十八話 ショッピング
栃木県宇都宮市
路面電車に揺られながら三人はショッピングモールへ向かう。
ジャンパースカートの制服に身を包み、学生として紛れ込む。
休日のショッピングモール。
多くの人が行き交い、集うように楽しむ。
ヒェトラは人の多さに眉を顰め、明らかに機嫌が悪くなる。
一方のジンシーは久しぶりの外にワクワクとした表情を隠せずにいる。
今にも走り出してしまいそう。
気を抜けば立ち上がるジンシーをヒェトラは襟首を掴み座らせる。
プーは端末を操作し、防犯システムに干渉し偽装を行っていた。
ヒェトラの不満は募るばかりだ。
◇
昨日
「別に服なんてどれでもいいだろう? それよりも近接戦闘用の武装を装備できるかどうかを優先するべきだ」
と、頬杖をつきながら言い放ったヒェトラの言葉はそう否定された。
総スカン。
リビングでゆったりと過ごし、作戦について全員で話していたヒェトラは、ふとした呟きに対してここまで場の雰囲気が変わるとは思いもしなかった。
「それなら適当に見繕ってこい」
今までにない言葉の嵐に賛同は得られないことを理解したヒェトラは諦めを一つ。
そして身だしなみに一番頓着しているジンシーに命令のように言葉を投げた。
いいよー。と笑顔を返したジンシーを遮り、モートレが一歩前に出た。
「せっかくだからヒェトラが好きな服でも買ってくればいいじゃないか」
「はぁ?」
口を大きく開き、馬鹿を言うなと圧を飛ばした。
ソファに座るアバートがビクッと驚き、空気の変化に反応する。
「洒落っ気の一つも身に着けてみるのもいいことだぞ」
「面倒な……」
「ついでに次の作戦の為に人間観察でもしてくればいい」
「それも……そうか」
合理的な理由を付け加えられ、ヒェトラも渋々納得を返した。
「あ、お土産よろしく」
ブルーケはヒェトラが重い腰を上げたことを確認してから脊髄反射でそう言った。
「図々しいにも程がある」
◇
「ヒェトラ、そろそろ」
人の気にあてられないように目を閉じていたヒェトラはプーに起こされ、周囲の状況を確認する。
スーパーマーケット、映画館、ジム等……あらゆる施設が複合しているショッピングモールに到着した。
路面電車の支払いはプーの用意した携帯端末で支払い、外へ。
快晴。
雲一つない青空の下で人々は笑顔を咲かせながら休日を楽しむ。
ジンシーはそれに完全に溶け込む。
「おーい、ふたりとも行くよー」
いつの間にか先を歩くジンシーは横断歩道の信号が青になったことを見てから振り返る。
「あぁ……早く済ませてしまおう」
三人は人混みの中に潜るように入り込み、自動ドアを抜けてモールの中へ。
数店ほど巡ったところで気に入った店を見つけ、ショッピングが始まった。
「やっぱりねぇ…… ヒェトラはチュニック丈が似合うと思うんだよねー」
ジンシーはブラウスのような見た目で、ウエスト付近から広がるチュニックをヒェトラの体に当てがって数度頷く。
「チュニック? サーコート?」
「え? 何の話?」
「では軍服用の上着か?」
「関係ないことの話?」
「チュニックと言ったから」
「んー? まぁいいや。それよりもプーもこっちに来て。意外とねぇ……」
このふたりにお洒落の説明は無意味と直感で判断し、ジンシーはコーディネートを続ける。
ゆとりのあるボーダー柄のシャツをウエストで締めるようにしたロングスカートに合わせ、ベレー帽をかぶせる。
「うん、いいね!」
プーはクルクルと回りつつ、自分の格好を姿見で確認する。
そして満足そうに同じ服をもう一着ずつ買うことを決めた。
それは勿論ビーの為だ。
「そうだな、スカートの中にホルスターを隠せる」
「オシャレの話してよー……ヒェトラはスカート禁止だね」
「作戦の為にも武装を――」
「――ちゃんと潜入出来たら武装はいらないもんねー」
「……わかった。可愛くしてくれ」
「りょーかい」
ジンシーは満面の笑みを一つ。
様々な店を回り、派手にはなり過ぎないように、しかし可愛さを持った服装を選んでいく。
順調に買い物が終わったところで三人は路面電車に乗る為外へ。
街頭テレビがお昼のニュースを伝える。
その内容を一瞥して、興味を持つことなく立ち去る。
街頭テレビには一週間前に襲撃されたAI長門が映されていた。
こんにちは、
下野枯葉です。
ショッピングが始まりました。
……。
買い物とか行かない私にとって書くのが難しいです。
行ったとしても安定のユニ●ロですからね。
黙々と無難な服を一式買って終わり。
数十分で終わります。
ですが女の子のそれはそうは行きません。
楽しい会話と共に続くショッピング。
美しいな。
少女達も本来なら中学校に通い、青春を謳歌していたのでしょうか?
あ、このお話はまだするべきではないですね。
少女達の出生と成長については語ることが多くありますから。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




