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放課後の図書館  作者: 松田
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昼寝の合間に

ジュースを持って庭のほうに周り込み、彼がいるのを確認しようとするがどこにも見当たらない。

一応、変人だということも考えて木の上や茂みの中も覗いてみたが彼はいなかった。

仕方なく捜索を諦めることにして本の続きを読もうとした。が、全く頭に入ってこない。

これでは読み損だと思い、本を閉じる。

頭をすっきりさせて彼のことを忘れようと思い、テーブルに突っ伏した。

いい気持ちだ。やっぱり今日の気候は心地いい。

どこかから鳥の鳴く声が聞こえる。時々吹く風が頬をくすぐる。葉っぱもサワサワと私の体をくすぐった。

近くでガサガサ音がする。まるで何度も何度もステップを踏んでいるような、そんな騒がしい音が、私の方に近づいている。

それだけ踏んでいるのによほど小刻みなのか、まだ私のそばまでは来ていない感じがする。

そんな妙な歩き方をする奴は誰だろうかと思って顔を上げてみた。

そこにあるのは黒く、大きな目を持ち、頭からは2本の太い紐が下がっていて、口はまるでアリの様に挟めば切れそうな形をしている。

いや、それは「様に」ではなく、まさしくアリ。

顔の大きさが私の体の半分くらいあるアリがいた。

こっちに向かってきている。間違いなく食べられる。

今食べられないにしても、細切れにされて、巣に持ち帰られて、幼虫や女王の餌にされる。

逃げなきゃ。と、思うものの、怖くて腰が抜けてしまった。

「だめ……動けない……誰か……」

と、頭の中で考えるのが精一杯で助けを呼ぶ声も出せなかった。

怖い。怖い。怖い。

怖い。怖い。

やっとのことで右手、右足、左手の順に後ろに下がろうとするとアリは動きを止め、私をじっと見据え始めた。それは私の動きを察知してのことか、アリが動きを止めたことは逆に私の恐怖心を煽り、左手は、後ろに出せなかった。

もう無理だ。がたがたと震える体が止まらない。体が芯から冷えていくのに対し、頭の先からは汗が出てくる。ついでとばかりに涙まで止まらなくなって、呼吸も小刻みに、何度も何度も繰り返した。

アリはまた一歩、私の方へ踏み出す。

一体あと何歩でアリは私へとたどり着くのだろう。

意外にも小さく、せこせこと歩数をいたずらに増やすアリの一歩一歩に、私は焦らされているようでとても生きた心地がしない。

私はもう助からない。

そう思い、目をつぶるとなにか大きな力に押されて、後ろに2、3回転がった。

なんだろうと思って目を開いてみると、アリは消え、辺りは赤く染まっていた。

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