八十話 死地へ
囲まれた現状。
ヒェトラは冷静に少女型のロボットを蹴り飛ばし、破壊した。
一方のモートレは混乱から立ち直る為に周囲の警戒。
地面の中に沈み込む感覚と共に、部屋自体が降下する。
エレベーターに乗ったような感覚はふたりの少女にとって珍しいものであり、横隔膜のあたりに圧迫感を覚え、気分が悪くなる。
誘いに乗った結果、チームの分断が起きてしまったことに一抹の不安があるが、結果を噛み締めてヒェトラは指示を送る。
『目下の状況は芳しくない。伊勢の破壊を最優先事項に据えて動け』
繋がるかもわからないが念のための通信。
目の前のモートレは不甲斐なさを感じた表情をひとつ。
勝てると確信した瞬間に足下を掬われた。
それに対してヒェトラは冷静な対応を迷うことなく進める。
私がここに来た意味が薄れる感覚。
自分の中でヒェトラと相対評価を行っていた現実。
『通信はできない。諦めなさい……アキヒロの子供達』
降下が完了した感覚と当時に伊勢の声が部屋に響く。
そして壁の一面が開いた。
『さぁ入れ、私の私室だ。早くアキヒロに会わせてくれ』
冷たい風が絡みつく様に足元に流れ込む。
明らかに低い室温。
真っ白で目が痛くなる照明。
並ぶサーバー群。
これが伊勢を構成する要素の核であることを理解し、背筋が凍る。
人間が入ることを想定していない部屋。
室温、サーバーの配置、照明の明るさ……あらゆる要素が人間を拒絶しているようにも思える。
「いいだろう姿を現せ」
部屋の奥へ向けて歩き始めたヒェトラはそう呟く。
後を追うモートレは笑みをひとつ。
『断る。君と目を合わせることは死を意味する』
「どこで知った?」
『君達の神経接続型のチョーカーを作ったのは私だ』
「……」
受け入れたくない情報が耳に届き表情が曇った。
モートレも同じような表情を浮かべた。
伊勢という相手の掌の上……加えてヒェトラの能力が通じない。
絶望に近い状況だ。
『おおよそ瞳に秘密があるんだろう。誰の記憶かは知らないが……服従か隷属の強制と言った所だろう』
部屋の最奥にはモニターが一枚。
伊勢の声が聞こえるスピーカーは天井にあるのだろう。
心を抉る言葉は続く。
『強制とは言葉遊びが過ぎたかな? 共鳴と言ってあげよう。人間やAIの思考能力に対して感情を移す……』
伊勢は言葉に煽るような抑揚を言葉に乗せる。
明確な挑発。
能力を暴くことでヒェトラの感情が揺れ、隙を作るのが目的だ。
しかしヒェトラは驚きはしたものの警戒を解かない。
『なぁ、そうなんだろう――――響』
その言葉を聞いた瞬間にヒェトラはホルスターからUSPを引き抜き、モニター目掛けて連続で弾丸を撃ち込んだ。
発露した怒り。
USPのトリガーが軋むほど強く引き金を引く。
部屋中に発砲音が響く。
モートレはその怒りに恐怖で膝を震わせた。
「お前を消す……塵の一つも残さない」
『ばーか』
怨嗟が弾けた瞬間に伊勢の声が響く。
同時にファントムがサーバーの陰から現れてハンドガンを構え、ヒェトラを目標に発砲した。
こんにちは、
下野枯葉です。
寒い。
最近寒い。
足先から冷たい。
きもちいい。
さて、
死地へ。
伊勢の御前へ。
悲しいよ。
ヒェトラとモートレは何を想って伊勢と相対したのでしょうか?
伊勢への恐怖は無かったのでしょうか?
もっと書いていきたい。
伊勢の異質さを。
でも、書いてしまうと辛くなるだけです。
良い塩梅を見つけましょう。
死地で踊ってください。
笑いながら踊ってください。
あはは。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。