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気ままに。  作者: 咲坂 美織
神狼編
14/48

修行と驚き

双子ちゃんの意外な一面。

作者もびっくりしました。何故そんなものを隠し持ってた!?

リア君は安定の可哀想なポジションです。

 翌日の朝、宿の庭からは元気な声が聞こえてきていた。

「うわぁ! すごいですー!」

「すー!」

 歓声を上げているのは双子のフィアとフィイ。そして元気に悲鳴を上げているのが、

「師匠! 何で僕まで!? ちょっとは手加減……って、うわ!」

 リアだった。

「何よ、リア。私はまだまだ本気なんか出してないわよ。ほら、頑張んないと双子ちゃんに呆れられちゃうわよ」

「そんなこと言ったって! っと、ハッ!」

 リアが気合いと同時に右足の低い蹴りを入れてきた。私はギリギリのところで一歩下がってスルリとかわす。先ほどから攻撃がかすりもしないことに、早くもリアは涙目になってきている。

「ほーら、リア。さっきから一度も当たってないわよ。よーく私の動きを見なさーい」

「もう! いじめですよ、これ!」

 今度は左から回し蹴り。これも軽くステップを踏んだだけでかわす。

「もうヤだ」

 すっかり戦意を喪失してしまったリアは、動きを止めてしまう。そのままその場にしゃがみこんでのの字を書き始める。

「じゃ、次は双子ちゃん達もやってみましょうか。さっきのリアみたいにやらなくてもいいから、とりあえずフィアは私、フィイは黒いのと組み手にしましょうか」

「え、僕もですか? 貴女一人で十分対応できますよね」

「あんた師範代から逃げたでしょ。その代わりだと思ってやっときなさい。それとも何、私と組み手がやりたいのかしら?」

「謹んでご遠慮させていただきます」

 素直でよろしい。

 早速私とフィアは向き合うと、一礼した。これはマナーね。

「じゃ、どっからでもいいわよ。うまくやろうとしなくていいから」

「はいです! じゃあ、遠慮なくいきますー」

 と、フィアがそういうと同時に腰を低くすると、思いっきり地面をけった。結構なスピードで突っ込んでくる。……これは真剣に相手しないとどっちかが怪我する。

 隣の様子を見ると、フィイも同じようなもので、若干表情を引き締めている黒いのが見えた。

「ねえ、フィア? もしかしてどっかで格闘技とか習ってた?」

「うんと、そうですね。この前の作戦に参加する2週間前くらいに一通り教わりましたー」

「ましたー」

 律儀に反応するフィイ。双子パワー、恐るべし。……にしても2週間でこのレベルか。この子たち、実は天才なんじゃないの?

 そんなことを考えながら相手をしていると、先ほどまでうずくまっていたリアが急に立ち上がって、すたすたと宿の中に入っていった。

「ちょっと水飲みに行ってきますね」

 入り口のドアからひょっこり顔だけ出してそういうと、今度こそ中へと消えた。

「あの子は耳いいからね」

「まったく、本当にそうですよ」

 リアのように周りの音が鮮明に聞き取ることができない分、私と黒いのは気配を読む力を鍛えている。中には気配を消すことができる人もいる(例:師匠)ので万能というわけではないが、だいたいの人数、種族程度なら分かる。

「どうします? 中断しますか?」

 フィイの蹴りを受け流しながら黒いのが尋ねてくる。

「うーん、リア一人でも大丈夫じゃない?」

 私もフィアの蹴りからの裏拳を身をよじってかわしながら答える。

「よし、終わり!!」

 私の合図で動きをピタリと止めるフィアとフィイ。その様子を見て私の背中に嫌な汗が流れる。

 2人は私たちと出会う前に2週間だけ訓練を受けたと言った。しかし、そんな短い期間で動きをピタリと止められるようになるのはほぼありえない。だいたいこの年の子供というのは、合図があっても夢中になっていたりして動きを止められないものだ。現にリアでも止められるようになるまで1ヶ月はかかった。

 それをたった半分の2週間で。

 動きのほうも半端ではない。少なくとも1年は毎日休まず稽古を続けなければならないだろう。

「……あんたは一体どんな子供を仕込んでんのよ」

 私の呟きが少し聞こえたらしく、フィアが不思議そうな顔で私を見上げてくる。そのフィアに何でもないよ、というように軽く首を横に振ってみせ、宿のほうへと視線を向ける。ちょうどリアが戻ってくるところだった。

「遅いわよ。いったいどんだけ水飲んできたのよ」

「すいません。思ったより多くコップに注いじゃって、飲みきるのに時間かかっちゃいました」

「ちゃんと後片付けしてきた?」

「はい。それはきちんと」

 上出来だ。やっぱり弟子が優秀だと師匠は楽でいいわ。鍛えた甲斐があったわね。

「じゃ、双子ちゃんの実力も分かったことだし、今日の稽古はここまでにしましょうか」

「えー、なんか師匠、フィイとフィアには甘くないですか」

「この子たちにはこれ以上訓練は必要ないわよ。それとも私の判断には不満?」

「そういうわけじゃないですけど」

「なら黙ってなさい」

 嫌な汗をかくほどの実力だったのは秘密だ。これならこの先私がいなくてもリアと黒いのの足を引っ張ることはないだろう。

「そうと決まったら今日は一日ゆっくり休んで、明日には出発するわよ。リア、黒いの。あんたらは何とかして稼いできなさい」

「またですか……」

「………………」

 いくら節約しようとも、宿やら食べ物やらで金は必要になってくる。さらに今回は人数も増えているので、今のうちに稼いでおいたほうがいいだろう。ちなみに私は何もしない。弟子任せ。

 しぶしぶ宿を出ていくリアと黒いのを見送って、私は部屋のベッドにダイブする。稽古つけた後のこのベッドがたまらなく気持ちいいんだぁ。

 ちらりと脇を見ると、同じように双子ちゃんもダイブしている。うん、そうだよね。気持ちいいよね。

 今日は朝早くから起きていたせいか、しばらく見守っていると双子ちゃんはすやすやと眠り始めた。私も規則正しい寝息を聞きながら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

 夕方に帰ってきたらしいリアと黒いのに大量の殺気を浴びさせられ、飛び起きたのはまた別の話。

次回、突入!!

え、しない? しないの?


師匠「だってめんどいもん」


話進まないから!! お願いです。動いてください。


……それと、リアの「水飲んでくる」の意味、分かりました? 分かりましたよね。水=敵、飲む=倒すです。

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