一年エース
宿舎にて、夕飯後に俺達は、監督の持ってきたビデオを全員で確認していた。一体何のビデオかといえば、明日の二回戦の相手の試合動画。
各選手の特徴などを事前に確認し、対策案を講じておく、という意図の元、この場は設けられた。まあ東東京大会で、俺が家でやっていた行いと一緒だな。俯瞰からの動画は、打席から見る動画と異なって、結構癖とかそういのがわかりやすい場合もあるのだ。
そういうわけで、部員揃って相手校の試合風景を見ているのだが……皆の声が途端に静かになった。
「この……一番の尾白ネオン? やべえな。フィジカルエリートって感じが溢れている」
「なんでも、中学まではアルペンスキーで全国大会に出れる腕前だったそうだ。親は医者。本人の頭もいいんだと」
「神って結構人に二物以上与えがちだよな」
部員達は、そんな文句を言っていた。
まあ確かに。尾白とやらはポジションショートで足も早く、パワーもある。さすが優勝候補のショートといった感じで、俺も少しだけ興奮を覚えた。
で、次気になった選手は三番の捕手。
「……こいつ、背が低い癖に飛ばすなあ」
「二年の森本だな。中学まではヤンキーだったそうだ」
二年のクリーンナップか。それも捕手。優勝候補のチームでそれとは、相当な強打者なのだろう。
そして、四番の平沼。右バッターで高角にヒットを打てるチームの主砲。
まあ、主砲とかどうのとか言わずとも、さすが優勝候補と言われるだけあって、全員が全員レベルが高い。
相当レベルの高い選手達が、厳しい練習を受けているのだろう。
正直、とても楽しみだ。
しかし、周囲はどうやら逆らしい。強敵を相手に、自信を少し喪失しているように見えた。
「何を落ち込む必要があるんですか?」
ふと、俺は尋ねた。
「強敵を前に、これまでの俺達の練習が劣っていたと思わされるみたいで、凹んでいるんだよ。お前は黙ってろ」
そう言ったのは、吉村先輩だった。
ふむ、よくわからん。練習が劣っていたというのなら、これから挽回していけばいいではないか。
「それにしても、やっぱ今年の大阪同光も強そうだな」
「そうですね。ただ、エースはどうやら一年みたいだ」
「ほう、それは少しだけ救われたのか?」
「それが……」
ビデオの映像が巡っていき、相手校の守備の場面が始まった。マウントに上がった投手は、でかかった。
「でか」
「身長百九十三センチあるそうだ」
「でっか」
ピッチング練習、本番を経て、俺は気付いた。
「随分とインステップで投げますね」
相手投手は、踏み出した位置よりもインステップに足を下ろして、スリークォーター気味にピッチングをしていた。
「これ、右バッターへのインコースの牽制ですよね」
「そうだな。これは踏み込みづらいぞ」
長身。
インステップ。
そして、スリークォーター。
速球も一年にして百五十キロを計測したことがあるそうで、どうやら一年ながら凄まじい相手だそうだ。
その相手の投手の名は、藤本信二。
この好投手との対戦を前に、俺は武者震いをしていた。




