二話 のどかな裏世界
春の暖かな日差しが農道を暖かく照らす。
C2システムでは誰も住まなくなった山奥の村。
――神馬村。
「モ―トレ! 早く! 早く!」
頬を大きく上げ、笑う少女は二つ結びの髪を揺らし、腕一杯に筍を抱えていた。
少女の名はジンシー。
先を走り、クルクルとその場で回ってみせる。
「ジンシー、落とすなよ。貴重な食糧だ」
急かされつつも、冷静に答えたのはモートレ。
短い茶髪を一つに纏める少女の胸はとても大きい。
もう一度。
おっぱい大きい。
しかしジンシーとあまり背丈は変わらない。
「分かってるよぉ! でもアバートたちより先に帰るのー!」
「ふふっ……いつまでも子供だな」
モートレとジンシーはそれぞれのペースで農道を歩く。
つい先日までいた第九工業団地とは似ても似つかない場所だ。
心地良い春の風が二人の背中を押した。
場所は変わり、田畑の中に存在する大きな一軒家。
レンガの外壁で囲まれた三五〇坪の家。
和モダンな印象を与え、青空のよく似合う家。
ここは少女達の家だ。
「ビー、プー……結果は?」
ヒェトラはリビングのソファーに座りながら質問をした。
「第九の榛名は」
「沈黙している」
ビーとプーは互いの背中を背もたれにし、膝を抱え床に座っている。
目を瞑り、リズム良く前後に揺れる様は仲の良さを物語っている。
「でも、他が生きているから」
「十日もあれば元通り」
二人は同時に人差し指を上げ、そう告げた。
「十日だと?」
デッディがキッチンで緑茶を淹れながら驚きを露わにした。
「ちょっと早すぎないかなー?」
ブルーケは髪を指でクルクルと回しながら口を尖らせる。
「まぁ、そんなものだろう」
デッディから緑茶を受け取ったヒェトラは溜め息を漏らした後に呟く。
どうしたものか。
と首を二度傾げた。
「次は」
「第四がいいかも」
「理由は?」
突然飛んできた提案にヒェトラは少々考察した後に問いを投げる。
「第三が」
「編成を組んだ」
「対抗策が」
「アバートの」
「「協力」」
その言葉を聞き、その場にいた全員が溜め息をついた。
ブルーケに至っては両手で頭を抱えていた。
「……そうか。では第四だな」
ヒェトラは諦めたように判断を下した。
その時、玄関の引き戸が開く音がした。
「ただいまー」
アバートの元気な声が響く。
「噂をすれば何とやら……か」
デッディはほんの少し笑いながらアバートとシーナのコップに緑茶を淹れ始める。
「また沢山もらってきましたよー!」
採れたての野菜と、丁寧に包まれた肉を抱えたアバートとシーナがリビングに入ってくる。
この食材たちは周辺に住む住人達からである。
街に出た際に彼女達は日用品を盗み、この辺境の村に配っているのだ。
そのお礼がこの食材。
互いに支えあっているのだ。
「って、なんだか静かですね?」
「そりゃ……ね?」
ブルーケはアバートの持つ食材を受け取りながら、舐めるような視線を飛ばした。
「ふえ? ふえ? ふえ?」
全く気付いていないアバートはハーフアップの髪を左右に揺らしながら首を傾げ続ける。
「アバート、暴れた。抑えないと」
シーナはデッディに食材を預け、いつもの無表情でアバートにそう告げた。
「うぅ……本当に申し訳ないと思ってますよぉ」
指摘を受け、涙目でしょんぼりとしたアバートは涙を拭う。
「頑張って」
シーナはほんの少し笑い、背伸びをしてアバートの頭を撫でた。
「あぁ、そろそろ治して欲しいな」
ヒェトラは咎めるように、しかし強い口調にならないようにアバートにそう言った。
「……努力します」
手をモジモジさせながらアバートはそう宣言する。
「さて、モートレ達が帰ってくる前に夕餉の支度をするか」
ヒェトラが厳しい表情から一転、微笑みを見せそう告げる。
その言葉を聞き、全員が頬を緩ませた。
そんな少女達の楽しそうな空間。
その真下。
地下室には火薬と鉄の匂いが充満していた。
こんにちは、
下野枯葉です。
リアルが順調でまさかの二日連続投稿です。
えぇ、今後は絶対にありえないでしょう。
でも、小さな可能性を信じます。
今回は、普段の少女達を描き、世界観も膨らましてみました。
この作品の元ネタはリアル母の一言です。
うん、
母さん、面白いネタをありがとう。
とりあえず、この作品に関しては、ゴールが確実に見えていて……。
今目標としている最終話を書いたら、それで終わりにしようと思っています。
伏線ばっかり張って、続編に繋げようなんてことは意図的にはしません。
たぶんね。
そんな感じで。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。