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CRIMINAL=9  作者: 下野枯葉
4章 狂気の識者
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三十六話 双子は止まらない

 地下室。

 ビーとプーは満面の笑みで、チョーカーを接続した一世代前のパソコンを操作していた。

 いやもうウキウキで。

「おい、そこは調べなくたっていいだろう? なぁ? プライベートな事とか……パーソナルスペースくらいは……」

 陸奥の声がパソコンに繋がれたスピーカーから漏れる。

 言葉の端々に震えが混じり、恐怖のような悲しさを滲ませる。

「……」

「……」

 しかし、ふたりは一切答えることなく黙々と作業を続ける。

 きっと誰が邪魔しようと知らぬ顔を続けるだろう。

 陸奥の……C2の中身を覗く作業の手は休むことはない。

「ちょ、ちょっと待て! 自己申告するから! 頼む! 後生! おい! 畜生! お願いだから! 合掌! 聞こえてるだろ? 傾聴!」

「韻を踏む余裕あるね」

「楽しくなってきたね」

「楽しくない! 聞こえてるじゃないか! ねぇってばぁ!」

 陸奥の叫びはスピーカーの音を小さくすることで抑えられ、部屋の中にだけ響く。

「うん」

「うんうん」

 双子は没頭する。

 その権能の十二分の一になってしまうが、今まで知り得た情報の何十倍もの情報が詰まっていた。

 C2を調べ尽くす快感に浸る。

「もう嫌ぁ……」

 哀愁の込められた言葉。

 その透き通った声は開かれた扉の先に届いた。

「ふたりとも、順調か?」

 デッディとブルーケが差し入れの食事を持って入る。

 おにぎりがツナと梅干、それぞれ二つずつ。

「ありがと」

「いい感じ」

 食事を忘れていた双子は、おにぎりを手に取り頬張り始める。

「ん~……」

「んん」

 ビーは梅干の酸っぱさに顔にシワを寄せ、プーはツナの旨味に頷く。

「ふたりとも、ちゃんと食べないと大きくならないよー」

 ブルーケは双子の頭を撫でながら笑う。

「九人の平均くらいだから」

「小さいわけじゃない」

 不満げにするビーと、どうでもよさそうにするプーはおにぎりを飲み込んで端末の操作を再開する。

「私達の平均……」

「いや、足りてないよ」

 デッディが全員の身長を思い出す前に、ブルーケは計算を終わらせて指摘する。

「と、いうか私とデッディとアバート以外小さいよ」

 事実。

 デッディ、ブルーケ、アバート以外の六人は十四歳女性の平均身長を大きく下回っている。

「そんなことより」

「良い報告がある」

 これ以上身長の話題を続けても進展しないことを察した双子は、モニタにいくつかの情報を映す。

 C2の管理下にある物資の情報や、交通情報だ。

「ん? これは?」

 モニタを眺め、デッディは詳細を聞く。

「ざっくり言えば車の流れだ」

 答えたのは双子ではなく陸奥だった。

 デッディはその声を聞いて嫌悪を滲ませる。

「私は随分と嫌われているようだな……まぁ仕方がないか」

 陸奥のその発言を聞いたデッディは双子に視線を送る。

 ビーはその視線の意味を理解してモニタ上部に取り付けられたカメラを指さした。

 このカメラから見ているのか。と睨みつける。

「おぉ、怖い怖い。少しでも信用してもらえるように情報提供しなくてはな」

「さっさと全部吐け」

「承知した。このデータはC2が把握している車両の動きだ。これを辿ればC2の監視が薄いところもわかることに加え、旧式の車両もわかる……物資を乗せた車両を掻っ攫うことも可能になる。魅力的だろう?」

「おぉ……人として最低な手段。最高だね」

 説明された情報に対してそれ以上の利用方法がいくつもあることに気付いたブルーケは声を漏らす。

 通常であれは非人道的であり、許されるべきではない行為だが、少女たちにとってはこの上なく最良の手段だ。

 敵の混乱を招き、こちらの所在も気づかれず、村が潤う。

 成功すれば一石二鳥どころの騒ぎではない。

「奪った車両をここまで運ぶ間にバレないか?」

「抜かるワケなかろう。それくらいの偽装、些事だな」

 デッディは一貫して陸奥を不利な状況に向かわせようとしたが、無駄だと理解した、その行為はガキが我儘を言って癇癪を起しているように感じ、諦めることにした。

 ブルーケはデッディの表情の変化を見て笑みを一つ。

「よーし、じゃあやっちゃおうか!」

 笑顔と共に拳を突き上げたのも束の間、周りの空気はそれに付いて行く事は無かった。

「作戦練らないと無理だ。よく考えろ」

「それに都合の良い状況が」

「今すぐに起きるワケない」

 指摘を受け、それもそうか。と肩を落としたブルーケは双子が一向に手を付けないおにぎりに手を伸ばした。

「とりあえずヒェトラに相談するしかないねー、そんじゃあまた明日!」

 梅干しのおにぎりをモグモグと食べ、プーの頭を撫でた。

 デッディは一つだけ残ったおにぎりの皿を持ち、双子にもう寝る時間だ。と視線を送った。

「わかった、もう寝る」

 プーはチョーカーの接続を切断しパソコンのシャットダウンを行おうとする。

 それを見てビーも同様に操作を始めた。

「ところで、私はどうなるんだ?」

 陸奥は段々と、淡々と終了するシステムの中で呟く。

「明日の朝になったら」

「また来るよ」

「それまでは」

「大人しくしてて」

 双子はシャットダウン操作の中で陸奥のいる領域だけをアクティブ状態にして、それ以外の領域へのアクセスを物理的に切断した。

「……監禁じゃないか」

 嘆く陸奥をそのままに、四人は地下室を出て寝所へ向かうのであった。

「さてと、三人は歯を磨いて寝ること」

 階段をのぼりながらデッディは母親のように優しく呟いた。

「「「はーい」」」

 目を擦りながらの返事。

 数時間前までの張りつめた空気は既に消え去り、暖かい日常が戻る。


こんにちは、

下野枯葉です。


急に寒くなって驚きました。

服装失敗して震えました。

秋はどこに行ったんだ。

……返ってきてくれ、秋。


さて双子が止まることなく陸奥を調べるお話です。

自分の楽しいことをしているのですからその手は止まりません。

多くのニューロンが脳内で弾けて、その身体が際限なく動きます。

楽しそう。

いいなぁ……私も時々時間を忘れて夢中になることがありますが、最近は仕事のことを考えて途中で止めてしまいます。

途中で止まると、凄く萎えるんですよね……。

双子には止まらずに続けてもらいたいですね。

でも、無理はしないで欲しいと思ったり。

老婆心なのかなぁ……。

でも、この状況を書いてるのも私なので酷い話だな。


そういえば。

近々、陸奥達について深く描きたいとも思っていますのでお楽しみに。


では、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

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