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脇の甘い男

「おいおい、大丈夫かよ」


 皿の割れる音に、緩み切っていた気持ちが再び起こされた。慌てて立ち上がって、俺はシンクの中に落ちた一枚の真っ白な食器に頭を抱えた。


「捨てるしかないなー、こりゃあ」


 そう言いつつ、慌てて袋を一枚取ってきて、大きな破片をその袋の中に入れていった。

 ふと、真隣で呆然としている同居人に俺は気が付いた。


「どうした、まさか指でも切ったか?」


「えっ、ああいや。って、ひゃあっ」


 放心する同居人の手を取るが、指は綺麗なもので、傷一つ見当たらなかった。


「なんだ、怪我してないのか。良かった」


「そ、そう……」


「おう」


 同居人の手を離して、破片を入れた袋の封を閉じて、俺はゴミ箱の上に一先ずそれを置いた。

 あとは小さな破片で同居人が怪我をしたら困るから、周辺に掃除機をかけようと思った。


「って、ちょっと待った!」


 突然、同居人は騒ぎ出した。


「なんだよ、騒がしいな。やっぱり怪我してたのか?」


「そ、それはしてない。心配してくれてありがとう……じゃなくてっ!」


「うおうっ」


 なんだよ、突然騒がしい。


 そう思っていたのも束の間、速水は突然俺のワイシャツの胸倉を掴んできた。


「ら、ラブレターもらったの!?」


 しばし、俺の思考は停止した。


「なんで知ってる?」


「いや、哲郎が口走ったんじゃない」


「いやいや、そんなはずはない」


 だって俺、これ言っちゃいけないやつだと思っていたし。

 半笑いで、顔の前で手を振った。


 速水の視線が冷たくて、痛かった。


「……マジ?」


「マジ」


「……迂闊だった」


 入江さんに申し訳が立たず、俺は俯いた。


「相手は誰なの?」


「それは言えない。相手の気持ちを考えてやってくれよ」


「まあ確かに。……自分の気持ちを伝えるのって、勇気がいるもんね」


 速水は不貞腐れたように唇を尖らせた。


「本当だよな。俺も同じこと思ったよ。本当、入江さんは勇気のある子だった」


 ……ん?


「今俺、名前言ったか?」


「言ったね。一切包み隠す気がなくて、正直驚いた」


 な、なんてこった!

 こりゃあ本当に、入江さんに対して頭が上がらない。


「わざとやってるの?」


「何おう。ば、馬鹿にしているのか」


「結構してる」


 でしょうね。

 俺も、とんだ糞ムーブをかました自覚がある。


 一日の疲れ、相当溜まっていたらしい。今日は本当、俺の脇はとことん甘い。


「……ふうん。入江さんか。隣のクラスだね。……お淑やかで、凄いかわいい子だよね」


「へえ、そんなこと今日まで知らなんだ」


「……それで?」


「何が」


 速水はしばらく逡巡した後、意を決したように言ってきた。




「哲郎は、入江ちゃんの告白、どう返答したの?」

うち、たくさん投稿すればポイントたくさんもらえるってきいたねん

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