戦争の意味をきちんと理解しているのか? 下手すると死人が出るんだぞ」

「ええ。分かっています。でもそれは戦争なのだから、仕方がないでしょう?」

 私は思わず自分の耳を疑った。あのリアが、死人が出るのは仕方がないと言ったのか? 横を見上げると兄様も信じられないというような顔をしていた。

「理解していないのはそちらではないですか? そちらから来ないのであればこちらから行きます」


 この時、私は心に誓った。

 絶対に、リアをこちら側に連れ戻すと。


 私は痛む胸を抑えつけて、駈け出して。周りの奴らも一斉に駆け出す。

 戦いの火ぶたが切って落とされた瞬間だった。

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