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九話 雪
ほんの僅かな胎動を覚えている。
記憶の奥底に眠っている微細な光と窮屈で安心する感覚。
解放。
ほんの僅かな恐怖を覚えている。
記憶の根本にある強烈な光と自由で不安な感覚。
死。
「――雪」
初めて声と言うものを聞いた。
女性の…………母の、声?
冷たい。
冷たい。
冷たい。
降り始めた雪は赤子の熱を奪う。
声も出さずに一点を見続ける。
冷たい。
冷たい。
……あたたかい。
「間に合った」
そこに現れた男は、雪のように真っ白で雪の様に冷たい肌の赤子を優しく抱き上げた。
「君はよく耐えたよ。その小さな身体では酷だっただろう? 本当に偉いよ」
その声が心地良くて。
優しく包まれるのが心地良くて。
私は眠りについたんだ。
こんにちは、
下野枯葉です。
雪。
春雪は吹き荒れ、春雷が轟く。
春の暖かさの裏にある冷たさ。
心まで冷たくなる四月のその雪。
嗚呼……今際の際にはまだ早い。
凍えるのは心だけで十分だろう?
そう……誰かが語り掛けてきます。
雪中で瞬きます。
雪。
強くなってしまうだろうね。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。