ローラ7
キイチロはまた眠ってしまった。あたしは正座のまま、彼の側にすり寄って行く。あたし達の一族は人間程しょっちゅう眠らなくても平気だ。その代わり、一回の眠りが長く年単位になることもある。例えば、我がバーンスタイン家の当主のスマウグ.ウシュトベン.ミルヒ.バーンスタイン、あたしのおじいちゃんは、80年前に眠りについてから、まだ起きてこない。 あたしは2日前に起きたばかりだから全然眠くはならないのだ。だから、キイチロが眠ってしまって少し寂しくなってしまった。そのままで居ろと言われたので、正座した格好のまま、あたしはキイチロを見つめていた。退屈は一人きりでいた時は気にならなかったのに、誰かと一緒だとこんなに耐えられなくなるのだろうか?
(早く起きないかな?)
今しがた眠りに付いたキイチロを見つめ、そんな事を思ってしまう。 じっと見つめていると彼が起きた後に起こる事が楽しみでしょうがなくなってきた。
「・・・キイチロ」
聞こえるかどうかの声で話掛けて見る。・・・返事はない。あたしは顔を近づけて、耳元でもう一度囁いて見た。
「キイチロ、寝てるの?」
キイチロはピクリと顔を動かすけど、目を覚まさなかった。
(あぁ、キイチロの匂い・・・)
その匂いがあたしに誘惑して来る。今なら大丈夫、今なら見つからない。お前の好きにしていいんだぞとあたしの頭に入り込んで来る。
(あ・ぐっ・・ふっ・・・・)
あたしの口の中に唾液がジュルジュルと溜まっていき、息が荒くなって行く。
(あうう、我慢しないといけないのに・・・)
あたしがこんなになってしまうのは、さっき飲んだ血のせいだ。
キイチロの血は物凄く甘くて、でもくどくなく、コクがあって頭がクラクラするくらい美味しくて、飲むと身体中が熱くなって、離れられなくなるのだ。
(う、うう、お、思い出しただけで身体が熱くなる・・・まずい、我慢出来なくなっちゃう。)
すぐ側に、さっき舐められなかったキイチロの鎖骨がある。それを意識してしまうともう、目が離せなくなってしまった。 あたしは必死になってそれと戦っていた。けれどキイチロの鎖骨は凄く、物凄くあたしを誘ってくる!(別に血を吸う訳じゃないし、ちょっとだけ舐めたら満足するから・・・)最早言い訳にしかならない声を心で聞いていた。今度見つかれば許してはくれないと分かっていながら結局、欲望に負けてしまった。
それでも起きて来ないかとビクビクしながらキイチロの鎖骨にそっと舌を這わせて行く。
(❤❤❤❤❤❤❤)
舌だけでなく唇で鎖骨の出ている部分を味わうと
「んっ・・くう・・」
とキイチロが声を上げた。
(まずい!!) と思って思わず後退り、様子を窺うと、直ぐにスウスウと寝息がしてきた。
見付からなかった安心感と味わってしまったその味があたしをどんどん深みに嵌めていった。
(や、ヤバい!一口だけって思ったのに、チョー旨い!なんつう旨さなの!・・・あぁもう!どうしたらいいの?)
ローラは正座したまま両手を太股に挟んで悶えてしまった。目を瞑ってさっき聞いたキイチロの声を思いだし、真っ赤になった身体を捩る。このままじっとしていたら気が狂いそうになる。
(お願い!早く起きてぇ・・・)
そう思いながら、(もう一度位なら、舐めてもいいかな?)なんて考えて、悶々とした時間を過ごしていくのだった。