六十六話 人の上の人
実力の差を噛み締めた。
いくら優れた技術や能力を持っていたとしても、上には上がいる。
そもそも役割が違うのだから仕方がない。
銃があれば変わっていた。
諦めの言葉を心の中で呟いた。
「――なめんな」
ブルーケの感情が変化した。
拳を躱し、笑みを浮かべたブルーケは低い体勢から格闘戦の続きを持ち掛ける。
細かい連撃を打ち込みつつ隙を待つ。
的確に捌きながら互いに動きを窺い合う。
格闘術と実践的な動きをチョーカーの記憶から補い、制圧や殺しの為の力が衝突する。
「コンパクトに戦えよぉ? フルスイングなんて許さねぇからな」
ブルーケは掴みから戦闘を展開しようとするがアバートはそれを許さない。
服の胸元を掴まれれば即座に弾き、鋭い蹴りは爪先が擦れると切れてしまいかねないので一歩内側に入り込んで脛や足首を受ける。
狂った感情と言葉の中で器用な動きを挟むアバート。
上半身への攻撃を主としながら合間に足元を狙い、注意を分散させるブルーケ。
「埒が明かねぇな!」
延々と続く応酬に嫌気がさしたブルーケは小石を掴んでからアバートを蹴って後方へ飛んで距離をとった。
着地を狙う体勢に入ったアバート。
それに合わせて小石を投げ、動きに迷いが出た瞬間を狙おうとした。
しかし、アバートは拾った枝で小石を弾きながら接近する。
「どどぉお? こっ、よこぉっよけら、れななぃよぉぉぉおおお?」
手札を切らし、落下するだけのブルーケは再び勘で防御姿勢を整える。
「ぶるーぅ……けえ?」
「え?」
急停止して頭を抱えたアバートはその場で空を見詰め始める。
チョーカーが記憶を出力している間に相手を認識したことに驚いたブルーケは驚いて様子を窺うことしか出来ない。
「ブるーけ? えああぁ? きょ、きょうはぁあ……あああ? まだだだや、るの?」
「……勿論だ」
「わっあ、ああかったよ」
「怪物だねぇえ!」
畏怖を振り払うように攻撃を再開。
しかしアバートの瞳は狂気に染まらず攻撃を捉え続けた。
全ての攻撃に対して小さいながらもカウンターを決め、着実にブルーケの体力を奪う。
ゆっくりと削られたブルーケはその場で膝をついた。
三度目の絶望。
溜めの後に放たれた右拳が顔面を吹き飛ばす刹那――
――地面を滑るように駆けて現れたヒェトラがその拳を蹴り上げた。
「そこまで」
ヒェトラの口から命令が放たれた。
「助かったぁ……」
ブルーケは安心してその場に大の字で寝転がった。
「全くの無茶だったな。アバートと訓練は私だって御免だ」
「そうだねぇ」
ヒェトラの介入が訓練終了の合図だと理解し、安心感から瞳を閉じる。
気付いていないヒェトラに対して何も伝えず、ただその瞬間を待つ。
「よし、アバート終わりだ」
いつもの命令。
狂人に正常を齎す命令。
最高で最狂の訓練を終わらせ、その評価を行おうと思考を次に移す。
「……ヒェトぉら。わかった、よ」
「っ!」
返るはずの無い声が返ったことに驚いたヒェトラは呼吸を忘れてアバートを見詰める。
アバートの右手がゆっくりと動き出し、項のチョーカーに触れてその機能を停止させる。
絶え間なく放たれていたプレッシャーが消え去り、アバートの表情に疲弊が現れた。
「私……覚えてる。途中からだけど、覚えてる。私の心はまだ完全に壊れてなかった」
満面の笑みで紡がれた言葉。
「……そうか」
ヒェトラは珍しく唇を震わせてアバートに恐怖した。
対してブルーケは最狂が正常を取り戻しつつある状況に好転を感じていた。
こんにちは、
下野枯葉です。
ここ最近暑さのせいで色々と気が狂いそうです。
そこで泣けるアニメを見ました。
最高。
良かった。
心が現れました。
では…と行かずに。
人の上に人です。
偉人は人の上に人を……なんでしたっけ?
あの言葉、聞いた当時全然響かなかったんですよね。
でも現実を知って確かに人の上に人はいませんでした。
領分を超えることをしませんでした。
しかし、
彼女たちは人でありながら、人ではありません。
そしてC2も同じです。
上って何ですか?
何が上回っているんですか?
C2を4人も裡に入れた今、何を基準にすればいいんでしょうか?
きっと上には暁啓がいます。
彼は人ですけど。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女




