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22 ネット情報他

 比較的どうでも良いんだけど、11月の勤労感謝の日が明日に迫っている。

 プレイを始めて、今日で六日目だ。


 ダナウエル大陸の時間は、現実の三倍の速度で流れている。

 現実の一時間は大陸の三時間。

 現実の八時間は大陸の二十四時間。


 俺たちプレイヤーには現実世界での生活があるので、一日のうちにログイン出来るのは、せいぜい四、五時間くらいだ。

 もちろん廃人クラスや、どハマりしている連中は別だ。

 俺もハマっている方の人間だけど、流石に現実の生活を全部犠牲には出来ない。

 高校一年生の身分だから勉強があるし、借金返済のためのバイトだってあるし、そもそも家族が許してくれない。


 俺の場合は21時から深夜帯は、出来るだけ毎日ログインしようと思っている。夜の9時から深夜2時までの五時間だ。

 むろん余裕があるときは、いつだってログインしたいと思っている。


 ちなみに、ゴチャっとして目に痛いけど、これが大陸の時間表になる。

 現実時間=大陸時間という見方で。


 01時=18時

 02時=21時

 03時=24時

 04時=03時

 05時=06時

 06時=09時

 07時=12時

 08時=15時


 09時=18時

 10時=21時

 11時=24時

 12時=03時

 13時=06時

 14時=09時

 15時=12時

 16時=15時


 17時=18時

 18時=21時

 19時=24時

 20時=03時

 21時=06時

 22時=09時

 23時=12時

 24時=15時


 現実の一日は、大陸の三日間になる。

 八時間で二十四を割り切れるから、時間表は毎日同じだ。


 初日はワイト戦が終わり一度ログアウトしたけど、また夜の九時、21時にインしなおして、石造りの都市ヘルンまで皆で歩いたんだよね。


 ヘルンで宿を借りた後に、本格的にログアウトした。


 次にインしたのが十九時間後だったが、これは大陸の時間にすると丸二日後になり、俺はその間ずっと部屋で眠ていた事になるから、思いの外チェルシに心配をかけてしまった。

 この長時間の睡眠に関しては、ユンピアが上手く説明してくれたみたいだ。

 俺は稀人まれびとと呼ばれる人種だから、問題ないという事で解決していた。

 稀人って何だろう、今度教えてもらおう。


 それから俺のステータスなんだけど。

 普通のスキルとは別に、固有スキルというものを覚えていた。

 ユンピアによると、普通のスキルはスキルポイントを消費して習得するが、固有スキルは生まれつきの体質や条件を満たす事によって、自動的に習得するものらしい。

 普通のスキルとは違うので、スキルポイントで覚える事は出来ない。


 習得した固有スキルは三つ。

 激痛耐性。

 狂戦士。

 HPリンク。


 激痛耐性は、そのまま痛みに対しての鈍さのようなものらしい。と言っても痛みそのものは消えずに耐えやすくなるだけみたい。苦痛が消えるわけじゃない。

 ちなみにこの激痛、他のプレイヤーは感じていないらしい。

 そもそも通常の痛覚からして、本来は現実の半分くらいの痛みしか、感じないようになっているという話しだ。

 俺の場合は体質的な問題で、現実とまったく同じ痛覚を感じるのだと。

 加えて激痛まであるという。

 勘弁して欲しい。

 俺以外にも、同じような体質が数人いたようだ。

 その人達は戦闘中の怪我のあまりの痛さに、さっさとゲームを辞めたとか。

 そりゃそうだよね……。

 ユンピアに言わせれば、ダナウエルとの親和性が高い証拠だから、良い事もいっぱいあるはず、という事だが。

 その良い事のひとつが激痛耐性の習得だとも言われたがマッチポンプ感がぬぐえない。


 狂戦士は、ユンピアも聞いたことの無い固有スキルだった。

 体感の印象としては、戦闘に異常なまでに集中するスキルっぽい。

 便利ではあるけど、熟練度が上がるほどに我を忘れて、いずれは味方も攻撃しそうで怖い。

 自分で検証を重ねるしかないようだが、早くも熟練度2に上がっているのが不気味……。


 HPリンクは、パーティを組んだ仲間に、自分のHPを受け渡すスキルだった。

 熟練度と同じ人数だけ常時リンクが出来る。

 このスキルは規格外と言えるほど便利だった。

 何故なら、リンクした仲間のHPの状態を、把握する事が出来たからだ。

 さらに譲渡する量も、俺の方で好きに変えられる。

 ダナウエル大陸オンラインでは、パーティの仲間と言えどもHPの状態を見られない。しかしHPリンクがあれば数値が完全に把握出来るし、自分のHPを分ける事で回復だって簡単なのだ。

 魔法と違って呪文もいらないからね。

 まあ基本的にソロ志向の俺には、言うほどの恩恵を感じないスキルなのだけれど。


 他には今回レベルが4から7に上がって、能力値ポイント12とスキルポイント1を手に入れたが、まだ使わずに残してある。

 スキルの方は、三点バーストっぽい三連撃とか、遠見とか、回避とか、気配断絶とか、周辺感知とか、弾を作る彫金とか、何を覚えるか迷いすぎて決められない。

 いっそ棍棒術を習得しようかとも思ったり。

 能力値は、今現在で何も困っていないので、一旦保留してある。


 俺に関しては、こんな所だろうか。

 ワイトとの戦闘はキツかったけど、今はスローライフをのんびり満喫している。


 俺以外のプレイヤーたちも、ゲームを満喫しているようだ。

 世間では、RV四号型が発売されて六日が経ったのだが。

 とにかくまあ、各メディアが猛烈な取り上げ方をしていた。


 この六日間で、RV四号型の世界中への配達が、ほぼ完了していた。

 ゲーム実況が大流行で、アクセス数もウナギ登りらしい。

 特に有名人の実況が加熱している。

 先日もアメリカの有名なハリウッド俳優が実況を始めたらしい。

 何やら知り合いのセレブたちとパーティを組んでいるとか。

 いま世界でもっとも注目されている人たち、と言った風なキャッチコピーで盛り上がっている。


 なお、プライベートルームでの自分の裸体だけど、キャラメイクから実況していた人は、もれなく全員が無修正動画を生配信してしまった。

 ご愁傷様である。

 別ソフトのチュートリアルソフトに、キャラメイク時に裸になる事を注意する一文があったので、完全に自己責任って話だが。

 くだんのハリウッド俳優に関しては、自分の無修正動画が出回った事を、まったく気にしていないようだった。

 むしろ後発組だし、確信犯だったのかも?

 俺も見たけど、ワーオとか言ってはしゃいでいたし。

 日本人だったらショックで配信を辞める所だけど、この俳優は過去の映画で全裸シーンもあったらしく、堂々としたものだった。

 なお動画はR15指定を受けていた。


 ゲーム実況を見ていて一番面白かったのは、言葉のコミュニケーションだった。

 夢の世界ではイメージのやり取りをしているから、どんな言葉も自動翻訳が働いているし、もっと言えば声帯の障害などで言葉を喋れない人でも、普通に話すことができる。

 しかし実況したものを外部から見ると、じつに様々な国の言葉が入り乱れており、違う国の言葉同士で問題なく会話しているという、とても不思議な光景が見て取れる。

 元からいる大陸住人たちも独自言語を使っているし、実況の音声だと何を言っているのか分からないんだよな。


 また当然のように、そんな大陸住人たち、いわゆるNPCたちの様子から、ただのAIプログラムとは思えないという話が盛り上がっていた。

 これは俺も同意するところだ。

 彼らがただのプログラムなはずがない。


 その辺りの真偽をユンピアに問いただしてみると、アバター生命体という単語をうっかり漏らして、俺に説明せざるを得なくなってしまった。

 ただし内容があまりにもオカルトと言うかSFめいているので、正直言って丸々信じる訳にはいかない。

 それでも集合無意識の精神世界があって、そこに魂……、別の言い方をするなら自我の薄い精神体みたいなのがいて、プログラムで作り出したAIと融合することで、新たな生命として誕生してしまった。

 という話は、なぜかしっくり腑に落ちた。


 そしてダナウエル大陸は、開発当初こそ日本アストリック社の量子サーバーの中にあったが、今は本体は独立して集合無意識の海に浮かんでいるそうだ。

 アバター生命体にしても、独立した世界の仕組みとして成立しており、量子コンピュータの助けが無くても、勝手に生まれて死んでいくらしい。

 ひとつの世界として生命の循環が確立されていた。


 ただし現状、もの凄く不安定で、いつ崩壊が始まっても不思議じゃないとか。


 そこで数年前に、再度LDSを仲介させた量子コンピュータの大規模な介入を行い、ダナウエル大陸をひとつの世界として安定させるため、様々なアプローチが研究された。

 そのひとつが、今回のネットゲーム化という事らしい。


 全部ユンピアが白状した。


 この天使はけしてゴシップ好きなわけじゃないが、一度喋りだすと勢いが付いて口が軽くなる。

 俺も自分の秘密を、こいつには話さないようにしておこう……。


 だから、そういうわけで。

 大陸のNPCたちは、本当はアバター生命体と呼ばれていて、ある意味生きた現実の人間と変わらない存在という事が分かった。

 俺はやっと、自分の中の違和感を解消して、スッキリ納得できた。


 なおこのゲームは、プレイヤーキラーもNPCキラーも普通にやれる。

 フィールドだろうが街中だろうが。

 だからさっそく無差別にNPCを殺しまわる暴走プレイヤーが出現して、速攻で捕縛投獄されたらしい。

 アバター生命体の話って、そんなに隠さないといけない事なのかなあ。

 NPCたちはAIではなく心を持った生命体だと、早めに公開した方が良いと思うんだけどな。

 真実を知らないプレイヤーが、これ以上暴走しないためにも。


 ちなみに、そんな色々な問題が発生しているのは、三つの始まりの街だけだ。

 俺のいる石造りの都市ヘルンには、俺以外にプレイヤーの姿を見かけない。


 始まりの街のひとつは、それほどヘルンから離れているわけじゃなく、ゲーム時間で十日から二週間も旅すれば着くらしいから、そのうち多くのプレイヤーが訪れるだろうけど。

 三つのはじまりの街は、それぞれイチザート、ニノジョウカ、サンミャコという名前らしい。

 何気に安易な響きだ。

 ヘルンから近いのは港のある大都市サンミャコだな。

 他の二つは内陸だ。


 このサンミャコでは早速プレイヤーたちによる、冒険者ギルドが設立されたらしい。

 ……仕事が早すぎるだろ。

 それもひとつじゃなく、いくつも乱立しているとか。

 他の都市でもクランとかチームとか乱立中だ。

 勧誘合戦が始まっているらしい。


 色々賑やかで、楽しそうだよな。

 まあ渦中にいたら、勧誘とかウザいと思うんだろうけど。

 

 ヘルンは静かで平和だな。


 さて、そろそろ風呂に入って、ログインの準備をしておこう。

 明日は朝からバイトが入っているし、少し早めに寝ておきたいし。

 時計を見ると20時、夜の八時だった。

 あと一時間以内に寝る準備を終わらせて、ダナウエル大陸に行こう。

 今日はチェルシと、森に狩りに出かける約束だ。

 今度こそ、必ず獲物を仕留めてやる。



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