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ハンカチ  作者: 森とーま
2/3

本性

 赤波あかなみまさめの英鏡通いが始まった。放課後になると家と反対方向のバスに乗り込み、駅前で乗り換える。三十分ほどで英鏡学院に着いた。何度か訪ねるうちに気付いた事があった。雨陰あまかげ信条しんじょうは学院内で恐らく何らかの形の「権力」を持つ立場にあるという事。自由ではないという雨陰の言葉が正しいとしたら、その権力は覇気とか行動力といった雨陰自身の力ではなく、金銭の絡んだものであるに違いなかった。とかく先生方に融通が利いた。先の美術部と手芸部合同の交流会にしろ、他校の生徒である柾を自由に出入りさせる為の手続きにしろ。柾は「課外活動」と打ち込まれたバッジを渡された。それを付けていれば校内で誰に会っても言い訳が立つ、と雨陰は言った。東一高側の許可は必要無いのか、と尋ねると、雨陰は薄く笑って頷いた。柾は英鏡の教師の誰にも挨拶一つしないまま、雨陰の一存で出入りを許可される形になった。

 絵は確かにすぐ上達した。雨陰は一つの絵に時間を掛けさせず、次々と描かせた。水彩、油絵、色鉛筆、取りあえず一通りの道具を使ってみるように言われた。版画もやった。木版、エッチング、リトグラフ。美術準備室から一歩も出ずに全ての材料が揃った。美術室で美術をやろうって奴の気が知れない、と雨陰は皮肉めかして何度も言った。

「雨陰さんは部活を引退されないんですか?」

「エスカレーターだから」

「え?」

「黙ってりゃ英鏡学院大学に行けんの。オーケー?」

「あ、はい」

「お前んとこは勉強、大変なんだろ?」

「ええ、でも、皆遊んでます。まだ一年なので」

「赤波は成績いいんだろう」

「真ん中より下ですよ。英鏡に来れば良かった」

「馬鹿か。ここはお前の来るとこじゃねーよ」

 二人とも気乗りしない日というものはあって、そんな日はバッジと校章を外して街に出掛けた。柾がろくに遊んだ事が無いのを知って、雨陰は呆れた様子だった。

「おっまえなあ!」デパートの地下街の喧騒に負けないように、雨陰は声を張り上げた。「ゲーセン、親としか来た事ねーの? 人間じゃねーよ!」

「高校になるまで小遣い貰ってなかったんです」

「そういう問題じゃないだろ? カラオケは?」

「親が嫌いなので」

「親は関係ねーよ! 行くだろ、仲間同士で」

「仲間、いなかったので」

「映画館はあるんだろうな?」

「………」

「え?」

「五歳の時に一度だけ」

「分かった、もういい」雨陰は柾の肩に手を回して凭れ掛かった。「よく今まで辛抱して生きてきた。おお、立派なもんだ。俺が全部連れてってやるからな」

 遊びに行く日の方が多い、と気付いた時には春になっていた。雨陰は黙っていたが、『エスカレーター』に乗りはぐれた事はすぐに分かった。市内にアパートを借り、アルバイトで暮らしている風だったが、真面目に働いていたのは春の間だけだったようだ。夏頃からは平日の昼間でもお構いなく柾を呼び付けるようになり、柾はしょっちゅう授業をすっぽかして彼のアパートに出掛けた。二人でテレビや映画を見ながら昼食を取り、夕方から街に出た。よく、若者向けの安い飲み屋に何時間も居座った。雨陰は吐くまで飲み、柾はソフトドリンクに徹した。雨陰は酔うとしつこくアルコールを勧めたが、柾はきっぱりと断り続けた。煙草も同様だった。そこだけが柾の譲れない点で、それ以外の事なら何でも雨陰の言うがままだった。

 焦りはあった。もともと東一高内では成績の良い方ではなかった。家は父親の入院騒ぎでドタバタ、学校は生徒の自主性を尊重した放任主義、とは言え、たび重なる欠席遅刻早退や帰りが遅くなる理由を、いつまでも誤魔化しきれるはずがない。英鏡の先輩に絵を教えて貰っている事は何度か家族に話していたが、今や雨陰が絵を描く事は全く無くなっていた。柾は時々、家で一人で絵を描いた。あの『ハンカチ』のように刺繍にしようとして下描きをし、雨陰から『絶対にいい作品になるから、手を抜くな』と言われたきり、そのままになっていた絵があった。何度もその絵を描き直した。色と大きさを決め、布を用意して下描きを写し取った。自分で糸を買ってきて、母親のミシンを持ち出して夜中にこそこそと作業した。面白くも楽しくもなかった。

 そして、始まった。

 始まりは違和感が無かった。その日、柾が訪ねると、雨陰はコーラを飲みながらアダルトムービーを見ていた。初めてだったが、特にそんな事で騒ぐ歳でもなくなっていたので、ただいつものように挨拶をして上がった。雨陰も平然とした様子で柾にコーラの残りを差し出した。二人は少しの間、並んで見ていた。山場に来る前に雨陰は溜め息をついて機械を止めてしまい、今日のは外れだった、と言った。最近はゲイが流行っているのかも知れないと柾は思った。画面の中で揉み合う二人がどう見ても男と男だったからで、柾としてはそれ以上の感想は無かった。人の趣味は人の勝手というものだ。少女漫画はゲイの楽園だし、テレビにはゲイと称するタレントが沢山出ているし、アダルトムービーにも色々と変わった趣向を凝らしたジャンルが必要なのだろう。しかし制作する側は大変そうだな。柾はゆっくりとコーラを飲んだ。炭酸は苦手だった。いつも、半分以上気が抜けるまで待ってから飲む。飲み終わった時、雨陰が覗き込んでいた。彼は黙っていた。彼の目が好きだと柾は思った。されるままにしていた。物心ついてから初めてのキスをした。違和感は無かった。

 押し倒されるのは時間の問題だと思った。柾はなるべく平然とそれを受け止めているつもりだったが、実際には全くその事で頭が一杯になっていた。判断を誤ったのはそのせいだった。初めてそこに連れて行かれる時、柾はホテルに連れて行かれるものと思い込んでいた。でなければ道すがらに気付くはずだった。闇町という場所がある事は知っていた。そこと関わらない為に何に気を付けるべきかも、無理に連れ込まれそうになった時どうやって逃れたらいいかも。入ってしまったら取り返しが付かない事も。酒だって煙草だって断ってきた。雨陰にどんな風に誘われても、それだけが譲れない一点だった。闇町だってそうやって断らなければならなかったのだ。

 自分の期待した場所ではないと気付いたのは、朽ち果てた木造のビルの、最上階に踏み入れた時。軋む扉を潜り雨陰に続いて入ると、何も無い空っぽな部屋に、身なりの良い若い男が立って迎えた。

本塚もとづか」と雨陰は言った。

「最近、無礼だぞ」男はにこりともしないで冷たく言った。「呼び捨てしていいと()()()()()

「あんたと俺の仲じゃねーか」

「そこにあるモン切り取っぞ」本塚は目付きではっきりと雨陰の股間を差した。言い方が本物だったので、柾はぞっとした。自分が何処に来てしまったかに気付いた。

「はいはい、本塚サン。俺が悪うござんした」

「お前、アサも大概にしたら。どんどん頭悪くなってくのが分かるぜ」

「やめられなくてね」

「『ミナタクル』だろう。引き返さないと死ぬぞ。あれは新種の麻なんかじゃない、昔っからあるやつだ」本塚はゆっくりと歩み寄り、雨陰の胸倉を掴んでその目を覗き込んだ。雨陰はへらへらと笑っていた。本塚はいらいらしたように言った。「どうでもいいけどな、クリーン・ドラッグだって本気で信じてるんなら、教えといてやるぜ。あれはトリップ中に死ぬんだ。分かったな。後遺症もへったくれもねえ。やってる最中に死ぬんだよ。最悪のバッド・トリップの最中にな。分かったな。今、素面だろうな。二度と言わねえぞ」

「やめられねーんだよ、兄貴さん」雨陰は声に哀調を滲ませた。「やめられねーんだ。どうやったら我慢できる?」

「俺が知るかよ。俺は、やるなと言ったはずだ」

「助けて欲しい」

「無理だな」本塚はそっけなく雨陰の胸倉を放した。それから、柾を見た。「()()は?」

「俺の弟」

「嘘つけ」

「後輩だよ」

「嘘つけ」

「本当だって」雨陰はむきになった。「本当に、後輩。手も繋いだ事ねーよ。凄く可愛いんだぜ」

「んな事、見りゃ分かる」本塚はじろじろと柾を見下ろした。「いい顔だ。滅多にねえな。女より綺麗だ」

「余計な事吹き込むなよ?」雨陰は柾の肩を掴んで、本塚から一歩離れさせた。「箱入りのボンボンなんだ。俺だって指一本触れた事無い」

「嘘つけ」

「本当だって」

「俺にも貸せよ」

「駄ァ目だって、ふざけんな」

「ふざけんなはオメエだ」

 男たち二人は柾を間に挟んで言い争った。

「自慢しに来たのかよ?」本塚の声は高くなった。「見せびらかしに来たんか。ハア?」

「そーだよ、当たりめーだろ、バーカ!」

「ふざけんな」

「ふざけんな」

「俺に貸せよ!」

「俺のだ!」

 最初の恐怖と緊張が解けて、柾はだんだん馬鹿らしくなった。雨陰と本塚は柾を貸すの貸さないのと言って一頻り怒鳴り合い、そうこうするうちに別な男が扉を開けて入って来た。背の高い逞しい体つきで、肌は日焼けしたように浅黒く、見た事の無い銘柄の煙草を吸っていた。

「おう、勇気」本塚が片手を上げた。「待ってたぜ」

「嘘つけ」と勇気は言った。「また取り合いか。外まで聞こえてるぜ。しかし今日はまたなっさけない面したお稚児さんだな」勇気は柾を見下ろして無感動に言った。「こんなの取り合って面白いのか、お前ら」

「俺の後輩ですよ」と雨陰はこちらには敬語を使った。「抱き枕じゃないってのに、この勘違いジジイが貸せ貸せって騒いで」

「誰がジジイだと」

「本塚さん、見苦しいからやめろよ」勇気は慣れた様子で窘めた。「見るからにシャバの坊や君じゃないか。あんたのお相手にはならんぜ」

()()()は黙れ!」

「頭おかしいよ、こいつら」勇気は柾に向かってにこりと笑いかけた。「お前もホモか?」

「……いいえ」闇町に入って最初に口にした言葉が、これだった。

「名前、何て言うの?」勇気は無邪気な調子で聞いた。

 柾は黙っていた。

「ああ、いや、言いたくないならいいけど……いつも雨陰が言ってる奴だよな? 何だっけ、そうそう、赤波柾」

「違います」鋭い痛みを感じた。雨陰が闇町で自分の名前を言いふらしていた。最悪だ。不良だとは思っていたが、自分なりの節度を守って付き合ってきたつもりだった。何よりも彼が大好きだった。憧れだった。尊敬していた。こんな形で迷惑を被るとは。

「お前、闇町が初めてなのか?」勇気は心配そうに言った。「かあいそうにな。怖いのか? 嘘をついてもいいけど、この街では、目上の前では笑ってなきゃ駄目だぜ」

「すみません」思い切って深く頭を下げた。賭けに出るしかなかった。「すみません! 帰らせて下さい! お願いします! 帰らせて下さい!」

「取って喰ったりしないよ」勇気は笑いながら言った。「帰りたきゃ帰んな。おい雨陰、後輩が怯えてるよ。帰らせてやれ」

 意外にもあっさりだった。雨陰は、何しに来たんだと罵る本塚にへらへらと手を振って、柾を連れて部屋を出た。階段を降り、ビルを出た所で、雨陰はがくりと膝を折った。次の瞬間には湿ったアスファルトの路面に奇妙な姿勢で転がっていて、柾が屈み込んだ途端に喚き始めた。聞き取れないほどの早口だった。途切れ途切れに聞き取れる単語は、キリンがどうこうとか誰それのバイクだとか、紫だとか、全く一貫性が無かった。気が狂ったとしか思えなかった。本塚との会話の最初の方にドラッグという言葉が出て来た事を思い出した。柾は動転した。「信条さん」

「柾」雨陰の目は何処も見ていなかった。「ここに来てみろよ最高だぜお前も来いよ本当に凄いんだ」

「信条さん、いつ、薬を」

 雨陰は何かまた物凄い早口で語った。

「信条さん」

 会話が成り立たない。雨陰の口からは涎が溢れ、全身から滝のように汗が噴き出していた。顔は血の気が無い。呼んでも話し掛けても無駄だった。起き上がらせる事もできなかった。闇町のど真ん中に救急車が来るはずもない。雨陰は今すぐ死んでもおかしくないような様子だった。柾は夢中でビルの中に引き返し、階段を駆け上がった。

 本塚と勇気は先ほどの部屋の真ん中に座り込んで、何事か真面目に話し合っていた。柾がガバと扉を開けると、二人は一瞬警戒したように顔を上げ、それから笑った。

「なんだ、戻って来た」

「俺と遊ぶ気になったのかい」

「雨陰に何かあったな」勇気は立ち上がって言った。「トリップか?」

 柾は息を切らしながら、頷くのが精一杯だった。

「路上で飛ぶなんてどうかしてるよ」本塚も面倒くさそうに立ち上がった。「ほんとに狂ってんな」

「時間差で来るやつがあるんだよ。腹ん中でゆっくり溶けて、忘れた頃に突然トリップするやつ」

()()()、本気で狂ってるって」

 二人は取り立てて急ぐ様子も無く、階段を降りて行く。柾も追い掛けた。雨陰はまだ同じ所に転がっていた。野次馬が五六人集まって遠巻きに見物していたが、本塚と勇気の顔を見るとさっと逃げて行った。二人は両脇から雨陰を抱えて、ビルの中に引きずり込んだ。入口の木戸を閉めると、玄関は薄暗くなった。雨陰はまだ訳の分からない事を喋っていた。さっきよりもますます興奮している様子だった。柾は呆然として変わり果てた先輩の姿を見下ろした。今まで気付かなかったが、以前よりもかなり痩せていた。

 本塚と勇気は側の壁に凭れて立ったまま、雨陰が騒ぐに任せている。

「帰っていいぞお前」勇気が言ったが、柾は動けなかった。

「それとも、俺と本気で遊んでくか?」と本塚。柾は首を横に振った。

「本塚さん、いい加減にしろよ。坊や君はノンケだとよ」

「おう、いいさ、俺は初心者専門だ」

「昼間っから気持ちの悪い話やめろよ」

「勇気だってこないだ昼間っからバージン専門とか言ったろ」

「女はいいんだよ女の話は」

「あの」柾は俯いたまま口を挟んだ。「すみません」

「なんだよ?」勇気はぞんざいに聞き返した。

 柾は怯んだ。庇ってくれる雨陰もいない。「あの……信条さんは。俺は……ドラッグやってたなんて知らなくて……闇町に来てたのも知らなくて……」

「だから何」勇気の目には先ほどの無邪気そうな笑みの欠片も無かった。

「治らないんですか」柾は顔を上げた。「本塚さんが……無理だと」

「本塚さんがどうしたって? はっきり言えよ」

「信条さんが、やめられないから、助けて欲しいと。そうしたら、本塚さんが」

「無理だっつったよ」本塚はうんざりしたように言った。「だってそうだろ? ミナに嵌まった奴は全部死んでるぜ。俺が知る限り。幻覚剤なんか大した依存性も無いのにどうしてやめらんねえのか分かんねえよ。何が助けてくれだ? 俺は、やるな、と言った。何度も何度もな。それこそが俺の助けってもんだよ。それをこいつは蹴っ飛ばしたんだぜ? 今さら助けても糞もあるかって」

「お前には気の毒だけど、手遅れだな」勇気も容赦なく言った。「シャバでどんな風に取り繕ってたのか知らないが、ここに来る時は素面の方が少ないんだ。もう半年以上になる。お前が悪いわけじゃないけど、気付いてやれなかったお前の落ち度なんだよ、これは。そういう風に俺達を睨まないでくれる? 俺達は麻売って小遣い稼ぎするような下層階級じゃないの。雨陰だって俺達と上流の付き合いだけしてれば、こんな事にならずに済んだんだ。……だから、睨むんじゃねえよ! ()()()()()!」勇気は突然激昂した。「なんだよその目は! ガキが少し優しくしてやりゃあ付け上がって! ふざけんな! 消えろ!」

「勇気、やめろよ」本塚が呆れたように言った。「シャバガキ相手に、何むきになってんだ?」

「本当にシャバガキかよ、なんてふてえ目してやがる」

「ほら、泣いちゃったじゃないか、可哀相に」

「俺が泣かせたんじゃない」

「おめえだろ、どう見ても」

 こんな所で泣くわけには行かないと思えば思うほど、涙が溢れた。思えばこの時から柾の胸には、雨陰を失ってしまうという黒い予感が根を下ろしていた。

「お前、もうここには来んなよ」本塚が柾の横に立って、慰めるような声で言った。「ここはお前の来るとこじゃねえからな。麻も売ってるし怖いお兄さんがお前を泣かせるし」

「ホモもな」勇気はぶすっとして付け加えた。

「雨陰とももう口きくな。こいつは親が金持ちだからな、闇町にコネクションがあるんだよ。お前は無いだろ? 本当ならお前は俺達とタメで口きいちゃいけねんだぜ。雨陰に免じて許すけどな。さっさと行けよ。二度と来んなよ。雨陰はもう捨てとけ。こいつはここで死ぬんだから」

「嫌です」柾は俯いたまま叫んだ。「俺には信条さんしかいないんです。嫌です」

「赤波」

「嫌です!」

「赤波柾」

「嫌です! 信条さんを……」柾は泣き叫んだ。「助けて下さい。信条さんを助けて。何でもします、何でもするから、殺さないで」

 衝撃はあった。音はしなかった。顔の左側に壁が迫ってきたと思ったら床だった。激痛は雨陰に蹴られた時の比ではなかった。暫くは自分の手足をどうやって動かせばいいのか思い出せずにいた。本塚が文句を言う声がしたから、殴ったのは勇気なのだろう。どうでも良かった。これ以上何か努力したくなかった。死にたかった。初めて死にたいと思った。視界は灰色で、ぐしょ濡れだった。涙で。

「俺やお前がどうこうできる事じゃないんだよ、これは。死神と悪魔の決める事だ」勇気の声。

 神様の決める事だよな。いつか雨陰が言った。

 いつどうやって帰ったのか覚えていない。気付いたら家の玄関の鍵を開ける所だった。何故遅くなったか、何故怪我をしているか、言い訳も思い付かないまま家に入ったが、誰にも何も聞かれる事はなかった。家族は寝静まっていた。自分の部屋に入って明かりを点けると、机の上の時計を見た。午前四時だった。


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