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CRIMINAL=9  作者: 下野枯葉
3章 縊る道化
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二十二話 人と成る為

「――まず、ここ陸奥の住人を全員殺してくれ」

「……は?」

 陸奥は瞳を一切揺らさず、ヒェトラに頼みを告げた。

 鏖殺。

 それも自分自身を守る為の人間のだ。

「君達はこの家を含めた百十七の家を巡り、四百三の人間の鏖殺をしてもらう」

「どうしてそんなことをしなければならない? 全員殺すことで何の得になる?」

 陸奥にとっての損得勘定が合わない。

 到底理解が追いつかない話にヒェトラは疑問を投げることしかできなかった。

「死はここの住人の願いだ」

「――」

 ヒェトラは二の句が継げなかった。



 老父の家。

 台所には老父とジンシーが並んでいた。

 冷蔵庫から肉と野菜を取り出した老父は足元の棚に手を伸ばす。

「ねー、おじさん。何を作るの?」

「今日は人数も多いからカレーを作ろうかな」

 ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、豚肉。

 材料が揃った時点でジンシーは笑顔のまま期待を膨らませて尋ねる。

 それに老父はカレールーを取り出しながら笑顔で答えた。

「カレー! 私ね、カレー大好き!」

 興奮気味に飛び跳ねる。

 それを老父は懐かしそうに見詰め、目頭を熱くした。

 その瞳には懐かしさがあった。

「おや、そうかい私も好物なんだよ」

「お揃いだね。私は具材が大きめが好きなんだー」

「おやおや、そんなところまで一緒とは。楽しい調理になりそうだね」

「ね! 私も頑張ってお手伝いするね!」

「頼むよ。じゃあまずは野菜から切ってもらおうかな」

「任せて!」

「指を切らないようにね」

 老父は慣れた手付きで野菜の皮を剥き、ボウルに入れる。

 ジンシーは皮の剥き終わった野菜を大きめに切る。

 綺麗に等分されなかった野菜たちは大きいものと小さいものが混ざっていた。

「ねぇおじさん」

 トントンと包丁の音が数分続き、野菜の半数が切り終えられていた。

 ジンシーはふと陸奥のことを思い出した。

「なんだい?」

「どうして私達を陸奥に会わせたの?」

「んー……それは、ね……君達に頼みたいことがあったからだよ」

 言い澱むように唸り、下唇を噛んでから老父は言葉を続ける。

「頼みたいこと? 私にできること?」

「勿論だよ。君達にしかできないことだよ」

「なんだろう?」

「それはね……それは、ね」

「んー?」

 なんでも言って。とジンシーは笑顔を……満面の笑みを咲かせる。

「私達、陸奥の住人を殺して欲しい」

「え……」

 スッと花は萎む。

 影が差し、眠るように。

「……それが私達の望みだからだよ」

「なんで? なんで死にたいなんて思うの?」

 狼狽え、困惑し、感情がごちゃごちゃに混ざる。

 ジンシーにとって『死』とは一度退けたものであり、抗ったものでもある。

 それを望むことに考えが追いつかない。

「私達が生きている限り陸奥はその機能を発揮し、私達のように人間として扱われていない人間が苦しみ続ける。それは君達がよくわかっているだろう?」

「うん……。じゃあどうして死ぬことを頼むの?」

「自殺を許されていないんだ。自殺をすると罪が課せられてしまう……死んでしまった自分ではなく、街にいる家族がね」

「そんな……」

 人間になる為の条件。

 陸奥の人間は大切な人を文字通りの人質にとられているのだ。

「だから君達に殺してもらいたい」

 屈託のない笑顔が老父に咲いた。




 ――その刹那。

 爆発音が響いた。


こんにちは、

下野枯葉です。


花粉症の私にとって辛い時期です。

バイクに乗りながら鼻水がヤバいことになります。

来週の雨に期待します。


さて、

人と成る為。

人の定義は様々ですが、この陸奥にとっての人とは人権の有無です。

人権は全ての人に与えられることはありません。

それは、管理し、平和を守る為に捨てられる者がいるということです。

捨てられたヒトは幸せを感じることができるのでしょうか?

忘れられたヒトは生きる意味を見出すことができるのでしょうか?

認められなかったヒトは死んでいるのでしょうか?

乱暴に描くことしかできません。

彼らには唯一の望みを叶える為……祈りを捧げ、悪魔に赦しを請い――

――その命を狩り取ってもらうのでしょう。


夜は……まだ続きます。


では、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。


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