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コラボ企画[空翔ぶ燕]作品

名前を知っているだけのよくは知らない花

作者: 葵枝燕

 こんにちは、葵枝燕です。

 この作品は、空乃 千尋様とのコラボ企画となっております。空乃様撮影のお写真をお題に、葵枝燕が文章を綴る——題して、[空翔ぶ燕]企画です。企画名は、僭越ながら私が名付け親です。一応、由来があるのですが——長くなると思うので、後書きで披露させてくださいませ(今回第十弾なので、前回までの作品からご覧の方はご存知かと思いますが、はじめましての方もいるかもしれませんので、ご理解のほどよろしくお願いいたします)。

 そんなコラボ企画第十弾の今回のお題が、「金木犀(二〇二〇年十月三日)」です。本文の最後に入っている写真が、お題として提供いただいたものとなっております。

 知らないなりに金木犀を描いてみようと頑張った——そんな感じのお話かななんて個人的には思っています。

 本文に、写真が入っております。ぜひ、合わせてお楽しみくださいませ。

【どこからか(かぐわ)しい香りが漂ってくる。見上げると、橙色の小さな花が群れ咲いていた。あぁ、今年も秋が確かにやってきているのだと、私は思った】

 寿(ことほ)は、そこまで読んでから、手にしていたその本をパタリと閉じた。それは、その本のまだ序文といえる数行だったが、寿はここで既に、その本に対する熱のようなものを失いかけていた。

(やっぱり)

 本音を言えば、中を見る前から寿は、自分にはこの本を理解することはできないと思っていた。そしてその予感は、どうやら的中してしまったらしい。

 『金木犀の芳香(かおり)に導かれて』というタイトルのその一冊の文庫本は、金木犀をモチーフにした連作短編集だ。橙色の小さな花の群れが、カバー表紙上でこれでもかと咲き誇っている。花の橙色と、葉の濃緑色の、コントラストが美しい。

 寿は、たくさんの平積みされた本の中から、カバーデザインに惹かれてその本を手に取ったのだった。文章だって、寿好みに思えた。しかし、初めの数行を読んで、すぐに本を閉じてしまった。

 本が悪いわけでは決してない——それは、寿が一番よくわかっていた。

(〝金木犀〟って、何?)

 この時期、色々なところでその花を見てきた。写真の中に、絵の中に——しかしそれは、いつだって画面の向こうの景色だった。寿にとって、〝金木犀〟は〝名前を知っているだけのよくは知らない花〟でしかなかったのだ。

(この花はいったい、どんな香りなの? 秋を感じる香りって何?)

 花の形や色は、写真や絵でも感じられた。だが、香りはそうもいかない。例え香水があったとしても、実物と全く同じとは限らないだろう。もしかしたら、ほんの少しでも違うかもしれない。

(わたしには、わからない。きっと、この本を理解できない)

 寿はそっと、その本を元の場所に戻した。こんな自分が読んでも仕方がないと、そう思ってしまったのだ。

 季節の移ろい、季節感——それらを感じられる環境にいる者達をどこか羨ましく思いながら、寿はまた別の本を手に取ったのだった。


挿絵(By みてみん)

 『名前を知っているだけのよくは知らない花』のご高覧、ありがとうございます。

 さて。ここから色々語りたいので、お付き合いのほどを。多分、長くなります。

 前書きでも書きましたが、この作品はコラボ企画です。名付けて、[空翔ぶ燕]企画。「空」=空乃様から一文字拝借、「翔ぶ」=お題から想像力膨らませて文章書くイメージ(「翔」という字には、「とぶ」の他「めぐる」や「さまよう」という意味もあるそうで、その意味も含めて「翔ぶ」を採用しました)、「燕」=葵枝燕から一文字——そんな由来で生まれた企画名です。

 そんな今回のお題は、「金木犀(二〇二〇年十月三日)」でした。本文最後の写真が、お題となったものです。

 さぁ……というわけで、ここからは登場人物について語ります。ですが、今回もお一人しかいないので、そこまでは長くならない、と思います。

 というわけで、主人公の寿(ことほ)さんについて。とある本に目を留めて読み始めますが、自分には理解できない作品だと感じ、その本を手放してしまう——そんな方です。一応、モデルが私自身なので、女性のつもりです。名前は、私がルーズリーフに書き留めている【困ったときのキャラ名案】から選びました。

 私は生まれてからずっと沖縄県に住んでいますが、金木犀を見たことがありません。というか、沖縄県は四季がない——と思います。紅葉はないし、桜は冬に咲くし、秋桜は年中咲いてる気がします。ほとんど夏のようなものだからでしょうか。だから、そんな私が金木犀を(えが)ききれると思えなくて、それがこのカタチになったように思います。

 前回はお題写真を初めてみたときのイメージのまま書いてみた感じでしたが、今回は写真から素直に書いてみたというかそんな感じです。

 タイトル『名前を知っているだけのよくは知らない花』ですが、作中に出てきた表現をそのまま採用しました。

 あ、あと、作中に出てくる「『金木犀の芳香(かおり)に導かれて』」という本ですが、私がパッと付けたタイトルと冒頭文と設定なので、おそらく実在しません。

 さて。これで語りたいことは語れたでしょうか。何か忘れてる気がしなくもないですが……思い出したら書きたいと思います。

 最後に。

 空乃 千尋様。今回も、ステキなお題をありがとうございます! お題のお写真候補をいただいたとき、実は全部難しそうだなと尻込みしてたんですが……憧れの花の一つなので、金木犀にしました。今回でコラボも十回目、いつもありがとうございます! 次のコラボも楽しみにしています。

 そして。ご高覧くださった読者の皆様にも最大級の感謝を。もしご感想などをTwitterにて報告される際は、ぜひ「#空翔ぶ燕」を付けて呟いてくださいませ。

 拙作を読んでくださり、ありがとうございました!

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