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少年たちの戦記  作者: REONN
3/3

覚悟

第二話



少年は一時間ほどおじいさんと話をした。

少年は少しだがおじいさんのことを信じはじめたようだ。

「ところで坊やの名前を教えてくれないかい?これからの呼び方を決めたいからね」

「俺の名前は多分 とうり だと思う。…」

「多分?」

「俺は5歳ぐらいの時に親に捨てられたから、自分の名前を呼んでくれる人間がいなかった。8年間名前がなかったよう

 なものだから…でもたしか昔とうりって呼ばれていたような気がするから…気がするだけだから多分をつけた。…」

「…そうか、じゃあ坊やのことをこれからとうりとよぼう。よろしくねとうり」

おじいさんは穏やか笑顔でとうりと、名前を呼んだ。

「! うん!よろしくおじいさん」

とうりは名前を呼んでもらったことが相当嬉しいようで笑顔で返事をした。

「そうだ、僕のことはこれからは教官とでも呼んでくれ わかったかい」

「? わかったけど…なんで教官?」

「これから僕がとうりの教官になるからさ、君はここで明日から人を殺す訓練を受けるんだ。」

「……え……どういう…こと…」

部屋に少しの沈黙が流れた。その沈黙をきるように教官が鋭い声で言った。

「悪いが君に拒否権はないんだ。君がきめるのは覚悟だけだ。」

「なに…人を殺す訓練って、そのために…俺を助けたの?それはひ…どいよ」

とうりが震えた目で訴えかけるように教官にに聞く。

「あぁ、そうだ。しかし君の命を救うために助けたのも事実だ。これは信じてほしい。」

「人を殺す訓練ってことは、いずれは本当に人を殺すってことだよね。…」

「あぁ、そうだね。」

「人を殺すくらいなら…あのときそのまま死んでよかったのに…」

とうりが苦虫を噛み潰したような表情で言う。

「…それは違うよとうり」

「何が違うって言うんだ!俺は人を殺すくらいなら自分が死ぬほうがましなんだよ!なのに…なんで…」

とうりは勢いよくベッドから立ち上がって泣きそうになるくらい怒りをあらわにした。

「君は神様に生きてほしいと思われているからいま生きているんだ。だから実験も成功した。」

「実験!?」

「死にたいと思うならこのナイフを心臓に刺すといい。まぁ、死ねないと思うけど。」

教官はどこからか小型のナイフを取りだし、とうりに渡した。

「…ナイフ…心臓に…死ねないってどういう…」

とうりのナイフをもった手は震えている。

「死にたいんだろう。早く刺しなさい。もしかしたら死ねるかもしれない。」

教官がせかすように言う。

とうりはいまだにナイフを持ちながら震えている。まだ迷っているようだ。

(俺が人を殺すより自分が死んだほうがましだとたしかに思っている。でも自分を刺すのはすごく怖い…ふるえ

 と汗が止まらない…まだ生きていたい!)

カタンッとナイフがベットのしたに落ちた。

「ごめん…なさい…やっぱり俺…生きたい! 死にたく…ない!覚悟を決めるよ……」

とうりが泣きながら言う。

「そうか…それはよかったよ ありがとうとうり。………ちなみに、」

教官はお礼をいって、ベットのしたにあるナイフを拾った。    そして…

グサッ

「……え…」

とうりが下を向いて自分の体を見ると心臓の部分にナイフが刺さっていた。

(いたい…なんで)

「ちなみにとうりが自分をさしていたらこうなっていたよ。」

教官はとうりに突き刺したナイフをとうりの体から抜いた。

一瞬のことだった。とうりの体がその一瞬で人間とは思えないようなものになっていた。

髪の色が黒から白に 爪は10センチほど長くなりカッターの刃のように切れ味がよさそうなほど鋭い。

歯が牙になっている。 最後におしりには人間にはあるはずのない肌触りのよさそうなしっぽがある。

そう、その見た目はまるで狼のようだった。

「…ん…俺生きてるのか……血もでてない…どうなってるんだ!」

とうりは自分が生きていることに驚いている。

「これは…とんでもない実験をしていたようだな…奴等は」

教官はとうりの見た目の変わり具合に驚いているようだった。

「! おじい…教官!!なんで俺を刺したんだ!」

とうりが教官の胸ぐらにつかみかかろうとする。

「なにこの…爪…」

ふわっ

「えっ しっぽ…」

とうりは自分の爪としっぽにきずいた。

「その姿をとうり自身で確認して理解してほしかったからだよ。」

教官はさらりと言った。

「なにこの姿?…」

「それがこの実験の結果の姿だよ。その実験の名前を多種物遺伝子移植(A wideproduct gene

porting)といい略してAGPというんだ。つまり、人間に違う動物の遺伝子を移植してその能力を

 移植された人間がもつことを言うんだ。」

「実験のせいで…もとには戻れないの!?」

「しばらくすれば戻るらしいから安心していいと思うよ。」

「よかった…いや、よくない。なんなのこれは!!!」

「さっき説明したでしょ。AGPの実験の結果だって、ちなみに君に移植された遺伝子は白狼のものだよ。」

「狼…だからこんなしっぽが…最悪だ…」

「あと、今から言うことは覚えていて、白狼の遺伝子移植の実験は10人行ったが成功したのはとうりだけだ。」

「……俺だけ…失敗した人は」

「みんな死んだよ…9人の小さな命がなくなった。 だからこそとうりは生かされた神様に9人の命を背負っていきていく

 んだ。とうり。」

教官が力なく言う。

「俺が9人分の命を…無理だよ。…」

とうりが握った拳を悲しそうに見つめながら言う。

「無理だなんて言うんじゃない。とうり、お前がすべてを投げ出したらその9人の命が無駄になるんだ 僕はとうりに

 生きてほしいんだ。君は優しい坊やだからわかるだろう?」

教官がとうりに問いかける。

「俺は-……うん、わかった俺頑張るよ!9人のために、教官のために、自分のために!」

とうりは少し迷いながらもはっきりと教官に答えた。

「ありがとう、本当にありがとう!とうり」

教官は嬉しそうに言う。

「最後に約束だけしようか。ひとつはなにか辛いことがあったら誰かに言うこと。二つ目は生きるために訓練に挑む こといいかい?」

 「うん、わかった。」

「いいこだ。僕はまだ行くところがあるからもう去るね。いいかい ここから絶対にでてはいけないよ。

  また明日訓練でね。」

教官はそう言って部屋を去った。

(明日から人を殺す訓練…嫌だけど頑張らなくちゃな……)

とうりは不安を抱えながらその日は眠りについた。

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