同じ失敗は繰り返さない
続く五番の及川は、インコースのストレートに腰を引かす三振となった。
「切り替えろ。今の一点は仕方ない。こっちの作戦は間違っていない」
ベンチに戻ると、いつもはほぼ静観している監督が俺達に向けて激励の言葉を言った。
まあ確かに。
低めのボールを宮崎に無理やり掬われていなかったら、及川が三振だった結果も含めれば、こちらも無失点だった。
まあそんなの結果論であることも間違いではないが、とにかく初回、一点で済んだことはまだ救いがある展開ではなかろうか。
一点取られただけでも絶望的なピッチャーが相手であることを踏まえると、そんな考えがそもそも間違っている気がしてくるかもしれないが、点を取られてしまったものは仕方がない。
それに、これからの宮崎との対戦はもっと徹底的にボールゾーンの勝負をしようと割り切れる結果に収まっただけ、まだマシだ。
あんなボールを打てる相手に無理に勝負する必要は、やはりない。今頃、チーム一同がそう思っている頃だろう。
今の一点は割り切る一点だ。監督の言う通り。
……だけど。
ベンチに腰かけていると、監督が珍しく俺の隣に腰かけた。
「武田、次の回の守備から……」
「監督。俺次の回から、守備位置、少し下げます」
監督の言葉を遮ってそう言うと、監督はしばらく黙った。
今の一点は割り切る一点。
だけど、失敗であることは変わらない。取られちゃいけない先制点であったことには変わらない。
これ以上、同じパターンでの失点は防がないといけない。
これ以上、同じミスをしちゃいけない。
俺がミスだと思っていたこと。
それは、俺が宮崎の打球を取れなかったことだった。
「あのボール、多分もう少し深めに守備位置を取っていたら、取れました」
「そうだな」
「帝国第一の右バッター、一、二番も強振だったし、多分総じて強くバットを振る意識で打席に入っています。引っ張り傾向の強い打球、今日は増えると思うんです」
「それだけじゃない。左バッターも強振の意識は強そうだ。三遊間に飛ぶかはともかく、深めに守る選択肢は正しい」
「はい。そうですね」
ふと、さっきの監督の言葉を俺は思い出していた。
「『全てのプレーは繋がっている。
それは、一つのプレーだけじゃないからな。その前のプレー。その前の前のプレー。そして、後に続くプレー。
全てが全て繋がっていく! 絶対に慢心するな! 周囲をよく観察して、最善のプレーを心掛けるように』」
反芻するも、監督は相変わらず無表情だった。
「監督の言葉通り、同じ轍は踏まないように、最善のプレーを心がけようと思います」
「……深めの守備位置で守るということは送球がより遠投になる。送球ミスが増えやすくなる。絶対に送球エラーはするなよ」
「わかってます」
二回表、こっちの四から六番打者は、及川にあっさり抑えられた。
俺はグローブを掴んで、立ち上がった。
「接戦のエラーは敗北の布石になりますからね」
俺はグラウンドへ走った。
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