第九話 姫様ご乱心
ソフィアは、今日も悩んでいます。
うむ、どうしたものかの・・・
おっ、すまぬ。
わしじゃ。
ソフィアじゃ。
わしは今日も、悩んでおる。
もちろん、グレンの婚約者の事じゃ。
グレンにわしは、
「兄グレンよ、わしにまかせるがよいのじゃ」
などと、安請け合いをしてしもうたのじゃ。
安請け合いと言っても、どうにかしなければならぬ。
あやつらは、しばらくの間この城に泊まるらしい。
この城におる間に、結婚などしとうないと、思わせることができればよいのじゃが。
どうしたものかのぉ。
「まだ悩んでるんだ、おじいちゃん」
「悪いか、お前には関係ない事じゃ」
この頃こやつは、わしをからかいに来るのじゃ。
いまは、それどころじゃないというのにじゃ。
「お前の、相手などしてはおる場合じゃないのじゃ。あっちにいけ」
「ふ~ん、そんなこと言っちゃうんだ。せっかく教えてやろうと思ったのに」
こやつのことを、わしは信じておらぬが、聞いてやるとするかの。
「何を教えるというのじゃ。言ってみるのじゃ」
「なにそれ、偉そうに言うなら、教えてやらない」
「そうか、それじゃ教えてもらわんでもええわい」
「うそうそ、今すぐ言うから聞いてください」
「わかった。言ってみるがいいのじゃ」
馬鹿天使が言うには、きっといい方に転ぶという。
わしは、少しだけホッとして、馬鹿天使に聞いてみた。
「それで、なんでそんなことが分かる?わしはなにをすればいいのじゃ」
わしは、馬鹿天使に聞いてみた。
すると、馬鹿天使は腕組みをしてこう言った。
「う~ん、そのへんは、わかんない」
「ばかもんが、そのへんが、大事じゃろうが」
「だって、わかんないものは、わかんないんだもん。でも、きっと、うまくいくよ。じゃあねぇ~」
あやつはいつも、旗色が悪くなると逃げてしまうのじゃ。
いつもいつも、他人事だと思って軽く言ってくれるわい。
わしは、素振りをしながらこんなことを、考えておった。
「姫様、お茶でも飲みませんか」
「ああ、そうじゃな。お茶でもするかの」
わしは、グレンの事はいったん忘れて、お茶でも飲むことにした。
「姫様」
「なんじゃ、ティアよ」
「グレン様のことなんですけど」
ティアのその言葉をきいて、わしはお茶を吹き出しそうになったのじゃ。
「グレンが、どうしたというのじゃ」
「わたしには、あの方が姫様が言うほど悪い方には、見えないのですが」
「いや、あの目はただ婚約をしに来た人間には思えぬ」
ティアがそう言うのか。
ティアの人を見る目も、なかなかのものじゃ。
どうしたものかの・・・
わしは、お茶を飲みながら、一つの答えに思い至った。
うだうだ考えてもしかたがない。
ここは、本人に直接聞くのが一番じゃ。
ふふ、待って居るがいいのじゃ。
その化けの皮を、今から剥いでくれるわい。
「ティアよ、わしは決めたのじゃ」
「何を決めたのですか、姫様」
「殴り込みじゃ~!!」
「な、殴り込み~?」
思い至った答えが、殴り込みでありますか?