表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CRIMINAL=9  作者: 下野枯葉
2章 春雪と悪魔
13/88

十三話 亡霊達

 長門敷地内。

「夢……また、あの夢だった」

 ゆっくりと立ち上がり、状況確認。

 見渡す。

 先程の狙撃位置に視線を合わせた。

 黒煙の中で閃光。

 本能で頭を動かし銃弾を避けたシーナは大きく空気を吸い込み、呼吸を止める。

「全部……思い出したよ。お母さん」

 肉眼で標的を捉え、弾け飛んだスコープを取り外したシーナは走り出す。

 それに合わせるように強烈な風が吹き荒れる。

 小さな体は風に乗り、縦横無尽に跳ぶ。

 橋から長門へ繋がる道の直上を真っ白なローブを着たシーナが通り過ぎた。


 それをスコープ越しに見ていたのは黒煙の中の一人の男だった。

「……亡霊なら飛べる、か」

 TAC‐50――全長一五〇〇ミリ程の狙撃銃のマガジンを交換し、溜め息を一つ。

 一・七メートルには満たない小柄な体を上手く装甲車の隙間に隠し次の行動を考える。

 炎の熱と黒煙。

 吹雪。

 兵士の叫声。

 集中が途切れてしまう環境の中、狙う標的はとても小さい。

「俺も亡霊に成り上がる、か」

 ゆっくりと左手を首元へ。

 首に取り付けられたチョーカーを指でなぞり、項のスイッチへ。

「チョーカー起動」

 呟く声が彼の脳に響き、記憶が流れ込む。

 音を正確に拾い、通常の生活では聞くことのない音を聞き分ける。

 爆発音。

 叫声。

 警報。


 金網フェンスの音――。


「そこか」

 音から敵の位置を把握した男は瞬時に身を出し、構える。

 装甲車にバイポットを乗せ焦点を合わせる。

「――」

 ……スコープの先では少女が既に構えて狙いを定めていた。


 片膝をつき、金網に銃口を乗せたシーナは肺に残る空気を全て吐き出す。

(……)

 全ての感情を消し去り、シーナは引き金を引く。

 瞬間――ストックが後退し、眩むような衝撃が全身を襲う。

 バレル内部を銃弾が走り、発射される。

 それから瞬く間を開けて男も躊躇うことなく発砲。

 空中で銃弾同士が擦れ合い、弾道を曲げた。

 TAC‐50の弾丸はシーナ左頭上を通り抜け遥か彼方へ。

 XM500の弾丸は男が銃を乗せる装甲車に着弾し、激しい金属音と共に車体を大きく揺らす。

 男は衝撃を堪え、次弾を装填する為ボルトに手を伸ばす。

と同時に冷たい汗が背を撫でた。


――死。


恐怖が全身を覆い、素直に従う他なく身を隠した。

直後に連続した衝撃。

XM500が連射され、装甲車もアスファルトも銃も何もかもが轟音と共に弾け飛ぶ。

頭を守るように転がり、額からの流血を認めた男は息を切らし、敵を眺める。



 赤い瞳が吹雪の中、朧気に光る。

 小さな体に似合わない長い狙撃銃の銃口からは煙が立ち上り、風に揺れる。




 ――雪中の悪魔がそこにいた。




 悪魔は狙撃銃を背負い、首元に手を伸ばす。

 数秒後、走り出し吹雪の中に消えていった。


九死に一生。

そう頭の中で呟いた男はチョーカーの機能を停止し、空を仰いだ。

数分。

呼吸を整え、雪が止み、空が晴れるのを眺める。

 胸元の通信機から雑音が聞こえた後、声が響く。

『ファントム、何があった?』

「あぁ……本当のファントムに会ったよ。俺なんかよりよっぽど亡霊さ」

『そうか……とにかく今は戻れ。長門は陥落した』

「了解」

 亡霊はゆっくり立ち上がり、シーナがいた場所を見詰める。



「博士。貴方は俺がもう一度殺します」



 踵を返し、亡霊は本島に向け歩き出した。


こんにちは、

下野枯葉です。


先日、懐かしいアニメを見ていたら原作漫画四十巻をポチっていました。

こわ。


さて、亡霊達です。


ファントムの登場と博士の謎。

そして少女達と共にある亡霊。

謎ばかり書いていると解決できなくなってしまいそうですが

これを書かないと何もできなくなってしまうのでドンドン書いていきます。

そして、少女達の記憶も描いていきましょう。

次回はシーナの記憶に迫り、他の記憶も小出ししていこうかなと思っています。

予定とは往々にして変更されます。


死んでしまうハズだったのだから、殺されたくはないですよね。


さて、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ