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CRIMINAL=9  作者: 下野枯葉
4章 狂気の識者
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三十二話 怪物の心


 ヒェトラ達が陸奥を連れて帰って来た日の夜。

 デッディは家の屋根に上り空を見ていた。

「……あーあ…………」

 ベランダから梯子をかけ、小さなレジャーシートを敷いて膝を抱えて座る。

「あー……」

 かれこれ十分以上は思考を巡らせ、唸り声だけを漏らし続けている。

 殺すべき相手が近くにいる……それだけで嫌悪が沸きあがる。

 だがヒェトラがそれを許した……許してしまったからデッディは何もできずにいる。

 そう何もできない。

 無力……と言うわけではないが、ヒェトラが優秀過ぎるのだ。

 それ故に唸ることしか出来ずにいる現状にまた不満を抱え、さらに大きな唸り声をあげる。

 

 星空は等しく人々の暮らしを照らしていた。


 コツコツ……と梯子を上る音が聞こえ視線を送る。

「うーうーあーあー、何してんのー?」

 現れたのはブルーケだった。

 屋根が踏み抜けてしまわないか、一歩ずつ確かめながらデッディに近付く。

 一度風が吹き抜け、両脚をしっかり開いて姿勢を保ちつつおどけた。

 デッディの長い髪がたなびいて視界を塞ぐ。

「どーせ、陸奥のことでしょ?」

 隣に腰を下ろしたブルーケは揶揄う様に笑う。

「どーせとはなんだ。考えないとならないことだろう? まさかこの村に入って来るとは思ってもいなかった……」

「ホントね、ビックリ。まぁ何とかなるでしょ」

 いつも通り、あっけらかんとした態度のままの言葉。

 同じ星空を眺めているのに……何か違うものを見ているようだった。

 ブルーケ、何を見てるの?

 デッディはその言葉を飲み込んだ。

 聞いちゃいけないことのような気がした。

 だから、何とかなるという言葉に引っ掛かる。

「でもさ――」

「――大丈夫、あのヒェトラだよ?」

 ブルーケの瞳には疑いは無かった。

 『あの』と称した相手をふたりは思い出す。

 恐怖そのもの。と言う人間もいた。

 瞳を合わせるだけで頽れた人間もいた。

 怪物。

 その言葉が似合う人間だ。

 この復讐だって、ヒェトラの意思が始まりだ。

 そしてその意思に歯向かおうと、背こうと、否定しようとすることは誰にもできなかったのだから。

「それは……そうだけど」

「何とかなるよ……ならないといけないんだよ」

 再び遠くを眺めるブルーケ。

 ヒェトラの描く未来の中に、自分の夢を乗せる。

 自分と皆の夢を乗せる。

「あぁ、絶対に成し遂げなければならないんだ」


 暁啓の為の復讐は総意である。

 あの日、あの悲劇を前にしてヒェトラは冷静に復讐の計画を紡いだ。

 その瞳、その声、その意思を肌で感じた瞬間……あの瞬間から全て壊すことは決められた。


「じゃあ聞いてみるしかないね、陸奥と話をしよう」

 ひょいと立ち上がったブルーケはデッディに手を差し伸べる。

「陸奥と、ね? ビーとプーは?」

 その手を取ることなく立ち上がったデッディ。

 さっきまでブルーケが見ていた星空が見えた気がした。

 気がした。

「……地下に籠ってるよ」

 余った手を不機嫌そうに引っ込めて、いつも通りの……正常な笑顔を浮かべる。

「じゃあ行くかぁ」

 レジャーシートを手早く畳みながらデッディはブルーケを誘う。

 ビーとプーは陸奥の叫び声を聞きながら、拷問のような情報精査を行っているのであろう。

 と想像し、クスっと笑った。


こんにちは、

下野枯葉です。


最近、人生の転機と呼べる状況に会いました。

再会はいつでしょうね。


さて、怪物の心です。

身の回りにいた偉大な人間や、聡明な人間。

その人の心を知りたいと思うことが多々あります。

身の回りにいた愚かな人間や、絶望に身を震わせる人間。

そんな人の心も同様に。

特殊な状況に陥っている人の心は平静を保てているのか?

私は、そういう状況に出会った時は狼狽してしまう人間です。

通常通りに動ける人間は一体何を考え、感じ、動くことが出来るのでしょうか?


……そんな疑問を書きました。

嗚呼。

ヒェトラ。

君は一体何を見ているんだい?


では、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

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