七話 狂戦士
叫声と警報がけたたましく鳴り続け、兵士が困惑と恐怖に包まれ始めた。
後退し、守りを固めるべきだ。と逃げるように呟いた兵士に合わせ、その他の兵士もその言葉に同意を示しゆっくりと内へ。
天井に取り付けられた二門のタレットの後方まで後退し、息を整える。
遠くからの断末魔の叫びに六人の兵士は後方に警戒を移し、瞬時に前方の不注意に気づく。
「壊せ」
USPを構えたヒェトラがタレットを完全に無視しながら突っ込む。
――子供?!
明らかな動揺。
タレットが敵を捕捉し、銃口をヒェトラに合わせる刹那――
――それよりも速く壁を駆け、アバートが鹵獲した小銃でタレットを殴り、破壊した。
人間が咄嗟の混乱から立ち直るのにかかる時間……約二十秒。
ヒェトラは射線の通る三人に対し四発ずつ発砲。
9㎜パラベラム弾はボディアーマーを貫通することはなかったが、首や眼球などの隙間に有効であり、あの世に送るには十分だった。
倒れる兵士を遮蔽に、完全に内に入り込んだヒェトラは一切の躊躇いなく、正面の兵士の鼠径部を切り裂き、喉と眼球を突き刺した。
残り兵士、二。
状況を把握したふたりの兵士は合わせてナイフを取り出し、構えをとった。
タレットを破壊したアバートは勢いをそのまま。慣性に従い遥か後方の空中にいる。
『体格差』と『人数の有利』で制圧できると確信した兵士達は左右から挟撃を仕掛けた。
ヒェトラが視線を送り、状況を認める。
臨戦態勢を解き、瞳を閉じた。
――諦めた。
――いける。
兵士は勝利を確信した。
そこから先の記憶はふたりの兵士にはない。
狂戦士の名が相応しいアバートだが、狂いの中にも巧さがあった。
そして圧倒的な運動能力もあった。
鹵獲した銃を驚異的な膂力で壁に突き刺し、そこを支点に慣性を反転。
一方の兵士の頭を鷲掴みにし、頭を中心に転回。
二七〇度転回した所で手を放し、もう一方の兵士の頭を壁に埋めるように蹴りを加えた。
ナイフが床に落ちる音と、壁の欠片が転がる音が小さく響いた。
アバートは命令通り『壊した』モノを数秒見詰めてから、意味を持たない言葉を数個並べて走り出した。
「各員、アバートが侵入した。警戒せよ」
ヒェトラが現状を伝えると、諦めに似た溜め息が数個とブルーケの『えぇー?!』という声が聞こえた。
モートレは手を合わせて『こっちに来ないで』と願いを一つ。
暴走状態のアバートは殲滅力こそあるものの、隠密行動をしている際にはそれを全て壊す者でしかない。
既に壊滅状態になりつつある長門内部でヒェトラは深呼吸を一つ。
屍となった兵士の首を九〇度追加で回し、拾ったナイフを二本咥えさせる。
小銃の弾薬を顔の周りに散らし、満足そうに頷いた。
「美しいじゃあないか? なぁ?」
屍に優しく語り掛け、己の感性への共感を求めた。
「……」
勿論返事はない。
「持って帰って飾りたいところだが……他の人間に見せる為にもこのままだな」
USPを取り出し、眉間と喉を撃ち抜き、空になったマガジンを交換した。
ビーとプーにアクセス状況を確認し、やはりメインコンピューターへのクラックが不可能であることを知り溜め息を一つ。
メインコンソールからのアクセスか、物理的な破壊か。
破壊衝動に駆られたヒェトラは大きく口角を上げ、ナイフを構え、静かに、素早く駆け出した。
こんにちは、
下野枯葉です。
ソシャゲが地獄の様に忙しかったです。
大変忙しく楽しかった。
さて、
狂戦士です。
アバートの狂い方の片りんを見せられてよかったです。
ちなみに、狂戦士が精密さを持ち合わせているのが大好きです。
アバート……もっと狂ってくれぇ。
でも、アバートのストーリーを書くと……つれぇよ。
涙を流しながら狂わせていきます。
そして他キャラも続々とストーリーを書いていこうと思います。
みんな良いキャラだから早く書きたいなぁ。
あ、追加キャラがもしかしたら来ます。
うまく動いてくれればいいなぁ。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。