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出会いは突然やってくる

 両親に与えられたスマホの画面には、母からの『頑張って』のメッセージだけが表示されていた。


 妙な胸騒ぎにも似た緊張を覚えつつ、俺は空港で別れた両親の安寧を祈りつつ、左肩に担いでいたボストンバッグを背負いなおした。


「おはようございます」


 今日からお世話になるアパートの塀を超えた先で、大家である老婆、木下さんはせっせと竹ぼうきで庭の掃除に明け暮れていた。アパートの南側の塀の傍に、大きな樹木が生えている。その木の葉が、庭にはたくさん落ちていた。


「ああ、武田さんね。おはようございます」


 こちらに気付いた木下さんは、丁寧に俺にお辞儀して返した。


「今日からお世話になります」


「いいえ。こちらこそ、こんなぼろアパートで不便でしょうが、今後ともよろしく」


 木下さんの言う通り、彼女のアパートは築三十年を超える少し古びたアパートだった。外装はペンキを塗り替えたばかりなのか小綺麗だったが、扉だとか壁から露出しているパイプだとかは、使い込まれたようにくすんでいた。


「いいえ。高校生である俺と契約してくれたんですから、それだけでいいんです」


「そう言ってくれると助かります」


 木下さんは、笑顔の多い老婆だった。顔の皺、白髪など、年を重ねた事実は変わらないが、かつては美人と呼ばれた人だったのではないだろうか。彼女の微笑みを見ているだけで、少しだけ幸せな気持ちになるのは気のせいだろうか。


 気持ちを和ませながら、俺は木下さんとの会話に興じた。


 しばらく話して、


「実は、今年の春からもう一人高校生と契約する予定になっていてね。確か、学校も同じだったと思うから、仲良くしてあげて」


 木下さんはとても嬉しそうに言っていた。


 高校生で一人暮らしだなんて珍しいなと自分の立場も忘れて思いながら、俺は最後に木下さんに会釈をして、自室となる二〇三号室へ向かうため階段を昇った。


 鉄骨で出来た階段を音を鳴らして上がりながら、時計を確認した。まもなく、引っ越し業者が来る時間だった。


 これから、本当に始まるんだな。


 少しだけ感慨深い気持ちになりながら、俺は自室の前まで辿り着いて、鍵を通して扉を開けた。


 部屋の中には……。




「は?」


「……え」


 見知らぬ女子が、あられもない姿で立っていた。

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