第八話 「知られざる事実」
彼女の自宅の客間に通され客分として色々話し、彼女に街を連れ回された。
そんな時間のなか恋と自覚し愛に変わったのは1週間も経たない内だった。
恋に落ちるには時間など関係ないとよく言うがまさにそれだった。
彼女の家には、お手伝いさんがいた。
何でも、幼いころから自分の面倒をみているそうだ。
「巫女として、代わりにその地位についているのは妹ですが・・・・
けして祭事は成功しないでしょう。
祭事の成功は、血統、血による呪術です。
神官、巫女の直系でないと本当の祭事、呪術は発動しません。
あるのは、只形のみの絵空事・・・・、
彼女達はやっと空帰れるのです、その翼を空に羽ばたけるのです」
それは、夕食後のコーヒーを飲みながら3人でよもや話をしていた時だった。
何時しか、白き翼の姫君の話になった時の事だった。
僕と彼女は、黙ってその続きを聞きいった。
「私が知っているのは忌まわしき事を隠し綺麗事を書き記した書物からではなく、
彼女に最初に救われた者達が後悔と懺悔によって密かに伝えられた物です。
祭事の呪術とは、呪い。
時の朝廷は己の野心と利益の為に神の使いであった者を地に縛り付けた。
彼女達・・・空の一族、空の姫君と言いましょう。
空の姫君が死んだとき何も残りませんでした。
白き羽が散らばり空に溶けて消えたとあります。
その時、朝廷の貴族達は始めて恐ろしくなったのでしょう。
自分とは違う、種族であり神の使いにした行為を・・・・でもそれは、遅すぎた。
彼女の母親から羽を毟りとった者達の末路は想像以上のものでした。
神が下して天罰、それは生き腐れです。
生きていながらジクジクと蛆が己の身体に湧き
腐った肉を食べるのを見ながら、その苦痛を死ぬまで味わうのですから。
しかし、神の許しを貰い輪廻する為には自殺は出来ない。
自業自得とはいえ、その場で死んでしまった方がましな天罰です。
そしてそれは、自分達が崇める生き神でもある帝がその病気になりました。
神は神をも許さないと言う事・・・
神は、帝を神と認めていないと言う事に・・・貴族達は恐怖におののきました。
そし最後に当時、最大の陰陽師である呪術師に縋った。
それが、お嬢様の家である神社です。
空の姫の怒りを静めると沈めると言いますが間違いです
朝廷に怒りこの世界を憎んでいるのは空の姫君の母親です。
我が身を地に縛り付け、恩を仇で返し、
我が子を取り上げ殺した・・・・十分な恨みになります。
そして、力の持つ者の、その強い思いと恨みは呪いになります」
そこまで、話すと一息付くように醒めたコーヒーを飲み干した。
そんな一瞬の間に彼女は質問を投げかけた。
「じゃぁ、家がやっている祭事って呪いってこと?
それにどんな呪いをやっているの?」
その質問に軽い笑みを浮かべながら教えてくれた。
「祭事は、昔かけた呪術の継続を願っているのです。
何を継続するかと言う事は、気候の安定、
空の一族と言う神の使者は伊達じゃ無いって事です。
干ばつ、日照り、大雨、大雪、竜巻、ありとあらゆる大災害をかの母君は願った。
この地の者が死に絶えれば良いと・・・」
― 続く ―