SNS君
男は目を覚ました。あまりに酷い夢だった。夢で良かったと安堵した。
男は夢について思い出す。朧げであるが、夢の中で自分は教師をしているようだった。何の教師をしているかは分からない。目の前に自分の生徒らしきものが座っている。姿は人の形をしているが、顔には靄がかかっており、特徴でそれぞれを区別することはできない。男はその生徒らしきもの達の前で必死で話している。
「俺は〜だと思う。」
「自分の意見を言っただけだ。」
「そんなつもりじゃなかった。」
「言葉の意図が違う。」
「何故こんなにも責められなければならないのか。」
「顔を見せないなんて卑怯だ。」
「堂々と勝負をしろ。」
必死で話しても空を蹴るような手応えのなさ。聴衆にはまるで響いていないことが分かる。そのうち相手にすがるような声で話し出す。
「俺が悪かった。許してくれ。」
「謝罪する場をくれ。」
「俺の気持ちを分かってくれ。」
聴衆がどんな表情をしているかは分からない。しかし、ケタケタと笑われている気だけはしてくる。男はうなだれた。自分の足が見え、それが少しずつぼやけてきたところで目が覚めた。
男はスッキリしない気分だった。責められている夢だったのは分かった。しかし、何故教師だったのだろう。自分は教師のしごとなどしていない。どこか憧れの気持ちでもあったのだろうか。
男は今日も普段通りの生活をする。朝起きて最初にすることはスマホを触ること。そして深くは考えず自分の考えを発信するのだ。今日もみんなに教えてやらなければと。