芽生え
もしも
あの日あなたにみつけてもらえなければ
この私はどんな女になっていたかしら?
会うべき人を訪ねて、
どんなパーティーにも顔を出したわ。
中には、すり寄って来る
魅力的な外見の、中身の軽い奴もいたわ。
心汚して、いい気になって、
私、家族に顔向けできないことも
やりかけたわ。
毎週日曜日には教会に行ってた
幼いころの私に会ったら、
蔑まれるわ。
どこにもいなかったわ、
私をくるんでくれるあたたかい毛布は。
どこにもいなかったわ、
私の心の髪を撫でて癒してくれる
優しいカタルシスは。
いま、
また教会で祈ることができれば、
私の罪を、消し去ることができるのでしょうか?
『芽生え』ってタイトルにも
意味はふたつあるの。
ひとつは、恋心の『芽生え』、
もうひとつは、
殺意の『芽生え』、
あなたが、もっと早く、
もっともっと早く、
この私をみつけてくれてさえいたら、
私は、
ここまで堕ちることはなかったのに。
血を吐くほどの
悪意を向けてたいせつなあなたに、
あなたに言うわ。
あなたが、好きだわ。
でも、嫌いだわ。
あなたに、救われたわ。
でも、放って置いて欲しかったわ。
私のことが、好きだとどうして、
1番最初に出会ったときに
おっしゃってくださらなかったの?
あのころの、
綺麗なころの私なら、
あなたの「好き」を素直に受け入れられたのに。
こんな、バカみたいな恨みを、
あなたに抱くこともなかったのに。
堕ちちゃった。
いくら、あなたがそれでもいいと
言ってくれても、ダメだよ。
堕っこちちゃったの、あたしだもの。
あたしは罪を抱いて、生きて行くしかないんだ。
『自答』は、───こうね?
堕ちたことに、後ろめたさは感じながらも、
それを恥じる心も捨てちゃって、
ただひたすら自堕落で、
淫靡で、その日暮らしの毎日を
から元気で楽しもうとする
女になっていたでしょう。
もしも
あの日あなたにみつけてもらえなければ
この私はどんな女になっていたかしら?
この、
あなたへの嫌味にまみれた
問い難き『自問』に、対する…………ね?
一応、念のために言っとくと、『芽生え』ってタイトル、麻丘めぐみさんのデビュー曲(かな?)で、今日たまたま耳にした歌が下敷き。歌詞が凄く「出来上がって」いて、その世界感に刺激されて書きました。「あなたに出会わなければ、悪い女になっていたかもしれない」みたいな詩。
黙ってパクリと思われないよう、一応言っときますね?でわ、さようなら。
お読みくださりありがとうございます。