三話 神馬村の孤独
二〇八六年
「申し訳ないです……村長。私の我儘で」
神馬村で一人の男が頭を下げていた。
村のほぼ中央に位置する公民館で行われる集会は、他の村との協力を中止する為のものだった。
数十人が集まる。
腕を組み悩む者。
怒りを露にする者。
不安から目を伏せる者。
「なぁに……気にするな」
五十半ばの村長は頭をかきながら溜め息をついた。
威厳も無ければカリスマ性も無いが、信頼の厚い長である。
「時代錯誤の風習なんぞ淘汰されて然るべきだ。ましてや命を軽んじるなら見限りもするさ」
村長は強い言葉を投げ、煙草に手を伸ばした。
が、一呼吸置いてから煙草を仕舞った。
二人の赤子には良くないと渋い表情を浮かべて周りはそれを見て頷く。
「どうやって生きていくのかだなぁ」
総括。
長として道を考えているが、このC2システムで縛られた世界で他の村の協力を打ち止めてしまった以上、策が無い。と言うのが事実だ。
「村長、私も全力で協力しますが……もう手段を選んでいられませんよ」
男は二人の赤子に憂いを持った視線を投げ、拳を握り締めた。
二〇八六年に生まれた女の子。
丙午の女は縁起が悪い。
そんな迷信に踊らされた人間は減少していたが、一定数は存在し、子作りを敬遠したり、堕胎をしたりする者もいた。
その中には生まれてきた子供を『存在しなかった』とする者もいた。
神馬村と協力関係にあった村々はそれらを行っていた。
許されるはずもない行いを見て神馬村は切り捨てると決めたのだ。
救えたのはこの二人の赤子。
そして増えるであろうその全てを救う。
神馬村は子らを問題と思いつつも、幸せが訪れたと歓喜していた。
「奪うことすら辞さない……我々は次の一手を打つことにした。よいな?」
数十秒蟀谷を撫でて考えを巡らせた村長は、勢いよく立ち上がり民を見渡し言葉を放った。
「しかし村長、策は?」
半数以上は応と放ったが、一部の民は不安を漏らした。
それは真っ当な事だった。
C2システムを対し乍らの孤立であるのだから。
「それなら俺に考えがあります」
男は覚悟と狂気の笑みを浮かべた。
「そう言うと思った……頼んだ」
「……はい」
神馬村は転じ、孤独に戦うと決めた。
死ぬはずの赤子の未来を拓く為。
こんにちは、
下野枯葉です。
凄く久しぶりに書いてますね。
どうしよう。
二〇一九年か……すっかり前ですね。
こんな時勢になるとも思っていない頃ですね。
最近まで他の作品を書いていたのですが、のっぴきならない事情で続きを投稿していません。
まぁ、来月くらいには再開しますけど。
それまでの間でこの作品を書いてしまおうという考えです。
とりあえずの結末は決まっているのでサクサクと書けそうです。
嘘です、ミリタリー関係を調べるのが大変です。
昔の知識で書いていたんですが、偏りがあって調べ直しが多いです。
頑張って調べるぞう。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。