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僕達の通っている学校は、ここらへんでは結構有名な、中高一貫校。
フユは結構前からここに入ると決めていて、それだったら二人一緒に、ってことで、雪森家は私立なのに二人同時に入れてくれた。
しずえさんとフユのお父さんには本当に感謝しかない。二人私立に行かせるのがどれだけ大変かは僕でもわかる。
僕の方も、入れてもらうんだからと、フユとかに勉強や面接、色々な事を教えてもらって頑張ってはいることができた。結構難しかった。
校舎はもちろんきれいで一流。
坂の上にある学校なので、一階が地下にある形になる。上は五階まであって、食堂もちゃんとついている。
あとは大きな図書室。自動で動く倉庫や、最新型のパソコンもずらりと沢山並んでいる。使ったことはないけど。
僕たちの教室は三階。中学生は全員三階のフロアに集められている。
フユと話をしながら校門をくぐり、二階のエントランスに足を踏み入れ、正面にある階段をゆっくり上っていく。
そして、三階にある1‐2と書かれたプレートのある教室のドアをガラリと引くと、そこにはいつも通りの面々がそろっていた。
「あ、二人ともおはよう」
一番初めに声をかけてきたのは、僕の隣の席の相川夕陽。天然パーマが特徴的な男の子だ。
「夕陽おはよ〜」
僕とフユは夕陽を挟んで横一列で並んでいるので、授業中は頭の回転が遅い夕陽に二人係で勉強を教えている。
フユはカバンを置くと、小声で「暑い…」とつぶやいて下敷きで顔を扇いだ。
「まだ六月なのにね。こんなあついなんてほんとありえないよ。でもいま冷房ついてるよ」
夕陽はスポーツドリンクを飲みながらフユに言った。
夕陽はバスケ部所属で、このスポドリも手作りらしい。時々バスケ部みんなの分まで作って配ってるんだとか。
「今日二人ともいつもより早いね。なんかあった?」
「起きるのが早かっただけ。今日はいつもより20分も早く起きたからね~」
ブイサイン。どや顔。
しばらくみんなでいつものように雑談していると、急に教室の後ろ側のドアががらっと開いた。
そしてそこから見えたのは、これまた見なれた金髪頭。アホ毛をひょこひょこ立ててバカっぽいいつもの顔をしている。
「ハル、フユおはよう!」
このクソ暑い中、こいつといたら多分周りの気温が3度は上がるよ、というような声のハリ。
これはナツキーーーー浜野ナツキ。こいつは小学校からの友人で、いつもおちゃらけている。中学に入ってからは別々のクラスになってしまったが、朝はいつもこうしてクラスに乗り込んでくる。
「ナツキ朝からうるさいよ」
「うるさい」
「なんでそんな冷たいの!?いやいつもだけど!」
へらへらしながらこちらにくるなり、ポケットをあさり始めた。そして、あったとつぶやくと、はいと言って何かを渡してきた。
「これ、今月の試作品。きのうできたばっかりなんだ、俺はすごく好きな味なんだけど…食べてみて!」
ナツキの家は、お父さんが社長を務める日本ですごく有名なキャンディーメーカー。何度か家に行ったことがあるが、まあみたこともないような大豪邸だった。
外観はどっからどうみてもお城。入口のセンサー付きの門をくぐると、すぐに広い庭が広がっていて、そこには棒付きキャンディーの模型が沢山置いてある。さすがキャンディーメーカーさん。
中も、考えられないほどの広さ。リビングなら多分フユの家一個分はありそう。
ナツキ自身は、お父さんが生粋のアメリカン、お母さんは純日本人のハーフ。髪色なんかはお父さんのものを受け継いでいるが、どことなく東洋人交じりの顔立ちもしていて、言うなればイケメンだ。おちゃらけてなければモテていただろうになあ。
改めて手の中にある渡された新作キャンディーを見ると、コーンポタージュ味と書いてある。
僕はコンポタ味のアイスで苦い経験をしたことがあるのであまり乗り気ではなかった。
「うーんおいしいの、これ」
少し引き気味で聞いてみると、意外なことに隣から、ぱあっと明るい声でなにか聞こえてきた。
「……おいしい」
「ええ~ほんと~?」
「フユも言ってるし食べてよ!絶対いけるって」
念を押されて、恐る恐る包装紙をはがす。黄色い色。どことなく香る、コンポタもどきの様な匂い。
僕はごくりと息を飲んで、ぱくっと口に入れる。
「…………いける」
「ほらね!父さんと徹夜で何度も試作したんだから!」
えっへんとでも言うかのように鼻を高くするナツキ。僕は飴をくちの中で転がしながら、朝のホームルームのチャイムが鳴るまで、ナツキを交えた4人で喋っていた。
にしても、コンポタ味の飴……ほんとに美味しいな、これ。




