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俺と吸血姫と異界の夜  作者: 眞島聡
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ダンジョン1

 一眠りするとようやく頭がはっきりしてきた。その代わり身体はゴリゴリと痛かったが。 身体を起こして横を見ると、足を正座にしたままうつ伏せに倒れているローラを見つけた。何故か両手を太股の間に挟んだまま、苦しそうな顔で眠っている。 多分俺が言った『そのまま待て』を守ろうとしたのだろう。我慢しきれなくて意識を失ったのか?

 俺はローラを起こしてやろうと立ち上がり、なんだか首の辺りがカピカピするのに気が付いた。しかし今はローラの事が先だとそれを無視した。


「ローラ?ローラ?大丈夫か?」

 ローラの身体を起こしてやり足を伸ばしてやって体を抱える。 それでも起きないので、軽く体を揺すりながら声を掛けて見る。

「ローラ、ローラ、しっかりしろ?悪かったな?もう、大丈夫だぞ」


 すると、うっすらと目を開けたローラは寝惚けているのか、

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 と繰り返している。 謝るのは俺の方なのに・・・ そう思って、

「謝らなくてもいいんだ。悪かったのは俺の方だ。」と伝えると、

 ローラの目の焦点が合って来て、パチリと目を見開く。


「・・・・こ、れ、は?」


 シュボッ!


 確かに音がした。ローラの顔から炎が出てきた。


 俺に抱えられているのに気が付いたローラは即座に真っ赤になって俺から離れようと起き上がった!その早さについて行けず俺の顎はローラの頭突きを食らった。

「キャン?!」

「アグッ?!」


 変な声を上げて俺は顎を押さえながらうずくまる。向こうではローラが頭を押さえて似たような格好をしていた。


「ロ、ローラ、落ち着け、落ち着いて話をしよう。」


「う、うう、イタタタ・・・・はい。」


 お互い痛い所を押さえながら、向かい合った。ローラはぶつけた痛みに悶えていたが話をする余裕が出来たみたいだった。 俺はまじまじとローラを見つめる、膝をついてぶつけた頭を押さえながら涙目になってるローラは、それでも綺麗だった。俺の世界に彼女がいたら、ハリウッドスターか、何処かの国のお姫様になっているのだろう。


「どうしましたか?」 不審に感じた彼女が拗ねた様に俺に尋ねてきた。


「いや・・・これからの事なんだが、このダンジョンの事を少し聞かせてくれるか?」


「ダンジョン・・ですか?」


「ああ、やはり早くここを出る事が先決だろう?」


「それはそうですが、前に言った通り、あたしの魔力はまだそこまで回復していません。しばらくは、ここで待つしか・・・」


「そうだな。それも一つの手だが、それだけが方法じゃない。」


「他の方法があるのですか?」


「あるさ。・・・但し、確実ではないんだ。だから少しでもダンジョンの事が知りたいんだ。・・・ローラ、君がこのダンジョンで知っている事を教えて欲しい。」


「それは良いのですが、具体的には何を知りたいのですか?」


「そうだな。まず、今いるこの場所から外まではどのくらいの距離が有るんだ?」


 俺の計画ではそれが一番重要だった。他に何も出来ないただの人間な俺に出来る唯一の方法・・・


「・・・キイチロ、あなたが何をしたいのか大体分かりましたけれど、あたしの答えは期待に応えられないと思います。と言うのは、このダンジョンは、ある時間が過ぎると中の形状が変わってしまう物なのです。今居る、この部屋は、隠れ部屋になっていて、変わる事はないのですが、この部屋にたどり着く道はすでにあたしの知っているルートでは無いでしょう。」


 む、むむ・・・そうだった。そういえばさっき一度聞いた気もするな。(ん?)だとすれば・・・


「ローラ、君の言う事が事実だとすれば、逆に良い結果になるかも知れないじゃないか?」


「それはどういう事ですか?」


「時間によって変化するダンジョンなら、今居る場所が出口に近づく事も有るだろう?」


「・・・成る程、言いたい事は分かりますが・・・」


「何にせよ、この部屋にずっと居ても君は大丈夫かも知れないが、俺が持ちそうも無い。試して見ても良いと思うのだが。」


 おそらく、ローラの魔力の回復を待って、魔法を使って脱出するのが安全かつ最善なんだろう。ローラは何も言わないがダンジョンと名が付いているなら当然、モンスターが存在するだろうし、様々なトラップも有るだろう。それらを避けながら出口まで向かうのは、レベル1のプレイヤーが魔王に戦いを挑むのと変わらないだろう。

 俺は周囲を見回す。ローラの魔法で青白い炎が照らしているが薄暗い洞窟内はあまり長居をする場所じゃ無い。食べ物は、さっき解体した牛さんをローラの魔法の空間に入れてあるし、ローラ次第だが他にも魔法で出してもらえるかも知れない。要は、ローラが居ないと俺は即死するという事だ。


「じゃあローラ、君がこの部屋に来たときはこの部屋はどのくらいの場所にあったんだ?」


「そうですね。連れて来られたので、しっかりとは分からないのですが、確か人間達が攻略したのが32階層位だった記憶が有ります。ですから少なくとも、それより深い場所になるでしょう。」


「・・・32・・そういえば、このダンジョンは地下に有るのか?」


「はい。このアルクラベルの迷宮はアズトート大陸とク・スルー大陸のちょうど中間にあり、世界最大の迷宮と言われています。」


 大陸と大陸の中間に在る世界最大の迷宮か・・・よくある話だけれど踏破はかなり難しそうだな。


「ローラは、どっちの大陸に住んでいたんだ?」


「アズトート大陸は知性体の居ない場所だと言われています。このダンジョンが攻略されない限りそこにたどり着くのは難しいでしょう」


「じゃあローラがいたク・スルー大陸はどんな所なんだ?」


「・・・話ても良いのですが、少し長くなります。宜しいですか?」


「そうか、じゃあ今はこのダンジョンを脱出する方を優先しよう。

ローラ、君は否定したが、俺の方法で試して見てもいいか?」


「・・あたしは無理だと言いましたよ?それでもやりたいと言うなら、仕方ありません。」


「ありがとう。」


 当たって砕けたくは無いが、可能性に掛けてみよう。俺はダンジョンに挑戦する事を決めた。

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