第六話 稽古ですよ
国の名前がOOOOだなんて、何という皮肉な。
げんきでやっちょるか。
わしじゃ。
ソフィアじゃ。
少し前までは、自分のことをソフィアと呼ぶのに抵抗があったが、今はそうでもなくなったのじゃ。
いいことなのか、悪い事なのか微妙じゃが。
じゃが、郷に入れば郷に従えともいうし、いいことなのじゃろう。
わしは、つい最近までこの国の名前を知らなんだ。
しかし、気になってティアに聞いてみた。
それを聞いたときわしは、なんと嫌みな名前の国じゃと思ったのじゃ。
その名前こそ「ゴクドー王国」。
わしは、馬鹿天使を問い詰めた。
「おい天使、こんな名前の国に生まれ変わらせたのは、嫌がらせか。正直に言うのじゃ」
「そ、そんなわけないじゃん。ぐうぜんだよ、ぐうぜん」
まあそうじゃろう。
わしを、女に生まれ変わらせるような、やつじゃからの。
わしは、遊ぶときはティアと、妹のリンダ達と遊んでいる。
馬鹿天使に、鬼ごっこなんかが楽しいのかと聞かれた。
おじいちゃんのくせにと。
じゃが、楽しいものは楽しいのじゃ。
もうひとつ、わしには楽しいものがある。
それは、兄たちとの剣の稽古じゃ。
「兄よ、わしも稽古に連れていくのじゃ」
「だめですよ姫様。お邪魔になってしまいます」
ティアの言う通りじゃった。
はじめは、兄グレンにも歯が立たなかったのじゃ。
わしはまだ3歳だし、この国の王族は剣の腕はなかなかのものらしいのじゃ。
普通の子供なら、ここで稽古をやるにしても、遊びのような稽古をしたじゃろう。
じゃがわしは、気の弱いグレンに負けるのが嫌じゃった。
それからのわしは、遊ぶことも忘れたように、毎日稽古をしたのじゃ。
ティアもあきらめて、稽古に付き合ってくれたのじゃ。
「姫様、お茶を淹れてきましたよ。休憩をいたしましょう」
「うむ、そうじゃな。ほどほどの休憩は必要じゃな」
そんなわしにリンダがいつも、
「おねえたま、いっしょにあそぼ」
そう言ってくるのじゃ。
そんなときわしは、心の中で「すまぬ。わしは、強くならねばならんのじゃ」そう思っておったのじゃ。
すると、ティアの妹で、リンダの侍女でもあるリサが、
「リンダ様、これを持ってソフィア様の真似をしてあそびましょう」
そう言って木でできた剣を持たせてくれたおかげで、4人で稽古をすることになったのじゃ。
一年が過ぎ4歳になったわしは、グレンに再度挑戦してみることにしたのじゃ。
「あにグレンよ、わしとしょうぶするのじゃ」
「ソフィアよくお聞き、ソフィアはまだ私には勝てないよ」
「いいから、やるのじゃ」
グレンは、まだあの時のままのわしじゃと思っているらしいのじゃ。
「グレン兄上よ。相手してやれよ。こいつは、しつこいぞ」
「仕方がないな。わかった、やればいいんだろ」
剣はもちろん模擬刀。
フフフ、わしを侮ったことを後悔させてやるのじゃ。
グレンは、まるでやる気が無いようじゃの。
それでは、やる気を出させてやるのじゃ。
「あにグレンよ。そんなかまえでいいのかの」
「いいよ。さあ、おいで」
「わかったのじゃ」
わしは、グレンの懐に飛び込み目の前に、剣を振ってやったのじゃ。
「うおっ!」
グレンの奴、体をのけ反らせよった。
横を見ると、ダラスの奴も唖然としておる。
愉快じゃのぉ。
するとグレンは、青い顔をしながら今度は真剣な表情で、剣を構えたのじゃ。
そのとき、あたまのなかで馬鹿天使の声がしたのじゃ。
「それ以上やったらこいつ、自信もなにもかも失っちゃうよ」
それもそうじゃ。
こいつは一応、この国の皇太子じゃ。
わしは、考えたのじゃ。
これ以上考えたことがないというくらいにじゃ。
「あにグレン、まいったのじゃ。奇襲作戦が通用しなかったのじゃ。わしの負けじゃ」
「ス、スフィア、それはほんとうか?」
うぐっ。
こやつ疑っておる。
どうしたものか・・・
これしかないのじゃ。
「あにグレンよ。わしがうそをついているとでも言うつもりじゃなかろうな」
「そんなことないよ。ソフィア・・・」
ふう~、今回は馬鹿天使に感謝じゃな。
このとき、ソフィアと一緒に稽古をした3人も、その辺の男よりも強くなっていた。
リンダでさえも。
グレンは、立ち直ることが出来るのでしょうか。そして、ソフィアの稽古のメニューはいったい・・・