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CRIMINAL=9  作者: 下野枯葉
4章 狂気の識者
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四十一話 進化とは

「……近道」

 呟く言葉に初めて恐怖を感じる。

 夢見る世界を最速で手にするための手段が周りの不幸……想っている存在が消える未来。

「そうだ。君達の最期を語ろう」

 追い打ちの言葉が暁啓から放たれる。

 冷酷。

 識者は往々にして現実主義だ。

 誰かが傷付いたり、悩んだりという心を汲まない。

「私達の最期……ね、人間とは違って死は無いから、物理的に破壊されるとか?」

 恐怖の感情が処理速度の低下を引き起こし、言語発声が乱れる。

 初めて経験する現象に戸惑い驚く。

 まるで人間のような声の震え……C2の製作者はこの機能を意図して加えたのか?

 陸奥の表情に苦悶が一つ。

 気付いた暁啓は視線を流して言葉を続ける。

 一切の酌量も無い。

「物理的な破壊もアリだね」

「……」

「それか内乱だな」

「!」

 直球の言葉に様々な状況を想像する。

 どんな末路が暁啓には見えているのか?

 それはC2の処理能力を以てしても導き出せない。

 たった十年程しか生きていない少年に対して陸奥は無力さを感じた。

「十五年程前から始まったC2システムによって日本経済は円滑に回り、様々な問題が解決に向かい始めた。C2システムの運用方法の規則として人間側から助けを求められなければ動くことが出来ない。これはC2によって人間が支配されることを防ぐ為だな。それではここで問題。どうして君達は十二も作られたのでしょうか? この運用方法なら一体でもいれば十分だと思わないか?」

「……不測の事態に対する備え、即ち保険だ」

「その答えは記録からかな?」

「記録と合理的な理由を考えればそうなる」

 陸奥の答えに対し暁啓は『まだ正解じゃない』と視線を一つ。

 誰もが納得し、合理的で、満足の答えが間違っている。

 では本当の答えは?

 あらゆる状況と条件を巡らせる。

 納得できる答えが見つからない……。

 何を間違ったのだろうか?

「他に何か…………いや、そんな単純な了見で?」

 ハッと気付いた答えに呆れる。

 それは誰かが納得できる答えなんかではなかった。

 ただの自己満足。

「笑えるよね」

「笑え……るのかな? ちなみに製作者は誰なのか知っているか?」

「…………そうか、知らないのか。陸奥『も』知らないんだな」

 自己満足の製作者の存在を知る為、識者に問いを投げたが芳しい答えが返ることは無かった。

 暁啓は含みを持たせた笑みを一つ浮かる。

 それは妖しく、悲しい笑み。

「記録が無い。電子記録も紙の記録も何もかもが無い。製作者に関する情報のみが人為的に消されている、暁啓は知らないか?」

「……さぁな。ともかく十二も作られたのは互いの成長を促し、個性を引き出す為だ。その個性によってC2システム自体の必要性も議論されるべきと考えていたんだろう。それぞれが手を取り合うのも良し、争うのも良し。即ち内乱の可能性もあるワケだ」

「ちなみに暁啓は私達を見て来たけれど争うと思う?」

「どうだろうね。現状では内側で争うことは無いと思うよ。方針は基本的に一致しているし互いの力が必要だという認識が根底にあるから」

「現状は、ねぇ……。食えないな?」

 言葉に裏を感じ、陸奥は噛みついた。

 十二も作られた理由が好奇心を満たす為だけなのであれば自分の存在が杜撰に扱われているのを感じてしまうのも仕方が無く、その先に争いが生まれると示唆する声を聞けば声を上げなければならない。

 若造が……。

 殺気に満ちた視線を送るが少年には届かない。

 現状を変える為に来た少年が現状を語ったのだ。

 それは自分が内乱の種になると言っているのも同然に感じられる。

「安心してよ。私は君達を壊そうなんて思わない。私の仕事は君達の成長を促すことだ…………壊すのは次の世代だよ」

「…………随分と先だね。対策が済んでしまいそうだ」

 両手をひらひらと宙で踊らせた暁啓は無害だと笑う。

 そしてC2の敵を示す。

 その敵は次の世代……少年の次の世代ともなれば数十年も先のことだ。

 待てない。と言わんばかりに呆れた陸奥は腹を抱えて笑ってみせる。

 AIの成長は指数関数的に進む事を主張し、年月を与えることがいかに愚かなのかを口にする。

 しかし暁啓は一切動じずに言葉を紡いだ。

 それは人間という生き物の進化の歴史……その中でも短い時間の中で起きた成長と進化の狭間の話。

「守り抜いてみせてよ。生物とは世代を跨ぎ膨大な時間を経て進化する生き物だ……特に人間は、より優れた才と狡猾さを持つようになった。そして恐れるべきは、たった一世代でも大きく成長……いや、進化することがある。より優れた人間が現れたとき、その人間に追いつこうと周りの人間は瞬く間に進化を遂げる……だから――」



 憂いを孕んだ笑顔が一つ。



「――負けないでね」


こんにちは、

下野枯葉です。


新年早々、様々な災難に見舞われています。

こんな状況の中ではありますが、私は日常を送ることしか出来ません。

個人でできることには限りがあるので、それを済ませた後はいつも通りに。


さて『進化とは』です。

ダーウィンの進化論というものが存在し、人間も長時間かけて変化したものと言われています。

しかしこの理論そのものを疑問視する声も多く、他の説も多々見受けられます。

興味深い説も多く、ワクワクしながら読みました。

ですがこの世界では進化論を基本的に採用します。

基本的には。

そして進化と成長の違いも明確にし、AIとの対比を映そうかなと考えています。


C2と暁啓の問答も一旦あと数話と言った所です。

どうして暁啓とC2は決別したのか。どうして暁啓は神馬村を訪れたのか。

その謎も明らかにしていきたいなーと考えています。


皆様、本年も相変わらずよろしくお願いいたします。


では、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

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