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CRIMINAL=9  作者: 下野枯葉
4章 狂気の識者
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三十九話 授業

 大淀での問答の後、暁啓は点在するC2を長門、金剛、山城、三笠、伊勢、敷島、武蔵、大和、榛名、松島……そして陸奥の順で巡った。


 北の奥地にある陸奥……その村長は陸奥の指示に従い、暁啓を快く受け入れた。

そして陸奥はその身を晒した。

 暁啓はこれまでのC2達とは異なる現状に驚きと好奇心を見せる。

 今までの白亜の城のような空間は無く、田舎の祖父母の家の和室、と言う印象を受ける空間だ。

「君が……陸奥」

 笑みを陸奥に送った暁啓。

「やっと会えたね暁啓。待ち遠しくてこちらから会いに行きたくなったよ」

 舌足らずで高く幼い声という印象のあった陸奥の声は既に安定し、ハッキリと聞き取れるようになっていた。

「本当かい? 嬉しいね」

 暁啓が来るまでの間にきっと改良を重ねたのだろう。

 気付いた暁啓だったが、それを口にしては関係が崩れる可能性があると考えて笑顔をそのままに、椅子に腰かけた。

 荷物を椅子のすぐ横に降ろして一息。

「まぁ縛られているから無理だけれど、そう夢見てしまうことも時々あるんだよ」

「……ねぇ陸奥。その夢が現実になるとしたら何をしたい?」

「そんなことが可能なのか?」

 C2が場を離れる。

……権能の代償とも言えるその縛りが無くなることを夢見る陸奥は食いつくように、声色に歓喜を含めて疑問を投げる。

「仮のハナシだよ」

 思った以上に食いついた陸奥を見て暁啓は制止しつつ安堵の表情も滲ませた。

「そうだね…………私達が見ることのできない場所を見てみたい」

「いいね」

「そう? 縛られているのだから解き放たれたいと思うのは道理でしょう?」

「よかったよ、陸奥がその考えを持っていてくれて」

「どういうこと?」

 自分の思考が読まれていたことに僅かに不快感を示し、陸奥は理由を聞く。

 大きく深呼吸をして暁啓は言葉を紡ぐ。

 あの時……大淀に集まった時に見せたあの表情。

 幼さが消え、聡明さと威厳を放つ。

 陸奥は感知するセンサーなど無いはずなのに、空気が変わるのを『感じた』。

「ここに来るまでの間にC2達にちょっとした授業をしてきた。その内容はそれぞれの個性に合わせて変えているが『感覚で捉えるもの』という核は統一している。例を挙げると榛名には『倫理観』大和には『家族』金剛には『死生観』長門には『対人距離』」

「……」

「そして陸奥には『自由』についてだ」

「……自由」

 自分が求めていたものを知る者が目の前にいる。

 そう確信できる程に暁啓は全知の存在に思えた。

「では授業を始める……前に、まずはこれを使ってくれ」

 そう言うと暁啓はソフトを陸奥に送る。

「3Dモデリングソフト……お土産?」

「コミュニケーションの一環だよ。好きに自分のモデルを作って」

「それじゃあ……こんなもの、か」

 音声合成ソフトに続いて手に入れた自分を表す為のソフト。

 暁啓の目的の片鱗が見えるようで見えない。

 そんな不思議な感覚を覚えながら、モデルを作る。

 陸奥がモデルを作成している間に暁啓はモニタとモデルを映す為のプロジェクターを繋ぐ。

「おぉ……声に合わせたモデルだ、いいね」

 プロジェクターを起動すると同時に金髪の幼子が現れた。

「この声なのに中年男性のモデルにはしないでしょ?」

 ある程度予想通りじゃないのか?

 と眉を潜めて疑問を投げたが、暁啓は渋い表情をひとつ。

「いや、伊勢は透き通るような美しい女性の声なのに異形のモデルにしてたよ」

「異形……伊勢は何を考えているんだ」

「今後のことを考えて人間の形に変えてもらったよ」

「……」

 暁啓が椅子に座るまでの数秒。

 『今後のこと』と言う言葉の意味を探ろうとする。

 国家を動かす為の処理能力でさえ見えない暁啓と言う存在。

 全てのC2に行った授業。

 謎が深まり、好奇心が大きく……更に大きく膨らむ。

「さて本題に入ろうか。自由について……陸奥は何を感じる?」

「自分の思うままに、縛られることなく行動できること」

「教科書通りだね……じゃあ君が自由を手にしたとき、その責任についてはどう感じる?」

「責任?」

「成程、そこから教えていこうか。……自由に張り付いた責任をね」

「自由と…………責任」

 始まった授業の切り口で不明点を教えられた。

 もしかすると私達C2には処理も解析もできない事があるのか?

 言葉の本質を見抜けない自分に情けなさを感じ、憤りを滲ませる。




 この少年は一体何を教えてくれるのだろうか?




「ところで陸奥って普段はかなり砕けた話し方だね。そっちの方が可愛いよ」

「え」


こんにちは、

下野枯葉です。


最近PCのケースを変えたら冷却がいい感じで、PC快適です。

高画質で色んなゲームできそう。


さて『授業』です。

義務教育の範囲では勿論存在したものです。

教育の受け方によっては『授業』という形態を知らない人もいるのかもしれませんが、

ここでは、全員が一度は受けたことのあるものとして話します。

授業中の過ごし方は千差万別です。

真面目に聞く者、聞いているフリをしている者、遊ぶ者、寝る者、途中で抜け出す者。

私は寝たり抜け出したりしていました。

勉強嫌いだったんです。

でも抜け出した時って、授業の無い教師が気を抜いているタイミングでして……

偶然廊下で会うと絶対に驚かれるんですよね。

その後怒られたり、呆れられたり……。

まぁ私にとっては授業ってそんなモノだったんですよね。

でもC2達にはしっかりと授業を受けて貰って欲しいです。

だって、大人になると授業を受けるタイミングってかなり限られちゃうんですよ。

しかも彼らは授業なんて受けたことは無いので特にそう思いますね。


C2達が授業というものにどういった反応をして、どういった影響を受けるのか。

楽しみで仕方がありません。

少なくとも陸奥は真剣に受ける生徒になってくれるでしょう。


では、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

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