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《八十一式(旋風四連)》

「はぁぁっ!」

 それは明確な距離だった。

 一足飛びで飛べる距離。

 通常で二歩半。

 『生み出す者』に叩き付けたものがアスパーンの予想通りの効果を生み出し、一瞬と言わず数秒もの時間を生み出したのと、アスパーンがその時間で自分が出来る事を確信し、飛び込んだ事。

 明確な『殺』の意思の下、アスパーンの剣は、叩き込まれてきた訓練通り、今まで殺してきた魔族への攻撃と同じように、正確無比な軌道を描いて『生み出す者』の首を捉える。

(……一つ!)

 アスパーンから向かって右へすり抜けるように入った一撃目で、刃は僅かに食い込み、喉笛が砕かれた。


 ――――それを確認した後も、剣は止まらない。


 強力な衝撃で打ち抜かれた『生み出す者』の体に、一瞬の後に返しの刃が、今度は後頭部へ叩き込まれる。

(……二つ!)

 二度目の刃は、衝撃に弾かれた『生み出す者』の体とアスパーンとの間に生まれた筈の間合いを嘲笑うかのように、カウンターで後頭部から肉を裂いて頚椎を僅かに切り裂き、打ち飛ばす。

 最初の攻撃で弾けとんだ体に、瞬時にカウンターの様な一撃を叩き込む、コンビネーションの二撃目。

 頚椎を傷付けた事を確認するように、アスパーンの目に険しさが増す。

 アスパーンの剣は硬い骨を砕く為に再び打ち抜かれ、『生み出す者』を今度は前のめりに打ち飛ばしていた。


 ――――だが、そこではまだ、終わらない。


 アスパーンの体は瞬時に振り下ろした剣の勢いを利用してそのまま右へ。

(……三っ!)

 再び『生み出すもの』の正面から向かって左側に回りこみ、そこに、更なる重ね打ちが襲い掛かる。

 前のめりになる『生み出す者』の体の前方、一撃目で叩き壊した喉笛に、水溜りを踏み抜くような音と共にアスパーンの下段からの剣が再度、今度は『生み出す者』の左側に抜けるようにターンして喰らい付くと、凶暴なまでに輝きを放つ刃で肉を切り裂いた。

 肉を切り裂いた刃が頚椎に正面から当たったのを感触だけで確認すると、剣は打ち抜かれ、『生み出す者』の体が再び後ろへと流れる。

 そして、暴れ狂う旋風のように、アスパーンの剣が吹き戻った。


 ――――これで三撃目。


 それでも尚、繋がったままの首級に向けて、アスパーンは、自分が明らかな殺意を放ち、その一点を撃ち、相手の存在を亡き者にしようと獰猛に暴れているのを感じた。

(……四っ!!)

 三撃目ですり抜けた勢いを全身のバネを使って一気に振り戻す。

 極限まで縮められたバネが大きく跳ねるように、止めとばかりに、三度目のカウンター攻撃が『生み出す者』の後頭部から叩き込まれた。


 ――――そして、その一撃は遂に、残っていた頚椎を叩き折り、『生み出す者』の首は、前のめりに落ち、大量の血飛沫と共に地に跳ねた。


「……八十一式(旋風四連)!」


 本来、硬い外皮に覆われた相手を壊すための技。

 直前の一撃の衝撃を利用して、そこに返しで、状況に応じて立体的に方向転換をしながら三度ものカウンターを打ち込む技。

 巨躯と硬い骨に覆われた『生み出す者』の首を刈るには、そこまでする必要があった。

 驚愕のまま見開かれた『生み出す者』の首が、空中で黒い塵と化し、消える。

 それに一瞬遅れて、主の姿を追うかのように胴の方も塵に還った。

「…………フウッ」

 恐らくこれで総て終わった仕事に、アスパーンは天を見上げて溜息をついた。


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