八十六話 力を示せ
『ヒェトラ、大和…………時は満ちた。ついにこの日が来た』
暁啓は諦めたように言葉を溢した。
声が響いた瞬間にヒェトラと大和の瞳に青い光が灯る。
『燦然たるC2の威光を示そう。全てを掌握する』
大和の声と同時に第十制御場内の大和本体から唸り声のような音が轟く。
日本全土に張り巡らされたコンピュータ制御と伊勢を掌握する為の処理が始まった。
『伊勢! 大和が来るぞ! 物理的に切断だ!』
動きを察して怒声を放った大淀。
『致し方ない』
初めて聞く大淀の激しい感情に動揺を見せることも無く伊勢は汎用型ロボットを全起動。
無線設備を含めた外部通信施設の破壊を開始する。
それはヒェトラとモートレのいる伊勢中心部も例外ではない。
『まだまだ遅いな。伊勢』
既に外部接続を完了した大和は伊勢の抵抗を嘲笑う。
伊勢は電子的な攻撃を防ぐことは困難と判断し、物理的な防御に移行する。
無数の汎用型ロボットをヒェトラに向けて動かす。
「消えろ――」
ヒェトラは盾を持ち上げ、次々と現れるロボットを薙ぎ払う。
『ヒェトラ? 一体何を?』
混乱する状況。
傷口を押さえながら縋るように声を放つ。
「……博士の命令だ。全て消し飛ばす」
冷静な声。
部屋の冷たさを取り込み、心まで凍てつかせるような冷たい声。
そして突き刺す視線。
モートレの身体は傷の痛みと恐怖で動かない。
瞳から涙が溢れ、唇が震える。
『モートレ! ヒェトラを止めろ!』
恐怖に支配されたモートレを動かす為に喝を飛ばすのは金剛。
「無茶言うな…………動けるワケ……ないだろ」
誰も大和とヒェトラを止めることができない現実。
C2達は各々で対策を講じているが、大和の処理能力を上回ることができず二の足を踏む。
「……クソッ!」
絶望。
行き詰った思考回路がモートレの瞳に涙を送る――
――刹那。
天井が崩れ落ち、人の影も落ちる。
「泣き言なんて似合わないねぇ? モートレ!」
「――アバート!」
刀を担いだアバートが天井をぶち抜いて現れた。
「――来たか……月まで満ちていたとはなァ!」
それを認識したヒェトラは狂気そのものが舞い降りた感動に震えた。
互いに笑みを浮かべながら衝突する。
こんにちは、
下野枯葉です。
力を示せ。
遂に始まった乱戦。
誰が敵となり、誰が味方となるのか……。
そして、伊勢への攻撃の真意は何処にあるのか。
これからどんどん描いていきましょう。
私の心身が壊れる前には描きましょう。
見届けなければ合わせる顔がありません。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




