ローラ5
溺死とローラの涙のダブル攻撃を回避?した俺は例の牛さんと戦っていた。
しかし人間、本気でやろうと思ったら、結構何でもできるモノなんだな。 俺は牛さんをカッターで解体しながらしみじみ思った。
そう、包丁は無いとして、ナイフくらいあるかな?と思ったのだけどね。魔法で牛さん出てくるんだから、ナイフ位、パッと出せそうだよね? って、ローラに聞いたら、
「武器を創造するのは禁じられています。ごめんなさい。」
・・・いまさらな気がしないでもないんだけど、一応頷いておいた。そう言う訳で、俺は気持ち悪さと腹ペコの体に鞭を打って、カッターナイフを片手に牛さんと戦い続けている。
§§§
石の上のTボーンがジュウジュウと食欲をそそる音と匂いを放っている。先程分かったのだが、俺が牛さんと呼んでいたモノは、コチラの世界では"マグロー"と言うそうだ。紛らわしい。生きてる"マグロー"を映像の魔法で見せてもらったが、七色に輝く牛さんだった。玉虫色に輝く牛さん達が草原を走って行く姿は俺のSAN値をガリガリ削っていった。
旨そうに焼けた肉を(塩があるというので出してもらった)手づかみで食べていると、それまで大人しかったローラがすり寄ってきた。
「なんか、凄く美味しそうなんですが・・・」
まあ、肉を焼くために石を焼いたのはローラだし、そもそもこの肉もローラが出した奴だし、食べたいのなら焼いてやってもいいか。
「食べる?んじゃ、今焼くからちょっと待ってて。」
「・・・あなたが食べているそれを少し貰えませんか?」
「もうほとんど残って無いけど、これでいいのか?」
「はい!私たちは基本的に肉は好みませんが、あなたが食べているマグローがなんとも美味しそうなので、一口頂けたらと・・・・」
そういえば吸血鬼って肉を食べないんだよな。そんな事を考えながら「それじゃ、これいいよ。」と一切れ指差すと、
「・・あ、アーン・・・」
・・・この天然残念吸血鬼は、俺の思考のナナメ上を飛んで来やがった。
「なんでそうなる?」
「・・・だって、手が縛られて・・・アーン」
「今は鎖外れているぞ・・」
「あっ、そうでした?『チッ』」
「今、『チッ』とか言わなかった?」
「言ってません。」
なんだろう?もう三回程殺され掛けているんだけど、心の中のアラームがファンファン鳴ってる気がするぞ。
§§§
肉を食べた後、今度は溺れる事無く水を飲ませて貰い、俺はやっと一息付く事が出来た。
多分、無くなればもう手に入れる事が出来ない、残り少ない煙草に火を着けて、俺はすっかり大人しくなったローラに話出した。
「それで、どうするんだ?お前?」
「どうする?とは?」
「ここから脱出して、お前を閉じ込めた奴に復讐するとか言わなかったっけ?」
「それは、もちろんします。ここから出られればの話ですが。」
「この迷宮を出るのはチョチョイノチョイとか言ってただろう?やっぱり魔法で出来るのか?」
「・・・・あー、・・・し、正直に言いますとまだ魔力が足りなくて・・」
「体力は回復したんだろう?なら、魔力も復活したんじゃ無いのか?」
「そう言う訳には行かないのです。」
「・・・・どうでも良いけど、何で敬語使ってるの?」
「!!・・き、気にしないで下さい。ちょっとした心境の変化です。」
何故だろう、何か心に引っ掛かる気がするんだが。
ローラと話をしていると、疲れからか眠気が襲ってきた。考えてみれば当たり前だ。いっぺんに色んな事が有りすぎで、頭も体もくたくただった。眠気はどんどん強くなっていつの間にか俺は泥の様に眠ってしまった。