《あなた、とんでもないタラシですね…》
《もうかれこれ三日も外に出てませんが…世界を回る約束はどうなったんです?》
いやだって何もしなくても飯は運ばれるし本は読めるし風呂もマッサージも全自動だし。全人類が憧れるニート生活だぞ?思う存分享受するだろ。
《異世界に来てまで引きこもりライフを謳歌しないでください!!》
まるで俺が前世も引きこもりであったかのような言い方しやがる。
《事実でしょう!趣味は全てインドアで仕事の打ち合わせもリモートで済ませてましたし!》
スタバの新作買いに行くのと選挙には行ってたわ!!!!
《落差!!!!》
そういや今まで名乗ってねぇけど大丈夫なのか?
《あからさまに話そらしましたね…??マァ、その点については問題ありませんよ。マラニテは帰郷してから旅の間での出来事や功績にちなんで名前を与えるので、それまで仮の名を持ったり名付けを拒んだりするのは良くあることです。かなり辺境の部族の話なので、この第一王子は勉強されてますね》
ふーん、ただのバカじゃないんだな。
《極一部の例外を除いて、一国を統べる後継者がただの愚者に務まるわけないでしょう》
そういうもんか。
「僕が来たぞっっ!!!」
「ノックくらいしろよ」
ダーン!とデカい音を立てて王子が部屋に入ってくる。あれ扉壊れて…マァ良いか。直すの俺じゃないし。
「聞いてくれ!今日の授業の内容はな…」
城に滞在する間、俺はお話し相手係に任命された。任命と言うより日がな一日本を読み続ける俺を暇と見た王子が押し掛けるようになって自然とそうなったんだが、集中力が切れて退屈なときの気分転換としてちょうどいいので異論はない。使用人からも俺が来てから王子の情緒が安定したとかで大層褒められた。
「──それでな、今日やっと褒めてもらえたんだ!」
「お前の歴史の先生ってめちゃくちゃきびしいんだろ?すげーがんばったじゃん、良かったな」
「あぁ!」
ニコニコと満面の笑みを浮かべる王子。最初会ったときはクソガキ感満載だったが、可愛げのあるガキになったな。
「今のお前はけっこう好きだぞ」
「前は好きじゃなかったのか!?」
「あたりまえだろ、初対面でいばられるし」
「うっ…だって、あのときは………怖くて、いっぱいいっぱいだったんだ…!!だから、その、ごめんなさい…」
おや、すっかりしょぼくれてしまった。ただこれは俺から何か言われたからってより、魔物に怖じ気付いた自分が情けないってとこか。『怖くて』のとこで言葉詰まってたし。
ガキの内から上に立つ者として見られ、満足にも甘えられないのは可哀想だと思わなくもない。外見年齢は俺のがガキだけど。
「王子さまだって、人間だよなぁ」
《ヒエッ…ノーヒントでそこにたどり着きますか…》
「え、あ…」
背伸びしないと頭を撫でられないのは格好が付かない気もするが、王子様を揺さぶれてるようだし良しとする。
さて、トドメに一言。
「エイジャー、おれと友だちになってくれないか?」
《ウワ………》