受験戦争です
「勇者アレンよ、あなたは死にました。」
上も下も青空が続く謎の空間。
純白の衣装に身を包んだ少女の言葉で、俺は目覚める。
「イテテ...俺はいったい...。ここは...。」
身体が痛い。随分と長く眠っていたようだ。
意識はまだハッキリしない。
「ここは死の世界。勇者アレンよ、あなたは異世界エルテナで果敢に魔王と闘いましたが、力及ばず、死にました。」
......そうだ、思い出した。
俺はエルテナを救う勇者として旅に出た。
仲間と共に、様々な苦難を乗り越えて、ついに魔王に闘いを挑んだんだ。
そしてーー...。
「......って、え?死んだって?」
完全に意識を取り戻した頃。
ようやく俺は少女の口から出た「死」という言葉に、反応を示した。
「はい。死にました。胸元をご覧なさい」
俺は自分の胸元を見た。
なんと、ポッカリと穴が空いているではないか。
さっきから続く痛みはこれか!?
衝撃的な光景に、俺は呆然とするが、
少女はそんな俺など気にも留めず、言葉を続ける。
「勇者アレンよ、あなたは前世で献身なる善行を重ねました。よって、復活のチャンスを差し上げましょう。」
......復活のチャンスだって?
俺は生き返れるのか?
というか、目の前の人間の胸元に穴が空いているのに、平然でいられるこの女の神経はどうなっているのだ。
あまりの衝撃の連続に頭がショートしそうだが、何とか平静を保ち、理解に努める。
「ある戦争に勝ち抜けば、あなたを死の直前で復活させてあげましょう。」
なるほど、どうやら俺はこれからこの女が提示してくる戦争に勝てば、再び俺の世界で魔王に闘いを挑めるようだ。
俺は世界を救うために旅に出た。
魔王を討たずに倒れては、世界は救えない。
それではこれまでの苦労は水の泡だ。
俺には何としてでも復活する必要がある。
であれば、覚悟は自ずと決まる。
「......その戦争とは?」
俺は少女に問いかけた。
少女は決意に燃える俺の瞳を見るや、優しく微笑み、ゆっくりと俺の前へと歩み寄った。
少女は告げる。その戦争の名を。
「受験戦争です。」