ローラ4
キイチロの顔色は真っ白だった。倒れたまま、ピクリとも動かなくなって、あたしはぶるぶる震えながら心臓に耳を当ててみる。と辛うじて心臓は動いていた。 あたしは慌てて回復魔法を掛けて・・・キイチロの顔色がちょっと赤くなる!
「う・・・・うぐ・・・」あたしはキイチロの胸の上に頭を乗せ、(お願い・・お願い・・)と祈る様にしていると、どうやらキイチロは気が付いた様だ。
「だ、大丈夫?・・・どっか痛い?なんか欲しいものある?起きられる?ねぇ大丈夫?ねぇってば?」
「う、うるせい・・・誰のせいでこんな・・・・ぐふっ。」
よ、良かったぁ。
§§§
やれやれ、どうやら命拾いをしたようだ。
俺は貧血でふらふらに成りながら、ローラを見るとなんだか涙目になって俺の顔を覗き込んでいた。またこいつに殺されそうになってしまった。思わず、
「お、お前、俺を殺そうとしたのか?」
と言ってしまうと、
「!・・そんな事、しないよ!バカ!」
何故か怒鳴ったローラは、そのまま俯いて肩をふるふると震わせていた。(うわ!怒らせちゃったかな?)と思ってたのに、
「・・・ご、ごべんなざいぃぃ!・・・」
今度はいきなり泣きながら謝ってきた。・・・なんだ?こいつは?
前の世界で生粋のボッチだった俺にとって、吸血鬼だろうが若い女の子と話をする、ましてや泣かれてしまうなんて事は、天地がひっくり返っても有り得ない事だ。 ましてや、泣いた女の子をどうすれば泣き止ませるかなんて事は、到底解る訳なかった。
・・俺は絶対悪く無い。悪く無い自信があるが、目の前でボロボロ涙を流して謝るローラを見ていると、悔しい事に罪悪感が心に生まれてしまった。 (・・・いや!俺は絶対悪く無い!)
「うわーん!ごめんなさいィ~!!」
「あ、あの、・・・も、もう良いから、謝らなくて良いから・・ほら、俺は元気だから・・・」
せっかく誓った決意もグズグズにされて、俺はローラの肩に手を置き背中を擦る。ローラはそれでもグスグスと暫く泣いていたが、しばらくすると背中を擦られて少し落ち着いたのか、泣き止んで顔を上げた。
「・・・お、怒ってる?」
「・・い、いや、怒ってないから・・・・」
「本当に?」
「ほ、ホント、ホント。」
なんだ?この、セリフだけ聞くとリア充みたいなやり取りは?
俺、こいつにもう二回も殺され掛けているのに・・・・・
「ほら、ローラ。魔力少し戻ったんだろ?約束通り俺の食べ物を魔法で出してくれよ。」
「・・・・・・肉で良い?」
「ああ、良いよ。何でも良いから早くしてくれ。」
くっそー。敗北感がハンパネー。罪悪感の上に敗北感て、完全に俺、悪者ジャネーカ・・・。
§§§
・・・俺の前に肉がある。多分ローラは気を使ったのだろう。皮は剥いである。どういう魔法なのかは解らないが、ローラが呪文を唱えるといきなり目の前に現れた。全長約2メートル、重さ約500キロ、
生皮を剥がされた・・・牛の様だ。
「・・・肉だな。」
「そうよ、食べやすい様に皮は取っておいたわ。因みにランクはA4よ。流石にA5ランクは難しかったわ。」
なんか、血まみれで良く解らないが、脂の入り方が良いそうだ。
ウワー、むき出しの目玉がこっち見てる気がするぞ。
ローラの残念さを考えれば想定しなくちゃいけなかったよなぁ。
口の所から出てるピンクのアレは、タンて奴だよな。デロってなってるけど・・・
・・・貧血でふらふらしている身体に、これはキッツイと思うぞ。
胃がせり上がってくるのを両手で口を抑え飲み込むと、牛さんから背を向けて少し離れる。
「ローラ、悪いが水をくれないか?」 口の中が酸っぱくなった俺は
、少しでも気持ち悪さを解消しようとローラに頼むと
「み?水?はい!やります!いくらでも飲んで!」
急に顔を真っ赤にしながら腕の鎖を外してくれとこちらに見せる。
なんか息を荒くしているローラの両手の鎖を外して指先の前にしゃがみ、口を開けると「ヒッ、フヒッ」とローラの声がした。
とたんに、滝の様な水が俺の顔をめがけて流れてきた!
「ブッ?!ゴバッ!!オ!?ゴ、ゴボッ!!」 俺はローラに水責めを受けた。
全身びしょびしょになった俺は、何とか溺死を免れた。 ゴホッゴホッと噎せるとローラはアワアワしながら泣きそうになって謝って来る。 オイマテ、又さっきのやるつもりかよ。
「ゴホッ、わ、解っている、悪気の無いの解っているから。」
だから泣くんじゃねー! ・・・それにしてもこいつ、やはり俺を殺そうとしているのか?そんな事を考えながらローラの頭を撫でていた。