六十二話 計算結果
最高の人工知能と最恐の指導者の問答は重い静寂を齎し、火花を散らしながら進み続ける。
周りの人間は著しく精神を擦り減らしていた。
「そうだとも。本来の序列に戻す……AIは人の上に立ってはならない」
「知能と処理能力が足りないね」
「感情が足りないな」
「感情で決められない事を処理するのが政治や法であって、それを的確に行えるのはもう人間では無いと思うよ。不完全な生き物さん」
言葉での殴り合い。
その決め手として放った煽り。
「おいおい、倫理観はどこに置いてきた?」
「………………言うねぇ」
カウンターが一つ。
二の句をやっとの思いで次いで悔しさを滲ませた榛名は溜め息をついた。
呼吸を必要としない彼女のそれは人間性を見せる為の行為でしかなかった。
「はい。榛名の負けですね」
弟や妹の喧嘩に口を挟む兄のように金剛は言葉を放つ。
「お前に言われるとムカつくなぁ。アタシは上とか下とかどうでもいいんだよね。大和を改心させたいんだよ。どう? 一緒に大和へ殴りこもうよ」
「……わかった。概ね同意しよう」
「私もご一緒しますよ」
「お前は来なくてもいいぞ」
「辛辣ですね」
「なんて冗談。聖域へ割いていた能力をこっちに貸して」
「喜んで。暁啓への礼と手向けとして最善を尽くしますよ」
「……手向け、ね」
その言葉に目を伏せたのはヒェトラだった。
亡き者への贈り物。
那須暁啓を思い出したのはそこにいた全員だった。
数秒の沈黙の後、口を開いたのは榛名。
「そろそろ始めようか。解放は私から……その後陸奥の完全開放、続けて金剛と長門。これで三分の一。そしてチョーカーを操る九人の少女達……勝率は――」
紡がれるは今後の方針。
そして――
「――二割だ」
――悲しい計算結果。
こんにちは、
下野枯葉です。
悲しいことがありました。
どうしようもなく、恨む事さえできない悲しいことです。
さて、計算結果です。
良く考えて結末まで見通したことに対してよく使う言葉です。
それと普通に足し算とか引き算とかにも使いますね。
AI達は全ての予測等に関してその言葉が出来よう出来ると思っています。
でも人間は、明日は上手くいきそうとか考えても使えない言葉ですね。
難しいですね。
さてさて。
榛名と金剛。
このふたりの合流が今後に活きます。
そして次回からアバート、ブルーケにご注目ください。
最狂の実力と人間性を極限まで無視した者の活躍があります。
……C2の最狂も登場するのでお楽しみに。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




