第五話 楽しい鬼ごっこ
ソフィアに、侍女がつくようです。
みなさまこんにちわ。
スフィア姫の、お世話をすることになった、ティアと申します。
お世話と言っても、わたしはまだ子供なので、一緒に遊んでやるくらいしかできませんが。
わたしはよく、子供らしくない口の利き方などと呼ばれます。
8歳の子供が、こんな口調ならだれでもそう思うでしょう。
でも、仕方ありません。
わたしは、侍女になるために、そう教わってきたのですから。
それよりも、こんな言い方は失礼にあたりますが、ソフィア様はもっと変です。
3歳とは、思えません。
たとえば、喉が渇いたとしたら、
「ティア、おみずがほしいのじゃ」
こんなふうに、わたしのことはティアと呼びます。
それは、うれしいのですが、王妃様の事は、
「ははよ、わしはおみずがのみたいのじゃ」
こんな感じで、王妃様のことを母と呼びます。
赤ちゃんの頃は、「あ~あ」と呼んでいたそうです。
ママと呼んでいたと思ったら、どうやら違ったようです。
いつの間にか、「ふぁ~ふぁ」になって、ついには、「はは」になったそうです。
とても賢い姫様なのですが、それだけはなおりません。
王様などは、はじめからおかしく呼んでいたそうです。
「い~い」「てぃ~てぃ」そして、「ちち」というふうに。
なによりもその口調は、どこぞのおじいのようです。
「ティア、あそぶのじゃ」
「はい姫様。なにをしてあそびましょう」
「おにごっこが、いいのじゃ」
「はい、わかりました。それでは、わたしがおにですよ~早く逃げないと、捕まえちゃいますよ~」
「キゃハハハハハ」
わたしは、こんな面白くて、可愛い姫様がだいすきです。
わしじゃ。
極道のじじいじゃ。
わしは、とうとうやってのけた。
「母」、と呼べたのじゃ。
ママと呼んだと勘違いされてから、どれだけの時間が、かかったことか。
わしは、鍛錬に鍛錬を重ねたのじゃ。
感慨深いものじゃ。
「なにが、感慨深いよ。この親不孝者」
「貴様か。天使よなにかようか」
このごろは、この馬鹿天使は普通に現れたりするのじゃ。
「私が言うのもなんだけど、普通に呼んでやりなさいよ。かわいそうでしょ。王妃様」
「わしは、これが気に入っての、変えるつもりはないのじゃ」
「変えないと、不幸になるわよ」
こんな時わしは、馬鹿天使の頭の上の輪っかを見るのじゃ。
こやつ、嘘をついておる。
「嘘じゃろ」
「えっ、そ、そんなことないよ~ぴゅ~ぴゅ~」
「嘘はやめるのじゃ。神様に怒られても知らんからの」
「お、おじいちゃん超能力者?」
「さあな」
こやつは、嘘をつくと輪っかが揺れおる。
分かりやすい奴じゃ。
「それで、なんのようじゃ」
「用ってほどじゃないけど、聞きたいことがあって」
「なんじゃ、言ってみるのじゃ。なんでも答えてやるぞ」
「それじゃあ、いつも遊んでるでしょ」
「それは、子供は遊ぶものじゃからな」
こやつ、何を当たり前のことを、聞いてくるのじゃ。
「楽しい?」
「ああ、楽しくてたまらんのじゃ」
「意識はおじいちゃんなのに?」
「あっ」
極道でも、子どもは鬼ごっこは楽しいようです。