010 中学2年生に戻った気持ち
次の日起きると身体の虚脱感はなくなり、体力も全快していた。
(寝てる間に死んだらどうしようかと思ったけど、なんとか凌いだみたいだな。)
寝る直前にも毒状態は続いていたので、もしかしたらもしかするかもとは思っていたが、ちゃんと目覚めることができたので最悪の事態は避けられたようだ。
(んじゃま、今日も元気に!カエルエリアに行きますかね!)
紫ガエルと戦闘をした場所まで行き、紫ガエル狩りを始めた。
前回の戦闘で紫ガエルたちの習性は把握していたため、余裕を持って倒すことができていた。
しかし、どんなことにもイレギュラーはつきものだ。
(うわっ!)
その紫ガエルは、毒液を二度放ってきたのだ。
毒液はわずかな溜めがあった後に、一発だけ放たれるものと勝手に思い込んでいたため二度目の毒液を真正面から受けてしまった。
(くそっ!)
しかしすぐに切り替えて、針での切り裂き攻撃で紫ガエルを倒すことはできたものの、戦闘というものに慣れてきたことで慢心が生まれていた自分に腹を立てた。
(あーもうっ!完全に油断してたー!)
後悔などなんの役にも立たない。
その証拠に、身に覚えのある虚脱感に襲われた。
(また身体がだるくなってきた。この毒って持続時間とかあるのかな?)
前回、命をつなぐことはできたのでそれほど焦りがあるわけではないが、毒の効果や解毒方法を知っておくに越したことはない。
(はぁ。アンロック条件とか教えてくれるんならそういうのも教えてくれれば良いのに、不親切だな……って、そういえばここ地獄なんだった。)
地獄に親切さを求めるなどどうかしている。
気持ちを切り替え、前回命を繋いだ方法をなぞることにした。
(ひとまずこいつを食べよう。)
ガツガツと紫ガエルを食べると、やはり虚脱感が薄まり身体に力が入るようになった。
(やっぱりこのカエルを食べると調子が良くなるな。他の魔物ならどうなるんだろ?)
前回毒をくらった帰り道は、とにかく戦いを避けようと超スピードで巣に戻ったので一切戦闘をしていなかった。
(紫ガエルやふたごヘビは難しいかもだけど。コウモリもどきなら多少体調が悪くても倒せるだろ。)
既にまた油断していることに気づかず、コウモリもどき達の生息エリアに向かった。
(せいっ!)
針攻撃によって切り裂かれたコウモリもどきは動かなくなった。
油断していたとしても、既に100体以上倒してきたコウモリもどきに対しては不覚をとることの方が難しかったようで、危うげなく戦闘を終えた。
(いただきまーす。むしゃりむしゃり……おっ!?少しだけど回復してる気がするぞ?)
解毒とまではいかないが、体調がよくなっている実感を得られたのは大きな発見だった。
(これでわざわざ巣に戻って休む必要もなくなったな!まあ……毒をくらわなければ済む話なんですけどね。)
巣に戻って時間を無駄にせず済むことを喜ぶも、そもそも毒を受けなければそんなことは考えずに済むのだ。
今度こそ油断はしまいと心に誓った。
(よーし、あとはコウモリもどきを食べて回復したらカエルリベンジだっ!)
コウモリもどき達を食べて回復し紫ガエルにリベンジしたのだが、油断をしていなかったにも関わらず何度か毒をくらうことになった。
毒液を2発以上放ったりタイミングをずらしてくる個体が度々出てくるのだ。
紫ガエルはどうやら他の魔物に比べて頭が良いらしく、個体ごとに戦闘パターンが違っている。
というより、攻撃手法に舌伸ばしと毒液という2つのパターンがあることによって戦闘パターンが増え、それを個体ごとに使い分けてくるのだ。
そうした経緯から、毒をくらってはコウモリもどきを捕食するという作業を繰り返していた。
そして、とうとう――
(そりゃーーー!!!)
紫ガエルが針によって切り裂かれる。
すると同時に、待ちに待った瞬間が訪れた。
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毒針
アンロック達成
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(よしっ!いやー、今回は長かったな。というより、カエルが手強かった。)
コウモリもどきはワンパターンな動きしかしてこないため呼吸をするように倒せてしまうが、戦闘パターンの多い紫ガエルは何度戦っても中々慣れるものではなかった。
(毒も結構くらっちゃったけど、おかげでコウモリもどきで体力を回復できることを知れたのはラッキーだったな。)
感動の余韻もそこそこに、毒針の試し打ちをするため移動を開始する。
(いたいた。)
毒針を使えるか確認するため、毎度お馴染みとなったコウモリもどきのところへと来ていた。
(針から毒を出すイメージをすれば良いのかな?……お?おぉぉ!針が紫になっていく!)
徐々に紫に染まっていく針を見ているとどうにも厨二心がくすぐられ、ワクワクが止まらない。
(くっくっく。もう誰にも俺を止められない……いくぜぇっ!)
心まで中学2年生に戻った気持ちで、勢いのままにコウモリもどきに突進し、紫に染まった針でコウモリもどきをチクッと浅く刺した。
毒の効果を見るため、深くは刺さなかった。
(どうだっ!)
コウモリもどきは自身の身体の変化に戸惑いつつも、すぐに気を持ち直して攻撃を仕掛けてくる。
しかし――
(おぉっと。いつもよりだいぶ遅いな。)
普段と比べると攻撃の速度が格段に遅くなっている。
これは毒による効果と見て間違いないだろう。
自身が紫ガエルから毒を受けたときは、ここまで顕著な効果は出ていなかったように思う。
(俺の時とは効果が全然違うな。毒への耐性が魔物ごとに違うのかも。)
しばらく攻撃を避け続けていると、コウモリもどきは飛ぶことさえ難しくなってきたようでゆっくりと地面に落下していき、数秒後には動かなくなった。
(なるほどなるほど。毒針は強敵と戦う時に役立ちそうだな。)
もはや雑魚ともいえるコウモリもどきに使うにはコスパが悪いが、今後現れるであろう強敵との長期戦では大きな戦力になってくれるだろうと考えた。
(さて、当面の目標は達成したわけだが、次はどうしようかな。)
ここまでは切り裂きと毒針のアンロック条件を達成することを目標に頑張ってきたが、どちらも条件を達成したことによって目標は失われてしまった。
(毒生成は毒針と被ってるから食指が動かないんだよな。あのカエル美味いからそのうち条件クリアするだろうし……うん。目標にするにはイマイチだな。)
なまじ毒針のアンロック条件が難しかったからこそ、毒生成のぬるい条件を前に意欲が湧いてこなかった。
ギフトロッシュの正体を知らなかった頃であれば、魔物を総当たりで捕食して試さなければならないため難易度は桁違いだっただろう。
しかし、ギフトロッシュが何者か知った今となっては、あまりにも簡単すぎる条件といえた。
(そーだなー。新しい魔物と新しい能力に出会うことを当面の目標にするか。)
より難易度の高いアンロック条件を持った能力を見つけるため、洞窟を更に探索することにした。




