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私が見た夢

蜜月(私が見た夢5)

作者: 東亭和子
掲載日:2015/11/22

 こんな夢を見た。


 私は蜜という名の姫だった。

 私の国は滅ぼされ、敵国に捕まった私は、殺されることなく敵国の主の妻となった。

 城主、恒正は恐ろしい噂をたくさん持っている人だった。

 少しでも気に入らなければ殺す。

 昔そんな話を聞いたことがあった。

 

 でも実際は違った。

 とても優しい人であった。

「蜜…」

 軟らかく私を呼ぶ声。

 恒正との日々は、甘い蜜のような日々だった。

 愛された私は、やがて身籠った。


 恒正は私を城から逃がした。安全な場所で子を産むように、と。

 初めて一人になった。

 とても孤独だった。

 私は大きくなったお腹をさすり、一人悲しく月を眺めた。

 こうして、よく二人で月を見上げた。

 お互いの孤独を埋めるように寄り添い、月を見た。

「早く、恒正様とお会いできますように」

 私は毎日、月に祈りを捧げた。

 それから私は男の子を生んだ。


 蜜が子供を生んで半年ほど経った頃、一人の使者が城を訪れた。

「蜜様はどこにおられます?」

「蜜を探してどうするつもりだ?」

「…」

「どうせ蜜をお前らの主に嫁がせ、俺の国と蜜の国をのっとろうという思惑なのだろう?

 違うか?」

「分かっているなら話は早い。

 さあ、早く蜜様を出すんだ!」

「誰が蜜を渡すか!」

 時は戦国。

 弱い国は滅びるのが常。

 こうして、この国もまた滅んでゆくのか。


 使者は恒正と切りあった。

「蜜様を差し出せば、命は助けてやる」

「はっ、ふざけんじゃねぇよ!」 

 死んでも言うものか!

「これで終わりだ!」

 恒正の刃が使者を貫いた。

 使者は崩れ落ちた。

 あとどれくらいの国が蜜を狙うのだろう?

 蜜の国には金山がある。

 蜜を手に入れれば、金が手に入る。

 どうやって守ればいい?

 遠ざけても、いつかは見つかる。

 どうすれば…!


 ハッとする。

 城が騒がしい。

 どうやら火を点けられたようだ。

 仲間がいたのか?

 くそっ、この城が落ちてしまう。

「恒正様!」

「蜜?」

 なぜ、ここに?

「蜜もご一緒します」

「何を言っている!」

「恒正様と過ごした日々は、とても幸せでした。

 恒正様を失ってまで、蜜は生きていたくはありません!」

「しかし!」

「大丈夫です。

 子供は元気に育つでしょう。

 城主とならず、平民の子として人生を歩むのです。

 それが私の願い。

 あの子が生きることだけが、願いなのです」


 私たちのように、国のために犠牲になって欲しくないから。

 私は子供を下女に預けた。

 下女の子供として育つように。

「蜜…いいのだな?」

「はい」

 見上げれば青白い月。

 もう二人離れることはない。

 永遠に。

 二人は手を繋いで寄り添った。

 

 そうして城は焼け落ちた。

 二人を飲み込んで、総てが消え去ったのだった。


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