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気ままに。  作者: 咲坂 美織
神狼編
16/48

再会と初対面

お兄ちゃん、登場!

そして、師匠突入!


師「お兄ちゃん、そのひと誰!?」

兄「すまない、俺はこいつが好……「続きはWEBで♪」」


……嘘です。

 太陽が昇りかけるころ、私は一人ごそごそとベッドを抜け出す。着替えを手早く済ませて持ち物を確認する。

 一通り準備を済ませた後、最後の仕上げとばかりに10年前にもらった短剣を腰に差す。10年前の決着をつけるなら、これは必要不可欠なものだろう。

「じゃ、行ってきます」

 一緒の部屋で寝ていたフィアの頭をなでる。ぐっすりと眠ったフィアは起きる気配もない。

 私はその様子にくすりと笑うと、静かにドアを開けて部屋を出る。

「随分と早いわね?」

「大丈夫です、ひきとめたりはしません。ただのお見送りです」

「師匠、気をつけてくださいね」

 ドアを開けると、そこには黒いのとリアがいた。黒いのは笑顔で、リアは半分涙目で、それぞれお見送りの言葉を言ってくれる。

 私は二人の頭をそれぞれガシガシとやると、黒いのは少し迷惑そうな顔、リアは嬉しそうな顔をする。

「無事に帰ってくるから、チビたちを頼むわよ! あ、リアもチビだったか」

「チビは余計です!!」

 そこは間髪いれずに噛みついてくるか。よしよし、元気だな。

「うし、じゃあ行ってくるわ。あとよろしくね」

 そう言って、私は宿屋を出た。

 ……あ、フィイの顔見てくるの忘れた。




「……何なの、この禍々しい気配は。一体何が巣食ってるっていうのよ」

 私は必死に以前ここを訪れたころの様子を思い出していた。見た目は変わりない。それは断言できる。けれどそこに渦巻く空気というものが酷く濁っていた。

「これじゃあ、何にも住めないわね」

 鳥や虫たちも逃げ出してしまったのか、辺りには時々風が木々の葉を揺らす音しか聞こえない。つまり、無音。

「入りたくない……」

 けれど入らなくては何も始まらないので、嫌々森の中へと足を進める。

 枝を踏んだり揺らしては笑えないので、慎重に足を進めていく。ここは森の中だから気をつけなきゃいけないものはいっぱいあって、すごく神経が疲れる。

 森に入ってから3時間も経っただろうか、前方に広場のようなものが見えてきた。その手前50mほどのところで立ち止まる。私はそのぐらい遠くても余裕で見える。目がいいからね。

「あれは、あいつ? その傍にいるのは……」

 広場の一番奥、土が一段盛り上がったところに、あいつ、兄と見たことがない女の人がいた。

 広場のこちら側には一目で狼族と分かる者たちが適当に座ってくつろいでいるのが見えた。普段群れることがなく、一目で"黒ネコ族"と分かるあいつが目の前にいるのにくつろいでいるその光景が、私にはとてもおかしなものに見えた。

 私がじっと観察していると、ふとあいつが立ちあがって狼族のやつらに声をかけ始めた。……ばれたか?

 私が冷や汗をかきながら一層息をひそめていると、あいつはどうやら狼族の奴らを並べているみたいだった。しかし、普段群れない奴らがよくこんなにもきれいに整列できるもんだな。

 あいつは狼族を、真ん中に通路を作るかのように広めに間を開けて並べさせると、自分はまた奥の女の人の背後に控えるように立った。

「さて、みなさん。今日はいい天気ですね」

 急に女の人が喋りだした。その声は50m離れている私にもはっきりと聞き取れるほどよく通り、高すぎず、低すぎない聞いていてとても心地いい声だった。

 しかし、あの人は一体誰なんだろう。パッと見た感じ、ネコでも狼でもない。初めてみるタイプだ。

 その時私は気付いていなかった。その女の人の目が、はっきりと私を捉えていたことに。

「今日はですね、うふふ。いい天気の日にはぴったりの、素敵なお客様が来てますよ」

「え」

 気がつくと、私はその広場にいる全員と目が合ってしまっていた。

「あ、あはは。どうも、こんにちは」

 もう笑うしかない。あいつが近づいてくるのをただ呆然とその場で見ていた。逃げようにも足が動かない。

「彼女は彼の妹さんなんですよ」

 私が女の人の隣に連れてこられると、そう紹介された。彼とはあいつのことだろう。

 一斉に集まる好奇の視線。隣を見ると無表情のあいつがいた。

「じゃ、あたしの目標は達成されたので、しばらく用はありません。帰っていいですよ」

 女の人のその言葉に、素直に立ち去っていく狼族たち。何者なんだ、この人は。

 狼族が全員立ち去ると、女の人は私に向き直って改めて口を開いた。

「改めまして。初めまして、カランさん。あ、今はセーラさんでしたっけ? あたしはルーパス」

「ルーパス……?」

 どこかで聞いたことのあるような名前だった。一体どこで? 思い出せ、今すぐ思い出せ!

「多分、族長の書斎の本であたしの名前を見たんじゃないかしら? リュウセイもそこで知った、って言ってましたし」

 私の表情からよんだのか、さらりとルーパスさんが答えを教えてくれた。って、何私はほのぼのと会話してんだ!?

「まあ、すぐに気がつかないのはしょうがないですよね。もともと男の名前ですし。ね、リュウセイ」

 黙ってうなずくあいつ。こいつってこんなに無口な奴だったっけ? つい1週間ほど前に会ったときとは大違いの口数の少なさだ。やばい、こいつをのしに来たのにだんだん心配になってきた……。

「彼の心配よりも、自分の心配をしたほうがいいんじゃないですか?」

「自分の心配って……きゃっ」

 見事にルーパスさんに足払いをきめられて地面に倒れこむと同時に、上から押さえつけられる。のんびりと会話していた私がうかつだった。

「敵地のど真ん中で油断なんかしてちゃダメですよ?」

 ……ごもっともです。私はどうやってこの状況から切り抜けようか、必死で頭を働かせていた。が、次にルーパスさんの口から出てきた言葉に、私はそのまま固まった。

「その身体、お借りしますね?」

ルーパス何者!?

次回、過去の裏話。

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