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ビビる

 一回裏。今日の先発の大貫先輩のピッチングをショートから見守ろうとしていた。

 足の骨折以降、初めての公式戦の舞台が甲子園。当人からしても緊張を感じる中でのピッチングになることだろう。


 そんな中大貫先輩は、初回から強力打線相手に飛ばしているように見えた。


 一番尾白を三振。二番も三振。三番の森本はショートゴロ。

 森本のボテボテのショートゴロを捌きながら、快調な大貫先輩のピッチングに思わず口笛を吹き感嘆していた。

 この調子が続けば、勝利を掴み取れるかもしれない。


 初回の攻防を終えて、ガチガチだった試合前とは一変、ベンチに覇気が戻るのだった。


 二回表。

 七番の下位打線から始まる攻撃は、三者三振。どうやら初回を経て、藤本に危機感が生まれたのか、エンジンが一つかかったようにも見えた。


 二回裏。

 快調な大貫先輩の前に、四番から始まる相手は三者凡退。


 三回表。

 先頭打者は俺だった。


 まだ少し痛むわき腹の痛みに耐えながら、いつも通りを心がけるべくルーティーンに勤しんで、打席に立った。


 初球、ストレートが外に大きく外れてボール。

 二球目、カットボールが再び外れてツーボール。


 三球目……。


「うおっ!」


 思わずのけ反るインコースストレート。

 ボール。


 そう思ったが審判は中々コールをしなかった。


「ボール」


 ほっ。

 それにしても今の球、審判も判定に時間をかけたな。

 まるで……際どいボールだったように。


 もしかして、さっきのデッドボールに俺が引っ張られている?


 四球目。

 いつもより踏み込みきれない俺に対して、藤本はアウトコースにストレートを投じた。ストライク。


 やばい。

 今の踏み込みだとアウトコースのあそこには手は届かない。もっと踏み込まないと。


 そう思ってからの五球目。

 藤本が振り被り、インステップに踏み込み、スリークォーター気味に投じた五球目は……。


 ストレート。


 空振り。

 まるで届かなかった。コースは、恐らくストライクいっぱい。


 踏み込みきれていない。

 やはり、さっきのデッドボールの激痛が脳裏をよぎり、アウトコースの球に対して、無意識に踏み込むことを恐れてしまっている。


 冷や汗が背中を伝った。


 バレているのか?

 二球続けてアウトコース。それは最早、一打席目の結果で俺が踏み込むことに恐怖を抱いている証明ではないのだろうか。


 そのことに、このキャッチャーは気付いているのではないだろうか。


 いいや、考えすぎだろうか。

 藤本はコントロールアバウトなピッチャー。アウトコースに二球続いたのもただの偶然。


 ……ただ、根本はそうじゃない。

 さっきのデッドボールの影響で、踏み込み出来ていない。


 その時点で、最早この打席の勝負は決したようなものだったのだ。


 六球目、インコースのストレートに腰を引かせた。


「ストラーイク!」


 三振。

 さっきのデッドボールがチラついて躱そうという思考が働いてしまった。


 ビビったのだ。


 デッドボールがまた来るかもしれない。

 そんなことにビビって、貴重な一打席を潰してしまったのだ。


「チクショウ!」


 久しぶりに、自分に腹が立った。

 勿体ないことしやがって、と。


 ……次の打席では修正してやる。

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