二十三話 同士討ち
爆発音。
それは、電子制御により敵の情報を的確に認識させる照準器や身体能力強化を行う外骨格型ボディアーマー等の機能に誤作動を起こすEMP発生装置の作動音。
そしてあらゆる場所の窓ガラスが割れる音が続いた。
――敵襲――
そう気付いたヒェトラとプーは部屋の中に遮蔽物が無いことを認め、ドアの横に張り付き挟撃の態勢を整える。
敵が軍人である以上、この構えで掃討することは不可能。
そして負傷は免れないだろう。と、思考を巡らせ、チョーカーに手を伸ばす。
「動くなよ、強き童」
短く呟いた陸奥はドアの前に立ち、近付く足音を迎える。
勢いよくドアが蹴破られ、吹き飛んだドアは映像の陸奥を貫通する。
入り口から二つの銃口が覗き、直後に三人が侵入する。
交戦開始かと思われたが、兵士達は目の前に陸奥がいるのにも関わらず気付く様子が無い。
「……クリア」
「クリア」
「クリア」
構えを降ろし、ゆっくりとコンピュータに近付く。
少女達が動くよりも大きく床が軋む。
「こちらウィーゼル……目標地点に到着。敵影ナシ」
胸元の通信機器を操作してから兵士は報告を一つ。
目の前の敵にこれまでになく鼓動が囃し立てる中、ヒェトラは状況を飲み込めずにいた。
陸奥は人差し指を口元に構え、ヒェトラとプーに向かって静かにするように促す。
そしてニヤニヤと笑いながら兵士の周りを歩く。
「これが……陸奥」
兵士の一人がコンピュータに触れ、C2の一端を感じる。
「おい、勝手な行動はするな」
「あぁ、すまない」
おっと。と手を離し、視線を戻す。
「本隊から情報が更新されるはずだ。端末からの指示を待て」
「了解」
その小隊の長と思わしき兵士は胸元から携帯端末を取り出し、操作を開始した。
しばらくすると兵士達はキョロキョロと首を振り始める。
「ん? なんだ?」
「おい」
「どうなってんだ?」
慌てふためき、通常ではない。
それぞれが銃を構え、警戒態勢に入る。
「状況報告!」
「敵確認!」
「こっちもだ」
「撃てぇ!」
部屋の内にいる三人の兵と、入り口で待つ二人の兵はそれぞれを敵と認め発砲。
ヒェトラとプーは叫び始めた兵士達から逃げるように部屋の隅に蹲り、跳弾から可能な限り逃げた。
僅か数秒の間で事が終わり、残ったのは部屋の内の兵士が一人。
「あぁ……クソっ! こちらウィーゼル! 全員やられた!」
『――』
通信機器からの返答は無い。
苛立ちながら、兵士は仲間の屍に近付き、その死を認める。
「おい! 聞こえてるか! 敵は何処にいるんだ?」
部屋の外で倒れる兵士の顔を覗き込み、通信機器に怒声を投げる。
「いたぞ! 撃て!」
廊下の奥。台所の方向から声が響き、発砲音。
残響。
静寂。
兵士は兵士を殺し、殺し合った。
危機が去り、大きく深呼吸。
「陸奥……どういうことだ?」
部屋の中央で瞳を閉じている陸奥は何かを考えているようだった。
「偽装さ。……それよりもう一人の童の心配は良いのか?」
と同時に発砲音。
ヒェトラとプーは部屋を飛び出し、発砲音の発生源……台所へ向かう。
台所では腕から血を流す老父と、兵士の屍が二つ……そして血に濡れるジンシーが笑っていた。
こんにちは、
下野枯葉です。
人を殺める恐怖にどう打ち勝てばいいのでしょう。
はて……恐怖ではなく悦でしたか? 快感でしたか?
それとも衝動と言えば正しいのかも?
どれでも同じですね。
さて、同士討ちです。
まぁ、陸奥が登場した以上この展開は決めていました。
と言うか、これがとても重要です。
陸奥の偽装、欺瞞。この物語の時代においてとても有効的な攻撃手段です。
そして少女達の武装もそうです。
この後の展開は笑顔で書きましょう。
笑顔で迎えましょう。
笑顔で送りましょう。
笑顔で……殺しましょう。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




