君のせいで死ねなくなった。
それは、光だった。
高校1年生の春休み、きみは僕の目の前に現れた。
天使だと、思った。
「ねぇ、案内してもらえる?」
「うん」
「ここ、中高一貫校なんだね。さっきまで知らなかったの。私、馴染めるかなぁ」
彼女は、その綺麗な顔に似つかない大きなあくびをして、言った。
「そうだ、私の初めてのお友達になってよ」
「変な人」
「え、私って変?」
「友達になるのに口約束なんている?」
「きみ、変わってるでしょ」
「え」
「友達、いないタイプ?」
「失礼な人だ」
「あははっ図星なんだ」
大きな笑みを浮かべる彼女。
「じゃあ尚更、友達になってほしくなっちゃった。よろしくね、お友達くん!」
これが彼女との初会話だった。
彼女が来て、1週間が経った。
彼女の周りに、転入初日のような人影は無くなっていた。
「やぁお友達くん、元気かい?」
「そっちこそ。派手にやられてるみたいだけど」
彼女の手には、びちょびちょに濡れた上靴がある。
「そうなんだよ!ほんとひっどいよね、朝学校に来たら上靴が水浸しなんだもん。それに、なんか変な匂いするし」
「そういう性癖なんじゃない、水かけたやつ」
「えっ。そうなの?そんな趣味ある人いる?」
彼女は少し間を空けて、言った。
「ま、まさか、君がやったの?」
「な訳ないだろ馬鹿」
「だよねー知ってた!やっぱ君はからかいがいがある」
大袈裟に笑う彼女を置いて、帰路についた。
彼女が来て、1年が経った。
僕は今日も、君の目の前で手を合わせる。
「なんで、君が死ぬ必要があったんだよ」
「僕のことなんて、ほっといてくれたら良かったじゃないか」
「君までいじめられる必要無かっただろ」
誰にも届かない僕の声。
どこからかゴミ箱が僕の頭に直撃する。
今日も僕の足は裸足。
「あぁ、死にたいよ、僕も」
今日も、一日が始まる。