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《章前 ~夢見る~》
『それ』は、何かを待つ『力』だった。
遥か昔、目覚めることの無いように封じられた『それ』は、自らの目的をよく理解していた。
だが、今は『それ』は自分の姿を知らない。
奴は自分を封じる直前にこう言った。
「次に出てくる頃には、お前を……」
だが、その先を覚えていない。
お前を、どうすると言っていたのだろうか。
もう、覚えていない。
奴はどうすると言っていた?
執着は、薄れてしまった。
記憶は、薄れてしまった。
意欲は、薄れてしまった。
渇望は、薄れてしまった。
過去は、薄れてしまった。
未来も、……いや。
未来だけが。
総てが薄れ往く中、未来だけが。




