十五話 思考
四月十日、午前三時。
山口市のとあるスーパーマーケットの搬入口近く。
「さてと……今回はデッディ達だな」
ヒェトラは目的地に到着したことを確認し、視線を送る。
十トントラックの中でデッディ、ブルーケ、プーは外へ出る準備を完了させていた。
他のメンバーはヒェトラとモートレを除いて全員夢の中だ。
長門の陥落によりシステムが一時的に混乱状態にある今、少女達は盗みに出る。
「了解。ブルーケ、プー行くぞ」
「うん」
チョーカーの状態を念入りに確認したデッディは行動を共にするふたりに声をかける。
プーは小さく頷き、既に監視カメラへのアクセスを開始し偽装を始めていた。
「あっ、その前に」
手を挙げたブルーケは運転席と通信を繋ぎ始める。
「なんだ?」
相手は運転席のふたりの男性。
「碓氷さーん。何か欲しいのあるー?」
『えっ?! 俺かい? そしたら運転中に飲めるコーヒー……それと母ちゃんが腰が痛ぇ、って言ってるから湿布でもあると嬉しいかな』
突然の通信に驚いたものの、少女からの気遣いに笑みを溢しつつ要求を二つ。
「おっけー……高久さんは?」
交代で寝ている高久という老人に起きているかを確認しつつ、同じく問いを投げた。
『ん? ワシもコーヒーがあればなぁ』
眠たそうな声で高久も嬉しさを滲ませる。
「任されました! よーし行くぞぉ!」
拳を突き上げ、笑顔を咲かせたブルーケを先頭に荷台の扉を開ける。
音を極力抑えながら三人の少女は侵入を開始する。
「ヒェトラ」
三人が外に出たことを確認したモートレはヒェトラに相談を一つ。
「どうした」
「シーナが戦った兵士について話がある」
神妙な面持ちで、シーナの語った事実を叩き付ける為にモートレは一番頼りになるリーダーを見詰める。
「それについてはシーナから既にデータを貰ってある。まぁ、そうだな……楽に終わらせられるとは思っていないからな」
気持ちよさそうに眠るシーナを一瞥してから瞳を閉じる。
「次はどうするつもりだ?」
顎に指を当て、思考を回す。
黒い恣意的な思考がヒェトラの頭の中で閃き、グッと口角を上げた。
「第三の予定だったが――」
同時刻。
『ファントム、それで敵の正体はわかったのか?』
装甲車に揺られながらファントムは通話をしていた。
「えぇ。あれは博士の遺産で間違いないですよ」
止血を終えた額の傷を数度触りながら、溜め息を一つ。
『そうか……本拠地の目星はつかないのか?』
「わかるワケ無いでしょう? C2のおかげで都市部以外は完全に切り捨てられ、人ではない何者かがいる。という認識になってしまっているんですから」
『そう……だったな』
「兎にも角にも、あれらの相手をするのは俺にしかできませんね。余程の亡霊を遺したようですから」
『やはり狙いはC2だろうな……次は何処を狙ってくるんだ?』
グルグルと指を回したファントムは相手の思考を想像し、嫌悪に満ちた表情を一つ。
「第三の予定でしょうけど――」
「「――第五に変更する」」
こんにちは、
下野枯葉です。
最強寒波に襲われ、外に出たくない毎日が続いています。
しかし仕事は忙しく、覚悟の仕事爆増が宣言され、案の定間に合わなかったりしています。
弊社、陳謝。
さて、思考です。
突如現れたファントムとヒェトラの思考。
そして博士の謎。
まぁ、十五話じゃあまだまだ謎は多くてもいいでしょう。
ゆっくり紐解いていきましょうね。
それにしてもデッディとブルーケのコンビはとても書きやすいですね。
とても気に入ってます。
そして、次の攻撃先のC2ではジンシーに頑張ってもらおうと思っています。
注目してください。
これから書くジンシーの物語は九人の少女達の物語の中で一番笑えるはずです。
笑えるんです。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




