初戦開始
翌日、予想通り空が薄暗くなった頃に俺達の夏の大会初戦は開始された。
「よろしくおねあーす!」
聖佐和高校と挨拶し、俺達はグラウンドに散った。先行は相手となっていた。
「プレイボール!」
審判の掛け声とともに、サイレンが鳴って試合は開始された。
前川の投じた初球は、ストレートだった。一四二キロ。甲子園出場校で一年の出した最速の球だった。球場が、湧いた。
勢いそのままに、前川はピッチングを続けた。
先頭打者は、四球目のスライダーを打ち上げてセカンドフライ。続く打者相手にも、前川は相変わらずクレバーな投球でアウトを重ねて、初回は三者凡退。好スタートを切った。
一回裏。
一番は、俺からだった。昨晩のミーティング、来た球を打てと監督は言った。その意味はよくわかっている。ただ、好球必打をしろ、と言っているわけではない。
どんな球を投げてこようと、どんな球を打とうと、全てのプレーは繋がっているのだ。
俺の打席結果をもって、相手打線はウチの作戦を予想する。全てのプレーは繋がっているから。
俺の打席結果をもって、吉村先輩は相手バッテリーの組み立てを予想する。全てのプレーは繋がっているから。
つまり、来た球を打て、とは、キチンと考えた上で、投じられた球、その先に起こる事象を見越しえて球を打て、ということ。
俺は一番打者の仕事を考えた。多分、この打席は、斎藤の幸先を決める打席になる。俺があっさり凡退すれば斎藤は乗っていけるし、逆ならばこっちの打線が乗っていける。
であれば、考えるべきことは……。
球数を稼いだうえで、出塁することだろう。
「ちぃっ!」
しかし、そう上手くはいかなかった。
十二球目のストレートに詰まった俺は、セカンドゴロに倒れた。
まあ、初戦のこの入りだし、嫌な気分にはさせられただろう。
この回はこちらも無得点。
そして、そこから試合は硬直状態へと相なった。
前川は直前に覚えたシュートが、相手校の研究しきれていない球となり、かなり効果的に使えているように見えた。
対する斎藤は、スプリットの空振り率は半分くらいで、ランナーも結構許すし危うい投球を続けていた。
この流れは切りたくない。
五回裏の三打席目、俺は八球粘った末に四球で出塁した。続く吉村先輩は、四球を与えた投手の次の初球をクリーンヒット。
ノーアウト二、三塁。
ここで打席に立った新井は……。
カキィン!
初球のストレートをバックスクリーンに運んで見せた。
来た球を打つ。
甘い球を仕留める。
監督の言いつけ通りの結果だった。
今大会全校初の一年生ホームランに、球場は再び湧いた。
試合はそのまま、七回の新井のタイムリーで更に加点。
先発前川の調子も良く、四対ゼロで勝利を収めた。
初戦は…ね?




